安全で失敗しない脂肪吸引の手術

序文

1980年にIllouz が初めて吸引管を使用した脂肪吸引を報告してから，すでに40年以上の歳月が経ちました。この脂肪吸引手術は，大きな切開を必要とせず，確実に脂肪を除去できるという特徴をもち，手術手技や医療機器の進歩により安全性も飛躍的に向上しました。その結果，この手術は徐々にポピュラーなものとなり，米国では豊胸手術を上回り，3年連続で最も人気のある手術としてランクインしています（2023年ASPS：米国形成外科学会統計）。

日本でも，欧米の影響を受け，脂肪吸引手術は広く受け入れられ，今や一般的な手術のひとつとして確立しています。しかし，私自身が年間3,000 症例を超える脂肪吸引専門クリニックの総院長として，脂肪吸引後のトラブルに関する相談を多く受けているのが現状です。

今回，脂肪吸引手術の教科書を作成しようと考えたのは，解剖学的知識から始まり，基本的なテクニックに加えて，部位ごとの詳細かつ具体的な技術を記載することで，今後のトラブルを減少させる一助になるのではないかという信念からです。

本書では，脂肪吸引のコツを理解してもらえるよう，解剖や図解を多く取り入れるとともに，各部位の脂肪吸引手術の動画にコメントを加え，視覚的にもより受け入れられやすいような構成にしています。

この教科書が，未来の美容外科医にとって貴重なリソースとなり，患者様により安全かつ効果的な治療を提供できる一助となることを心から願っています。

2025年8月

THE CLINIC 総院長
大橋昌敬