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- 実験医学増刊 Vol.44 No.2 食で制御する腸内細菌叢と健康~バイオティクスを理解し、個別化栄養へ
商品情報
内容
腸内環境が健康に影響を与えることは,いまや社会一般にも広く認知されるようになってきましたが,その分子機構は極めて複雑です.本書では腸内細菌叢に大きな影響を与える「食」を軸とし,食と腸内細菌,さらに腸内細菌と生体機能の複雑な関係をオミクス解析で紐解く研究を紹介します.さらに,個人差を考慮した「個別化栄養」に向けた展望も.
序文
序
古来より「医食同源」という言葉が示すように,食と健康の関係は人類にとって普遍的なテーマである.近年,この関係性は単なる経験則や現象論にとどまらず,分子レベルでの科学的解明が大きく進んでいる.その中心的役割を担うのが腸内細菌叢であり,エネルギー代謝や栄養素の吸収,免疫調節といった多様な機能を介して,肥満や糖尿病をはじめとする生活習慣病やさまざまな健康状態に直接的な影響を及ぼすことが明らかになりつつある.一方で,世界的なパンデミックや超高齢社会の到来を背景に,医療や健康に対する社会的関心は「疾患治療」から「予防」や「健康増進」へと急速に移行している.健康を守るとはすなわち,生体の恒常性をより強固に維持することであり,そのためには従来の治療中心の発想を超えた新しいアプローチが求められる.そのを握るのが,腸内環境を介した食と健康の分子機構の理解である.
このような流れのなかで,オミクス解析をはじめとする最新の分析技術が大きな役割を果たしている.メタボローム解析やゲノム・トランスクリプトーム解析,さらには高度なイメージング技術の進歩により,食由来栄養素や代謝産物の働きが網羅的に把握され,分子レベルでの代謝やシグナル伝達のしくみが徐々に解き明かされつつある.また,基礎研究から臨床応用まで多様な研究モデルが用いられ,食の機能を理解するだけでなく,新たな機能性分子の発見や微生物を利用した応用研究も進められている.さらに,今後の健康科学においては,個々人の腸内細菌叢や遺伝的背景に応じた「個別化栄養」が重要なテーマとなることが予想される.加えて,プロバイオティクス,プレバイオティクス,シンバイオティクスなどの「バイオティクス」の活用も大きな注目を集めている.これらの研究の進展は,科学的根拠に基づいた次世代型の予防医学やヘルスケアの基盤を形成するものであり,健康寿命の延伸や生活の質の向上に直結する可能性を秘めている.
本書では,腸内環境と食品・栄養との相互作用,その分子機構,さらに個別化栄養や各種バイオティクスの応用に関する最新の知見を,第一線で活躍する研究者に概説いただく.読者の皆様が本書を通じて,食と健康をめぐる研究の最前線と今後の展望を整理し,新しいヘルスケアの構築に向けたヒントを得ていただければ幸いである.
2025年12月
京都大学大学院生命科学研究科 生体システム学分野
木村郁夫
目次
序【木村郁夫】
概論 腸内環境に基づいた食による生体頑強性の強化【木村郁夫】
第1章 食品・栄養による腸内細菌叢の制御戦略
1. 食事由来食物繊維の代謝と腸内細菌叢【大野博司】
2. 腸内細菌叢が利用する食餌性タンパク質:代謝・免疫・感染感受性への影響【金 倫基】
3. 食環境により変動する腸内細菌叢と健康寿命【藤田有香,小幡史明】
4. 腸肝軸を介した腸内細菌による宿主肝の栄養代謝【大谷直子】
5. 成長と老化における栄養・微生物連関【上村 匡,水谷祥子,服部佑佳子】
6. 肥満とインスリン抵抗性における栄養,腸内細菌と宿主の相互作用【藤坂志帆】
7. 食由来腸内細菌代謝物と脂肪酸受容体【西田朱里,山野真由,池田貴子,木村郁夫】
8. 食機能と腸管上皮栄養認識機構【宮内栄治,佐々木伸雄】
第2章 腸内細菌が生み出す機能性分子と各種バイオティクス
1. 母乳成分を介した腸内細菌とヒトとの相互作用【阪中幹祥,片山高嶺】
2. 菌体外多糖による宿主恒常性制御【宮本潤基,笹原大暉,木村郁夫】
3. 腸内細菌叢によるアミノ酸代謝と宿主恒常性【笹部潤平,谷口紗貴子】
4. 食品・腸内細菌由来ポリアミンと宿主機能【栗原 新】
5. 腸内細菌代謝物を捉えるさまざまなリピドミクス手法【津川裕司,有田 誠】
6. [Short Article] 生きた微生物だからこその腸内環境改善作用【小田巻俊孝】
7. [Short Article] 乳酸菌の摂取による血糖コントロールの改善:メタフラメーションを抑制する乳酸菌の開発【利光孝之】
第3章 食と腸内細菌叢による健康・疾患
1. 腸脳相関を介した腸内細菌叢と宿主栄養機能【寺谷俊昭,宮本健太郎,金井隆典】
2. 腸内細菌代謝物を介した宿主免疫応答:腸管恒常性維持と炎症誘導【村上真理,竹田 潔】
3. “貪欲な腸”とメタボリックドミノ:食負荷による腸管炎症と代謝疾患【伊藤 裕】
4. 腸内細菌叢と細胞老化のクロストーク:食による老化制御の可能性【河本新平,原 英二】
5. 細菌の栄養代謝と栄養嗜好性に基づくpathobiontsの腸管定着戦略メカニズム【杉原康平,海老原慎也,鎌田信彦】
6. 食事因子と腸内細菌による腸免疫細胞の制御【丸田ひかり,髙橋大輔,長谷耕二】
第4章 個別化栄養に向けて
1. 微生物叢の多重安定性と生態系機能の制御【東樹宏和】
2. 腸内微生物叢の詳細構造と動態の解明にむけて【増岡弘晃,黒川李奈,須田 亙】
3. 食事・病気・人種集団にもとづいた腸内微生物叢解析【池田一史,友藤嘉彦,岡田随象】
4. 腸内細菌叢を考慮したHealthy Agingのための栄養指導【内藤裕二】
5. 腸内細菌叢制御と精密栄養【吉井 健,國澤 純】
6. 腸内デザインの社会実装:予防と治療をつなぐ循環型ヘルスケア産業の創出に向けて【福田真嗣】
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書籍情報
- ISBN:9784758104326
- ページ数:192頁
- 書籍発行日:2026年1月
- 電子版発売日:2026年1月26日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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