型で実践する生物画像解析 ImageJ・Python・napari

  • ページ数 : 351頁
  • 書籍発行日 : 2025年3月
  • 電子版発売日 : 2025年4月18日
¥6,930(税込)
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商品情報

内容

コーディング未経験でも,高度で複雑な解析も自在にデザイン
画像解析スキルをさらに高めたい方に! あなたの研究目的にあった画像解析法をデザインするための基本戦略とツールの種類・使い方を「型」で体得する超・実践型教本.コーディング未経験でも,最先端の機械学習・深層学習ツールを取り入れた解析自動化や,バイアスの少ない解析を実現できる力が身に付く.

序文

本書のねらい

生物画像解析は生命科学研究の現場で必須の技法になりつつある.その解析手法は複雑化・多様化を続けており,成果を論文にするときには,使ったソフトウェアの記載にとどまらず,解析過程の科学的な説明が求められるようになってきた.本書『型で実践する生物画像解析 ImageJ・Python・napari』では,さまざまな研究プロジェクトで用いられてきた生物画像解析の作業工程を,いわば武道における「型」として紹介し,その背後にあるロジックを解説する.目標は,読者がそれぞれの研究のために作業工程を自分で組み上げる力を身につけることで,盲目的にツールを使うことを越えて,その科学的な意味を理解しながら解析を行えるようになる,つまり解析をデザインできるようになることである.このことは同時に,一流ジャーナルに掲載される論文で扱われる生物画像解析の手法を批判的に読み解く力の養成にもなるであろう.

画像解析に使うツールとして本書ではImageJ(Fiji)と,Python の2 つのエコシステムを扱う.Fiji は無償で提供されているオープンソースの生物画像解析ソフトである.マウスで使うことができるため,初心者にとって使いやすく,しかも最新のアルゴリズムを実装したプラグインが開発され続けており,20年の間に蓄積した膨大な数のプラグインはライブラリとしても豊富な解析資源となっている.こうしたことから,2024年現在,生命科学研究者の間で最も広く使われているエコシステムである.一方でPython もすでに長い歴史をもつエコシステムであるが,近年,特に機械学習の実装が豊富になったことと,GUI による生物画像解析を可能にしたnapari の登場によって生物画像解析においてもその使用が急速に広まっている.本書の読者としては,すでに一定の生物画像解析の経験がある方々を想定している.ImageJ に関しては中級レベルの経験者,Python に関してもすでに生物画像解析の経験がある方々がそれにあたる.必要に応じて2 つのエコシステムを自由に使えるようになると豊富な解析資源を効率的に運用できるようになる.

われわれが2016年に出版した書籍『ImageJ ではじめる生物画像解析』1)は基礎的事項を網羅しており,今でも広く使っていただいている.そこで本書ではこの書籍を前提とし,それを発展させた内容になることを意識して編集を行った.もとになったのは実験医学誌の2023年10月号~ 2024年8月号に掲載した連載である.これらの原稿に加筆を行い,さらに新たな執筆陣も迎えて,連載時の2 倍量の新規原稿が本書には加わっている.内容は基礎編,実践編,論文投稿編,発展編,付録で構成した.

基礎編では,まず序論で生物画像解析の枠組みの解説を行う(基礎編-1).ツールさえ使いこなせば生物画像解析はどうにかなる,という一般的な理解から一歩進むための序論である.次に,Python をJava で実装した軽量プログラミング言語(スクリプト言語)であるJython を使ってFiji の環境で生物画像解析の作業工程を書くための基礎知識を解説する(基礎編-2).このことで,マウスを使ってメニューからアクセスするよりもはるかに自由にFiji の豊富な解析資源にアクセスし,発展的な使い方が可能になる.文法はPython と共通なので,Python の初学者もここからはじめるとよいだろう.続けて,Python の環境で画像データを目で確認しながらスクリプティングを行うツールとして急速に発展しつつあるnapari の使い方を解説する(基礎編-3).データサイエンスではもはや必携ツールとなっているJupyter Notebook からnapari を立ち上げ,コードを書き,napari のGUI を援用しながら処理過程の画像データを確認し,作業工程を組み上げる手法を学ぶことができる.Jupyter Notebook はローカルのマシンだけではなく,無料で提供されているオンラインのGoogleColaboratory でも使うことができる.このサービスを使って画像解析を行う方法も基礎編で紹介する(基礎編-4).

実践編ではこれらの基礎知識をフルに使いながら,具体的な生物学的課題に取り組む作業工程の解説を行う.日本語圏で活躍する生物画像解析の専門家の方々にお願いし,それぞれが得意な分野での生物画像解析の作業工程を紹介していただいた.また,この8年の間に編集・執筆した英語の教科書3 冊2)~ 4)で扱ったトピックの一部を新たに発展させ,最新の情報を加えながらの解説も行った.紹介した7 つの作業工程はそれぞれ特定の系における特殊な課題を扱ったものであるが,その解析手法は「型」としてさまざまな系に応用が可能なはずである.いずれもできるだけスクリプト言語を使って作業工程を組み立てることを主眼とした.論文投稿編では,生物画像解析を手法として使った論文を投稿する際に,その手法を第三者が検証できるようにするにはどのようにしたらよいのか,という解説を行う.現状では,生物画像解析の手法は論文のなかで正確に記述されることが少なく,また実際に解析を行った画像データが検証可能な形式で公開されることも稀である.すなわち,手法の妥当性を第三者が検討するための素材が論文から欠落していることが多い.これは科学の発展にとっては致命的な状況ともいえる.この状況を打開するため,手法の記述と画像データ公開の標準化に向けた国際的な連携が行われている.これらの標準化の成果を紹介したのが,論文投稿編である.

発展編では,画像解析の入力データとなる顕微鏡画像の取得に焦点を当て,オープンソースの顕微鏡制御ソフトウェアMicro-Manager の紹介をする(発展編-1).そして,大容量化するデータに合わせて発展している「次世代画像フォーマット」とよばれる新たな画像形式を紹介する(発展編-2).画像データのサイズの巨大化やファイル数の増大,アクセス手法の多様化,メタデータの複雑化に伴い,それに見合った標準的なファイルフォーマットの開発が急速に進行している.また,生物画像解析を生命科学の新しい分野とするための,世界的なネットワークの形成と発展についてもここで解説を行う(発展編-3).

機械学習を使った分節化の手法は深層学習を応用したさまざまなツールやライブラリが生物画像解析でも使われるようになっている.そこで,少なくともどのようなツールがあるのかだけでも知っていただくため,著者らが実際に使ったことのあるツールのリストを作成し,付録-1「分節化のための機械学習ツールのリスト」とした.また,生物画像解析の専門用語は英語をそのままカタカナにして使いがちである.カタカナ語はそれ自体からは意味を推測しにくいという弊害があり,ましてやカタカタだらけの文章になってしまうとそもそもの概念を把握していなければチンプンカンプンな文章になってしまう.教科書としては本末転倒である.漢字を使った日本語であれば,新しい概念も直感的な把握はある程度可能であろう.こうしたことから本書では専門用語をできるだけ日本語の単語で表記し,さらに付録-2 として「英日対訳表」を付した.生物画像解析の「型」の範囲はとても広い.本書はその代表的な一部を紹介したに過ぎない.とはいえ,この本書が生物画像解析の手法を知り,応用するための新たな素材となることを大いに期待している.

文献

1) 『ImageJ ではじめる生物画像解析』(三浦耕太,塚田祐基/ 著),学研メディカル秀潤社(2016)

2) 『Bioimage data analysis』(Miura K, ed), Wiley-VCH, 2016

3) 『Bioimage Data Analysis Workflows』(Miura K & Sladoje N, eds), Springer, 2020

4) 『Bioimage Data Analysis Workflows ‒ Advanced Components and Methods』(Miura K & Sladoje N, eds),

Springer, 2022


2025年2月

三浦耕太,塚田祐基

目次

基礎編

1 序論 ―生物画像解析の枠組みを理解する 【三浦耕太】

2 Jythonの基礎知識と書き方 【三浦耕太】

3 napariの基礎知識と書き方 【黄 承宇】

4 Google Colaboratoryの利用法 ―クラウドPythonプログラミング 【戸田陽介】

実践編

1 核膜に移行するタンパク質の動態の測定 【三浦耕太】

ImageJ/Fiji  Jython  MorphoLibJ  分節化 輝度測定 連結成分分析 多チャネル 時系列

2 電子顕微鏡画像のミトコンドリア分節化と形状のクラスタリング解析 【河合宏紀】

Python  napari  PHILOW  深層学習 分節化 形状解析 3次元

3 腫瘍血管における3次元管状構造ネットワークの分析 【三浦耕太】

ImageJ/Fiji  Jython  Ops  MorphoLibJ  AnalyzeSkeleton  ネットワーク構造解析 骨格化 3次元

4 細胞移動を定量するための粒子追跡(トラッキング) 【塚田祐基】

ImageJ/Fiji  Jython  TrackMate  StarDist  機械学習 粒子追跡 時系列

5 細胞周期の蛍光プローブFucciの時系列データ解析 【平塚 徹】

ImageJ/Fiji  Jython  TrackMate  粒子追跡 輝度測定 多チャネル 時系列

6 甲殻類モデル生物Parhyale hawaiensisの脚再生過程の細胞動態解析 【菅原 皓】

ImageJ/Fiji  Mastodon  ELEPHANT  BigDataViewer  深層学習 細胞追跡 輝度測定 3次元 時系列 大規模データ

7 イネのデジタルカメラ画像によるバイオマス推定 【戸田陽介】

Python  深層学習 画像認識 RGB 画像

論文投稿編

1 画像解析の再現性チェックリストとGitHubの活用 【三浦耕太】

2 画像データリポジトリとデータベース ーそのしくみと活用法 【遠里由佳子,京田耕司,大浪修一】

発展編

1 Micro-Managerによる顕微鏡制御 【土田マーク彰,塚田祐基】

2 イメージングデータの次世代ファイルフォーマット 【京田耕司,大浪修一】

3 生物画像解析の専門家ネットワークとGloBIAS 【三浦耕太】

付録

1 分節化のための機械学習ツールのリスト 【塚田祐基,黄 承宇,平塚 徹,菅原 皓,戸田陽介,河合宏紀,遠里由佳子,京田耕司,三浦耕太】

2 英日対訳表


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書籍情報

  • ISBN:9784758122801
  • ページ数:351頁
  • 書籍発行日:2025年3月
  • 電子版発売日:2025年4月18日
  • 判:AB判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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