脊椎脊髄ジャーナル 38巻 6号 腰椎椎間孔狭窄の診断と治療up to date

特集にあたって

腰椎椎間孔狭窄は，加齢性変化に伴う神経根障害の重要な原因でありながら，診断が難しく，また治療方針の決定にも高度な判断を要する病態です．椎間孔内の神経根は狭小な構造内に位置し，変性や動態によって容易に圧迫を受け，腰下肢痛や神経根性疼痛の原因となります．こうした背景を踏まえ，本号では本疾患に対する最新の理解と治療アプローチを多角的に取り上げました．

まず，内門久明先生には，腰椎椎間孔近傍における神経根の微小解剖について詳細にご解説いただき，病態理解の基礎となる形態学的情報を提供していただきました．さらに，岩﨑博先生には臨床症状と電気生理学的評価の実際を示していただき，症候と機能評価の関係を明確にしていただいています．

画像診断の領域では，俣木健太朗先生によりトモシンセシス神経根造影動態撮影による新たな診断技術の可能性を紹介いただき，高橋洋平先生にはX線およびCTによる評価のポイントをご提示いただきました．加えて，山田賢太郎先生には3D‒MRIによる椎間孔・神経根の評価について，江口和先生には拡散テンソル画像を用いた神経根の評価についてご寄稿いただいています．これらの診断的アプローチは，椎間孔狭窄の病態解明に大いに資するものです．

治療面においては，手束文威先生に完全内視鏡脊椎手術の適応と成績について，低侵襲手術の可能性を中心にご紹介いただきました．また，小林喜臣先生には椎間孔拡大術・後方椎間固定術の適応と術後成績について，実践的なご報告をいただいています．

本特集が，腰椎椎間孔狭窄に対する診療の質をさらに高め，日常診療に役立つ実践的かつ最新の知識の整理となれば幸いです．ご多忙の中，ご執筆を賜った諸先生方に深く感謝申し上げますとともに，本誌を手に取っていただいた読者の皆様にとって，本号が今後の臨床判断の一助となることを願ってやみません．

慶應義塾大学整形外科　中村雅也