やさしくわかる 小児の予防接種

  • ページ数 : 280頁
  • 書籍発行日 : 2025年6月
  • 電子版発売日 : 2025年6月25日
¥4,950(税込)
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商品情報

内容

やさしく、まじめに、ていねいに
誤情報の拡散や,科学・医学の軽視によって,個人の健康や公衆衛生に深刻な影響が生じかねない昨今,もっとも議論を呼びやすいのが「ワクチン」の問題です.そして,その影響を大きく受けるおそれがあるのが「小児」です.本書では,小児の予防接種に関する基礎知識から,接種現場における実務的な課題,さらにはワクチン忌避の背景に至るまでを,やさしく丁寧に解説しました.

序文


2024年11月,東京大学大学院医学系研究科医療倫理学分野の中澤栄輔教授が,The Lancetに,日本における自己増幅型mRNAワクチン(レプリコンワクチン)に関する誤情報の問題について寄稿した.この新技術を活用したワクチンは日本で初めて導入されたが,その先進性ゆえに誤解や誤情報が急速に拡散した.「体内で無限に増殖する」「他人に伝播する(シュディング)」といった根拠のない主張が広まり,美容院やジムなどの公共施設が接種者の利用を拒否する事例が見られるなど,科学的根拠を欠いた行動に発展している.(Nakazawa E, et al.Lancet. 2024; 10466: 1922-3)また,同号にはトランプ前大統領(当時)の再選に関する社説も掲載された.

その中で The Lancetは,トランプ氏が専門家の意見を軽視し,科学的根拠に基づかない政策を推進してきたことに警鐘を鳴らしている.その結果,誤情報の氾濫や公衆衛生機関の弱体化が進み,CDC(疾病予防管理センター)やFDA(食品医薬品局)といった米国の主要医療機関の信頼性が損なわれつつあると指摘している.この影響は米国内にとどまらず,国際的な医療政策や公衆衛生にも波及する可能性があると懸念されている.(Lancet. 2024; 10466: 1897)これら2つの記事に共通するテーマは,誤情報の蔓延や科学軽視が,健康・公衆衛生,さらには社会全体に深刻な悪影響を及ぼすという事実である.

振り返れば,2018年にも誤情報が危機を引き起こしかねなかった事例がある.

MMRワクチン(麻疹・おたふくかぜ・風疹ワクチン)が自閉症を引き起こすと主張する映画「VAXXED(邦題: MMRワクチン告発)」が日本で上映される予定だった.この誤情報に基づく動きは,科学的根拠を無視し,ワクチン接種への信頼を揺るがしかねなかった.幸い,配給会社の判断で上映は中止されたが,この出来事は,私自身に「多くの人にワクチンの正しい知識を伝えるにはどうすべきか」という問いを突きつけた.そしてその問いを契機に,盟友である森戸やすみ氏の呼びかけを受け,一般向けのワクチン解説書を執筆するに至った.それが2019年9月のことである.

翌年,2020年には新型コロナウイルス感染症が世界を襲い,パンデミックの中で誤情報や科学軽視が再び大きな問題となった.ワクチン,マスク,感染予防策など,あらゆる側面でヘルスリテラシーが試され,現在も社会的混乱が続いている.

こうした時代において,誤情報や科学の軽視に抗するためには,科学的根拠に基づく情報発信,リスクコミュニケーションの確立,公衆リテラシーの向上が不可欠である.しかし,これらを「お上任せ」にするだけでは不十分である.私たち医療人一人ひとりが,科学の代弁者(アドボケイト)として声を上げ,行動する責務を負っている.

本書では,ワクチンに関する基礎知識から接種現場の実務的課題,オペレーションマネジメントに基づく改善提案,さらには社会的・心理学的背景を含む広範なテーマに触れるよう努めた.しかし,私自身の知識や経験が必ずしも完璧ではないことをお伝えしなければならない.本書の内容は可能な限り正確性を期し,多くの文献や資料に基づくよう心がけたが,限られた視野や理解の不足により,読者の皆様のご期待に沿えない部分もあるかもしれない.ワクチンに関する事象は幅広く奥深いため,本書が完成された形ではないという指摘は否めない.

読者の皆様からのご指摘やご意見を謙虚に受け止め,今後の学びの糧としたいと考えている.

読者の皆様がこの書を通じて一層の理解を深め,ワクチン接種の実践に役立てていただければ幸いである.


2024年12月

宮原 篤

目次

1章 ワクチンの種類

1 ロタウイルスワクチン

2 B型肝炎ワクチン

3 二種混合/三種混合/四種混合/五種混合

4 肺炎球菌ワクチン(小児用肺炎球菌ワクチン)

5 結核(BCG)

6 MRワクチン

7 おたふくかぜワクチン

8 水痘ワクチン

9 日本脳炎ワクチン

10 インフルエンザワクチン

11 新型コロナウイルスワクチン

12 HPVワクチン

2章 ワクチン接種の実際

1 ワクチン接種のプロセス

2 より痛みの少ないワクチン接種法

3 筋注と皮下注

4 シリンジは吸引する?(逆血確認)

5 ワクチンの「禁忌」

6 「風邪」は接種できない? 延期する?

7 医療スタッフのワクチン

8 TORCH症候群と妊婦へのワクチン

9 渡航ワクチン

10 ワクチンのスケジューリング

11 ワクチンの接種間隔

12 定期接種と任意接種

13 定期の予防接種における年齢・間隔について

14 ワクチン接種におけるチェック方法

15 ワクチンカラー

16 ミスを減らすための「7つのR」

17 ワクチンの保存方法

18 在庫管理

19 ワクチン接種方法のナレッジ・マネジメント

20 ワクチン接種に必要な組織風土

3章 ワクチンの効き方

1 集団免疫(群れ免疫)について

2 集団免疫を得るための接種率は?

3 アレルギーについて

4 ワクチンの効果判定

5 アジュバント

6 免疫から見たワクチンが効く理由

7 ワクチンの内容物について

8 補体阻害薬とワクチン

9 副反応についての考え方

10 副反応の種類

+1 薬害と統計学・疫学

+1 新型コロナワクチンの有害事象 –VAERSデータクラスター分析から–

11 ワクチン副反応の補償

+1 予防接種と無過失補償・免責制度 日本の予防接種裁判の歴史から

4章 ワクチン忌避

1 行動経済学からみたワクチンの説明

2 ワクチン接種のリスク・しないリスク 費用対効果から

3 VPDと3C/5C/7Cについて,その対策について ―仲間を増やそう

4 情報の調べ方とバイアス

5 「悪魔の物質DHMO」と「量の概念」

6 ワクチン忌避(ワクチンヘジタンシー)と ソーシャルメディア

7 推定アプローチと動機づけ面接

8 日本のワクチン行政

終わりに:責任追及を超えて構造を問う

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書籍情報

  • ISBN:9784498071209
  • ページ数:280頁
  • 書籍発行日:2025年6月
  • 電子版発売日:2025年6月25日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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