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HeartView 2026年9月号 30巻9号 循環器疾患の性差を考える ~理解から臨床への応用へ~

  • ページ数 : 112頁
  • 書籍発行日 : 2026年8月
  • 電子版発売日 : 2026年8月9日
¥3,300(税込)
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商品情報

内容

循環器疾患の性差を考える ~理解から臨床への応用へ~


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序文

企画にあたって


循環器疾患における性差は, 虚血性心疾患(ischemic heart disease:IHD), 心不全(heartfailure:HF),弁膜症,不整脈,高血圧,心筋症,脈管疾患など,ほぼすべての領域に存在する。例えば虚血性心疾患では,男性では動脈硬化性冠動脈疾患が主体である一方,女性では冠攣縮(coronaryarteriospasm),冠動脈閉塞を伴わない心筋虚血 (ischemia with non-obstructive coronary arterydisease:INOCA) / 冠動脈閉塞を伴わない心筋梗塞(myocardial infarction with non-obstructivecoronary arteries:MINOCA),自然冠動脈解離など,従来の診断枠組みでは見逃されやすい病態が少なくない。心不全では女性に左室駆出率の保たれた心不全(heart failure with preserved ejectionfraction:HFpEF)が多く,弁膜症では弁石灰化,弁輪径,左室リモデリング,介入時期に性差が影響する。不整脈,心筋症,脈管疾患においても,発症年齢,臨床像,治療反応,予後には男女で異なる特徴がみられる。

こうした性差は,単なる生物学的差異に留まらない。性ホルモン,染色体,遺伝,代謝,炎症反応,体格や血管径といった内的要因に加え,妊娠・出産,閉経,社会的役割,医療アクセス,受診行動,さらには診療現場における無意識のバイアスも複雑に関与する。すなわち,循環器疾患の性差を理解することは,「女性に多い疾患」「男性に多い疾患」を知ることに留まらず,目の前の患者の病態をより正確にとらえ,適切な診断と治療に繋げるための実践的な視点である。

一方で,これまでの循環器診療や臨床研究は,男性患者を中心としたエビデンスに基づいて構築されてきた面がある。大規模臨床試験における女性の登録割合は十分とはいえず,女性特有のリスク因子やライフコースに沿った変化が,既存のリスク評価や診療指針に十分反映されているとは限らない。また,医療提供側にも偏りが存在する。日本では循環器専門医に占める女性医師は約14%に留まり,特に虚血性心疾患やインターベンション領域ではさらに少ない。患者側だけでなく,医療者側の多様性の不足もまた,性差への気づきや診療・研究課題の設定に影響しうる重要な要素である。

本特集では,循環器疾患の性差を「識る」「診る」「治す」の3つの視点から体系的に整理した。「識る」では,生物学的背景,社会的背景,疫学,基礎研究を通じて性差の基盤を理解する。「診る」では,虚血性心疾患,弁膜症,心筋症,心不全,不整脈,脈管疾患,高血圧における臨床像と診断上の課題を取り上げる。「治す」では,薬物療法,血行再建,弁膜症治療,カテーテルアブレーション,心臓リハビリテーション,そして研究・教育への展開を含め,性差を臨床実装へ繋げる方策を考える。

性差を考慮することは,診療を二分することではない。むしろ,患者一人ひとりの背景,病態,リスク,価値観を丁寧に見極め,より質の高い個別化医療を実践するための出発点である。本特集が,循環器疾患における性差を理解し,日常診療の中で「この患者にとって本当に最適な診療は何か」を考える契機となれば幸いである。


青山里恵(船橋市立医療センター心臓血管センター/ 循環器内科 副部長)

目次

特集:循環器疾患の性差を考える~理解から臨床への応用へ~  企画・構成:青山里恵

【識る】

1-1 循環器疾患における性差を生物学的背景から読み解く  黒川洵子,児玉昌美,清水聡史,渡邊泰秀,瀧本英樹

1-2 循環器疾患における性差を社会的背景から読み解く  大塚麻樹

2 疫学からみた循環器疾患の性差:日本と世界の比較  鈴木隆宏,水野 篤

3 循環器疾患における性差医学の基礎研究  三上義礼,赤羽悟美

【診る】

4 女性の虚血性心疾患をいかに見逃さず診断するか:病態の特性と診断精度向上のための視点  堀江華奈,須藤洋尚,青山里恵

5 弁膜症・構造的心疾患の性差:カテーテル治療の進歩に伴う個別化医療の重要性  石津智子

6 心筋症の性差:たこつぼ症候群・二次性心筋症・遺伝性心筋症の特徴と課題  加藤 賢

7【Expertise】心不全の性差:疫学的特徴を踏まえた鑑別診断,リスク評価,初期対応  東條美奈子

8 不整脈における性差:発症機序と診断上の特徴  萩原かな子,岩﨑雄樹

9 脈管の性差:末梢動脈疾患,大血管疾患を中心に  舟橋紗耶華

10 高血圧疾患の性差:ライフステージを通した血圧制御の多様性  三戸麻子

【治す】

11 心不全治療薬における性差:SGLT2阻害薬・ARNI・MRAのエビデンス  木田圭亮,磯崎弘恵,村田理沙子

12【Expertise】虚血性心疾患を有する女性の治療における意識改革と今できること  佐藤千聡,若林公平

13【Expertise】弁膜症治療における性差:女性に最適化された治療戦略を求めて  岩田樹里,林田健太郎

14【Expertise】不整脈治療における性差:カテーテルアブレーションと薬物反応  藤本雄飛

15 心臓リハビリテーションと生活習慣改善にみる性差:多様性に配慮した循環器診療の実装に向けて  中山敦子,吉田あずさ,長谷川恵美子

16 性差研究を臨床に活かすために:データベースと次世代教育の展望  髙橋佐枝子

連載

・病態から読み解く心不全診療のパラダイムシフト

第6回 心不全の自然歴:なぜ「病の軌跡」をたどるのか  安村良男

・医療から行動経済学を再考する―Heart View出張編―

第4回 【社会の影響】「誰が言ったか」が情報の価値を歪める?  水野 篤

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書籍情報

  • ISBN:9784008103009
  • ページ数:112頁
  • 書籍発行日:2026年8月
  • 電子版発売日:2026年8月9日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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