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- 実験医学増刊 Vol.43 No.17 徹底解剖 タンパク質発現異常 疾患の原因が見えてくる!新機構27選
商品情報
内容
疾患につながる「異常タンパク質」発生の最新メカニズムを,転写・RNA・翻訳・タンパク質の4つのカテゴリで総覧できる1冊.あなたの疾患研究のブレイクスルーにつながる革新的なアイディアがきっと見つかる!セントラルドグマ周りの知見アップデートにも.
序文
序
「生命とはタンパク質の存在様式である※」
19世紀終盤にフリードリヒ・エンゲルスが発した生命の定義である.一般的には知られていないし,数多ある生命の定義のなかで異彩を放って聞こえる.なぜか? 筆者が考えるに,20世紀半ば以降に急速に発展した分子生物学がDNAを起点とした生命観に中心を置いたので,タンパク質に焦点を置いた生命の定義が異質に思えるのかもしれない.DNAの二重らせん構造の解明に端を発してセントラルドグマが確立すると,「DNA → RNA →タンパク質」という情報の流れから,タンパク質は「DNAのしもべ」であり,遺伝情報の発現制御は精妙な転写レベルで完了するという見方が多かったのではないか.実際,遺伝子,ひいてはゲノムがわかれば生命が理解できるという究極のプロジェクトがヒトゲノム解読計画だったと思われる.疾患研究においても,生命システムやネットワークの破綻をもたらす因子やシグナル伝達経路を特定し,それらにかかわるタンパク質をコードする遺伝子の変異に原因を求めることが主流だったのは間違いない.
しかし,近年ではそういったDNA・遺伝子至上主義だけでは生命の理解,疾患のメカニズム解明には不十分であるという認識が高まっている.一つには,セントラルドグマの転写以降,端的に言えば,タンパク質の発現制御に関して従来の常識を覆すような知見が蓄積してきたことによる.筆者がかかわる例としても,タンパク質のフォールディング異常が神経変性疾患に直結するアミロイドやプリオン,翻訳されないと考えられてきたRNAからの疾患関連ペプチドの産生など,従来の遺伝子研究だけでは説明のつかない現象が続々と報告されている.
じつは,本増刊号は2022年に出版された実験医学増刊号『セントラルドグマの新常識』のスピンオフである.その増刊号では,基礎研究の立場から転写,翻訳に関する驚きの新機構,再定義されるRNAやタンパク質の世界などをまとめたのだが,本増刊号ではそこで紹介した新常識を疾患に絡めた.つまり,疾患研究者が注目するタンパク質の異常を本書でカタログ的・網羅的に検索してヒントや洞察を得ることに役立てていただければということで,新知見にかかわる研究者に執筆いただいた.本書に満載されているタンパク質発現にかかわる新常識をインプットすることで,原因不明の疾患に関して,これまで思いもよらなかった新たなメカニズムを元にした作業仮説が生まれ,ひいては新たな治療戦略や創薬などにつながることを期待したい.
2025年9月
東京科学大学 総合研究院 細胞制御工学研究センター
田口英樹
※フリードリヒ・エンゲルス『自然弁証法/ 反デューリング論(1878 年)』より引用.エンゲルスは「マルクス・エンゲルス」でよく知られる思想家・哲学者である.DNA の役割など分子生物学の詳細が全くわかっていなかった19 世紀後半になぜ「Life is the mode of existence of protein bodies」と生命を喝破したのか謎である.
目次
序【田口英樹】
概論 疾患研究に新たな切り口をもたらすタンパク質発現異常の新メカニズム【田口英樹,松本有樹修】
第1章 転写関連の異常
1. Go-No-Go:RNAはどこまで転写される?【中山千尋,野島孝之】
2. エピジェネティクスの異常【堀居拓郎,井上 梓】
3. 個体発生における転写バースト制御機構【深谷雄志】
4. 遺伝子制御異常としての“エンハンサー病”の分子基盤【村川泰裕,孫 楽】
5. リピート伸長と転写制御異常:ロングリードシークエンスで明らかになったものを交えて【宮武聡子,松本直通】
6. RNAスプライシングの制御機構とその破綻:がんを例に【長谷川千紘,大島正義,西村耕太郎,井上大地】
7. 有害配列のエクソン化とその拮抗分子4.5SH RNA【芳本 玲】
第2章 RNA関連の異常
1. tRNA修飾異常によるタンパク質合成への影響【鈴木健夫】
2. RNAメチル化修飾による神経細胞内の遺伝子発現の空間制御【王 丹】
3. RNAが起点となり構築される生体分子凝縮体の異常と疾患【山崎智弘,廣瀬哲郎】
4. グアニン四重鎖によるプリオン性タンパク質の凝集機構【矢吹 悌,塩田倫史】
5. 環状mRNA医薬開発を切り拓くICIT機構【福地康佑,阿部奈保子,阿部 洋】
第3章 翻訳関連の異常
1. 神経筋疾患におけるリピート関連非AUG依存性翻訳【藤野雄三,永井義隆】
2. Ribosome heterogeneityが生み出す翻訳制御とその破綻がもたらす病態【白石千瑳,松本有樹修】
3. 翻訳品質機構による異常翻訳解消の分子機構と生理機能【稲田利文】
4. 非典型翻訳産物のMHC提示とがんに対するT細胞免疫監視【金関貴幸】
5. アミノ酸代謝とリボソーム生合成の異常:がんを例に【大澤 毅】
6. mRNA翻訳とミトコンドリアのクロストークによる エネルギーバランスの維持【勝村早恵,森田斉弘】
7. 多細胞生物における翻訳開始因子eIF4G2の機能【國富晴子,山中伸弥】
8. 局所翻訳:遺伝子発現と疾患をつなぐ空間制御の最前線【七野悠一】
9. 意図的な「掟破り」による遺伝情報の拡張戦略【茶谷悠平】
10. ストレス顆粒形成の異常と疾患【武川睦寛】
第4章 タンパク質の異常
1. 共翻訳フォールディングとその異常が関与する疾患【田口英樹】
2. 倍数性変化がもたらすタンパク質恒常性の異常【上原亮太】
3. アミロイドの生成と伝播【佐野俊春,田中元雅】
4. プリオンの細胞内増殖・細胞間伝播機構【堀内基広】
5. タンパク質分解系の異常:ユビキチン・プロテアソームとオートファジー【坂巻純一,小松雅明】
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書籍情報
- ISBN:9784758104302
- ページ数:221頁
- 書籍発行日:2025年10月
- 電子版発売日:2025年10月24日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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