心エコー 2025年6月号（26巻6号）完全攻略！ACHD心エコー図プロトコル～ISACHDの国際標準をめざして

成人先天性心疾患心エコーの国際標準プロトコルの実践をめざして

成人先天性心疾患adult congenital heart disease（ACHD）の患者は，現在50万人を超えるとされ，今後毎年約1万人ずつ成人に達すると考えられています．これは，外科手術，内科管理，そして近年ではカテーテルインターベンションの進歩によるものです．先天性心疾患は完治せず，修復後にも遺残症や後遺症に対して，生涯に渡り定期的な診療を行う必要があります．そのなかで心エコー図検査は，非侵襲的かつ複雑な構造異常や血行動態の変化をリアルタイムで記録することができる優れたツールです．一般循環器医師，一般心エコー技師は，主に成人の後天性心疾患の心エコー図検査を行っており，心機能や局所壁運動異常の評価，弁膜症の重症度評価などは得意とするところです．一方，ACHD患者の心エコー図検査においては，原疾患の特徴，自然歴，手術術式，術後歴などを事前に把握し，臨床医が知りたい情報を明確にする必要があるため専門的な知識が要求されます．さらに，通常の描出法では診断できない場合が多く，特殊な断面を用いて診断する難しさゆえに苦手意識をもっている先生方が多いと思います．

2023年より，日本心エコー図学会と日本成人先天性心疾患学会が共同で国際成人先天性心疾患学会（ISACHD “ アイザック”）推奨の国際標準化心エコー図プロトコルの紹介を行っています．このプロトコルは，ACHD患者における心エコー図の手順や，レポートに記載するデータの指針を示すことを目的としており，12の疾患に関するプロトコルが記載されています．これにより，重要な解剖学的・機能的情報の見逃しを防ぐことができ，ACHD患者における心エコー図検査の標準化につながります．ただ，実際の使用においては，さまざまな意見が寄せられており，日常臨床へ実装するには，プロトコルに基づいた検査レポートの雛形の作成と公開が必要と考えます．

本特集では，基本的で重要な単元を取り上げ，実例に基づき，プロトコルに沿った心エコー図レポートの雛形を紹介しています．一般循環器内科の心エコーラボの技師向けに解説を加えていますので，明日からの実践で活用してもらいたいと考えています．

中島英樹・石津智子