皮膚疾患診療 最新ガイドライン　第2版

序文

現代の情報社会において，医師にはエビデンスに基づいた診療が求められています．しかし，日常診療の多忙さの中で常に最新の知見を把握し，それを実践することは容易ではなく，並々ならぬ努力を要します．診療ガイドラインは法的拘束力を持つものではなく，必ずしも厳守しなければならないものではありません．しかし，その内容を十分に理解しないまま，あるいは合理的な理由なく逸脱した治療を行った場合，患者に不利益をもたらし，医療過誤として問題視される可能性があります．

すべてのガイドラインを詳細に把握することが困難である現状を踏まえ，2023年に本書はガイドラインへのガイドとして発刊されました．皮膚疾患に関する数多くの診療ガイドラインの概略を，コンパクトに把握できることを目的としたものです．それから2年が経過しようとする今，医療の進歩はさらに加速しています．新規作用機序を有する外用薬，アトピー性皮膚炎に対する新たな生物学的製剤，円形脱毛症に対する革新的な治療薬の登場など，皮膚疾患の治療に携わる医師は，常に最新の情報をアップデートする必要に迫られています．

この短期間にも，薬剤性過敏症症候群診療ガイドラインおよび家族性良性慢性天疱瘡診療ガイドラインが新たに発表され，さらにアトピー性皮膚炎診療ガイドライン，円形脱毛症診療ガイドライン，結節性硬化症診療ガイドライン，メラノーマ診療ガイドラインなどが改訂されました．本書では，これらの改訂内容について各専門家が加筆し，最新の情報を一目で把握できるよう工夫しています．

また，今回の改訂では，巻頭に4つのトピックスを新たに加え，最近使用可能となった薬剤の解説を追記することで，より時代に即した内容としました．さらに，今回新に各項目にカラーの臨床写真を加え，皮膚科専門医でない医師にも理解しやすいよう配慮しました．

本書の執筆陣は，それぞれの領域を代表する専門家です．本書が，皮膚科診療に携わるすべての医師にとって，ガイドラインに基づいた最適な治療を実践するための一助となることを願っています．

東邦大学医学部 皮膚科学講座 教授 石 河　晃