- m3.com 電子書籍
- 実験医学別冊 大規模データで困ったときに、まず図を描くことからはじめる生命科学データ解析
商品情報
内容
シングルセル,メタゲノムseq,プロテオームなどの膨大なデータは『図』として可視化してこそ,真価が引き出されます.UMAP,MAプロット,ヒートマップ…本書では生成AIの力を借りながら自分で思いのままに可視化する方法を解説します!作図プロセスを通してデータの核心を掴み,より本質的な研究に進みたいあなたへ
序文
はじめに
データは「図」という形で結晶化されてこそ,理解への礎となる.
膨大な数値や複雑な結果が行き交う生命科学研究の世界において,私たちの思考を整理し,直感的かつ核心を掴むための道標となるのは,いつでも「可視化」という力である.現代の医学・生命科学研究は,分野を越えた連携のもとますます多様化し,膨大なデータが日々生み出されている.研究者同士が専門性を補い合い,共同研究が進むにつれ,取得データを正しく活用する図表のセンスが一層問われるようになってきた.しかし,せっかく取得したデータも,作図のプロセスを理解していなければその真価を引き出すことができず,結果として「wet(実験)」と「dry(解析)」の両者がすれ違う場面さえ生じるのである.
そもそも,多くの分野では「ファーストアクション」となる作業がほぼ定まっている.ゲノム解析であればアセンブリ統計情報をまとめ,遺伝子発現を比較したければ発現量と発現変動比を示すMAプロットをまず描く,といった具合である.こうしたファーストアクションの手順さえ身に付けることができれば,専門外のデータにも臆することなく取り組めるようになり,分野を越えて得られた知見を最大限に生かすことが可能となる.
本書は,この「ファーストアクション」を体系的に学ぶためのガイドとして企画した.第Ⅰ部では,外注サービスの多様化でデータ取得のハードルが下がったシークエンス分野から,ゲノム,トランスクリプトーム,メタゲノム,ChIP-seq,Hi-C,シングルセルトランスクリプトームなどの解析を,さらに公共データベースやコアファシリティの充実で広がりを見せるプロテオーム,顕微鏡解析,高速原子間力顕微鏡(AFM)といった分野を取り上げた.それぞれの専門家に一次データから図表の作成に至るまでのプロセスを丁寧に解説していただくことで,読者がデータを可視化していく具体的かつ有用な手順を学ぶことができるようになっている.さらに第Ⅱ部では,大学院生レベルの初学者を想定し,大規模言語モデル(large language model:LLM)との対話を通じて論文図表を再現する新しい学習体験を提示する.環状ゲノムマップやヒートマップ,主成分分析,注釈付き系統樹,ChIP解析,UMAP,Trajectory解析,MAプロット,Volcanoプロットといった多くの研究論文に登場する代表的な作図手法を取り上げ,PythonやRを用いながら「どのように対話し,どのように再現していくか」を探究している.プログラミング言語やライブラリの特性を理解し,自らビジュアルを生み出し,インタラクティブに操作する喜びを伝えたいという思いが込められている.
他者がすでに作成した図を見るだけでは捉えきれない図の本質が“自分で動かす”作業として具現化し,単調になりがちなプログラミング学習が実体験に結びつく瞬間は,学ぶ者に大きなモチベーションをもたらす.本書を通じて,多様なデータの可視化に対する理解を深め,新たな研究課題にも柔軟に応用できる力を養っていただきたい.まずは,それぞれの分野でのファーストアクションを確実に自分の足で踏み出し,その先に広がる世界へと繋げていく一歩として,本書がお役に立てば幸いである.
2025年5月
河野暢明
目次
はじめに【河野暢明】
本書の使い方
プログラミングの基本事項【河野暢明】
第Ⅰ部 生命科学データ別にファーストアクションを学ぶ
第1章 ゲノム【河野暢明】
はじめに
1 ゲノム統計値
2 コンタミネーション評価
第2章 トランスクリプトーム【河野暢明,山本フィリップ】
はじめに
1 遺伝子発現の定量,発現変動遺伝子の抽出,機能解析
2 ドットプロット
3 バブルプロット
4 ネットワーク
5 ウェブアプリケーションの紹介
第3章 メタゲノム/16S rRNA アンプリコンシークエンスデータ【平岡聡史】
はじめに
1 シークエンスデータのクオリティコントロール(QC)
2 全メタゲノムに対する配列データのカバレッジ推定
3 群集構造解析
4 NMDS(非計量多次元尺度構成法)解析
5 遺伝子機能アノテーション
6 メタゲノムアセンブリ
7 MAGの構築と系統推定
8 16S rRNAアンプリコン配列解析
第4章 ChIP(クロマチン免疫沈降)-seq【大島 拓,深町和貴】
はじめに
1 ピークの検出
2 ピーク位置の推定とコンセンサス配列の決定
3 複数のChIP-seqデータの比較
まとめ
第5章 Hi-Cデータ【竹俣直道】
はじめに
1 データのクオリティチェックのためのcis相互作用定量
2 ヒートマップによるHi-Cコンタクトマップの可視化
3 サンプル間での相互作用の変化の可視化
4 A/Bコンパートメントの形成パターンの可視化
5 サドルプロットを用いたA/Bコンパートメント強度の解析
6 insulation scoreのプロット1
7 insulation scoreのプロット2
8 contact probabilityのプロット
9 contact probabilityの一次導関数解析
第6章 シングルセルトランスクリプトーム ~公開データとの統合・比較解析【佐伯憲和】
はじめに
モジュールインポート・環境準備
1 取得データ(クエリデータ)の解析
2 リファレンスデータへのマッピング
3 統合・ラベル転移データを用いた発現プロファイル比較
第7章 プロテオーム ~網羅的なタンパク質解析と図表作成・データ登録【岩崎未央】
はじめに
1 Perseusを用いたPCA解析とクラスタリング解析の可視化
2 質量分析データのリポジトリ登録
第8章 顕微鏡データ ~デジタルステイニングによる細胞核の可視化と形態解析【増田正人,山中大介,宮本崇史】
はじめに
1 市販の画像解析ソフトウェアを用いたデジタルステイニング
2 Pythonを用いた核の画像の二値化
3 Pythonを用いた核の形態の解析
4 Pythonを用いた核の形態情報のUMAPによるクラスタリング
第9章 高速原子間力顕微鏡(AFM)データ【西口茂孝】
はじめに
1 高速AFM画像の見方と表示方法
2 高速AFM画像の質の評価
3 高速AFM画像の前処理
4 分子の大きさの解析
5 分子の高さの解析
6 分子の動きの解析
第Ⅱ部 LLMとの対話を通じて理想のデータビジュアルをつくる
第1章 データから適切なグラフを選ぶ方法【中川 恒】
はじめに
1 データ可視化手法を探索する
2 データ可視化にChatGPTを利用する
3 ChatGPTを用いたデータ解析や可視化時の注意点
第2章 環状ゲノムマップ ~Circosを用いた作成方法【竹川瑠華】
1 環状ゲノムマップの読み方と読み取れる情報
2 環状ゲノムマップが用いられるシーンとCircosの概要
3 Circosで描画を行う手順
第3章 ヒートマップ【藤本悠人】
はじめに
1 ヒートマップ作成の準備
2 使用データの準備
3 ヒートマップの作成
第4章 主成分分析(PCA)【山本フィリップ】
はじめに~主成分分析(PCA)とは
1 メタボロミクスのPCA
2 シングルセルプロテオミクスのPCA
第5章 注釈付き系統樹【荻野 馨,河野暢明】
はじめに
1 注釈付き系統樹の読み方
2 注釈付き系統樹の作成
第6章 ChIP(クロマチン免疫沈降)-seqピーク解析【中川 恒】
はじめに
1 ChIP-seq解析の図の読み方
2 ChIP-seq解析とは
3 実行コード
4 WashU Epigenome Browserでの可視化
第7章 UMAP・Trajectory解析 ~シングルセルRNA-seqデータの描画【増井真那】
はじめに
1 次元削減手法の概要
2 UMAPプロットの作成
3 次元削減後の解析(シングルセルTrajectory解析)
第8章 MAプロット・Volcanoプロット ~RStudioを使用した遺伝子発現変動を示す図の描き方【松本美亜,河野暢明】
はじめに
1 DEG解析とは
2 MAプロット
3 Volcanoプロット
便利機能
- 対応
- 一部対応
- 未対応
- 全文・
串刺検索 - 目次・
索引リンク - PCブラウザ閲覧
- メモ・付箋
- PubMed
リンク - 動画再生
- 音声再生
- 今日の治療薬リンク
- イヤーノートリンク
- 南山堂医学
大辞典
リンク
- 対応
- 一部対応
- 未対応
対応機種
iOS 最新バージョンのOSをご利用ください
外部メモリ:11.8MB以上(インストール時:29.7MB以上)
ダウンロード時に必要なメモリ:47.1MB以上
AndroidOS 最新バージョンのOSをご利用ください
外部メモリ:11.8MB以上(インストール時:29.7MB以上)
ダウンロード時に必要なメモリ:47.1MB以上
- コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
- コンテンツの使用にあたり、m3.com電子書籍アプリが必要です。 導入方法の詳細はこちら
- Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
- Androidロゴは Google LLC の商標です。
書籍情報
- ISBN:9784758122825
- ページ数:349頁
- 書籍発行日:2025年6月
- 電子版発売日:2025年6月21日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
お客様の声
まだ投稿されていません
特記事項
※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。
※コンテンツの使用にあたり、m3.com 電子書籍アプリが必要です。
※eBook版は、書籍の体裁そのままで表示しますので、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。