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- 誰でもできるエビデンス構築 システマティックレビューがスラスラと読める・書ける本
商品情報
内容
序文
監修の序
医療分野において,エビデンスに基づいた実践(Evidence-Based Practice)の重要性は年々高まっています。患者さんに最良の治療を提供するためには,複数の研究を網羅的に探したうえで,体系的に統合し,より確実性の高いエビデンスを見極める力が不可欠です。そのための強力なツールがシステマティックレビューとメタアナリシスです。
前書『明日からできるエビデンス構築 スコーピングレビューが短期間で読める・書ける本』の続編として,本書では,より厳密な方法論に基づいて特定の臨床課題に答えるシステマティックレビューの実践的スキルを習得していただくことを目的としています。
本書の最大の特徴は,システマティックレビューに関する知識とスキルを網羅的に学べる構成にあります。第1章では基礎概念の理解から始まり,第2章では論文を正確に読み解くスキルを身につけ,第3章では実際に作成するための実践的手法を詳しく解説しています。特に注目していただきたいのは,最新のAI技術を活用した研究手法の紹介です。生成AIの進歩により,従来は膨大な時間を要していた作業を短縮する方法により,多忙な業務の合間でも,質の高いシステマティックレビューを実施することが可能になりつつあります。
本書で採用しているGRADEアプローチによるエビデンスの確実性評価については,結果の解釈は比較的理解しやすいものの,その判断に至るまでの過程の実践には一定の習熟が必要です。実際,GRADEアプローチの創始者であるGuyatt自身も,この難しさを受けて最近「Core GRADE」という簡略化されたアプローチを提唱しています。本書では,システマティックレビューを読む際には1人で十分対応できるレベルまで,そして実際に作成する際にはメンターの指導の下で実践できるレベルまで,段階的に学習できるよう工夫を凝らしました。
エビデンスに基づいた実践は,患者さんのアウトカム向上に直結するだけでなく,私たち医療従事者の批判的思考力の向上,研究手法への理解深化,そして専門知識の体系的整理にも大きく寄与します。本書を通じて,医療分野におけるエビデンス活用・創出の担い手として,皆さんが活躍されることを心より願っています。
2025年6月
片岡裕貴
編集の序
前書『明日からできるエビデンス構築 スコーピングレビューが短期間で読める・書ける本』の上梓から約1年半が経ちました。前書では,初めてレビュー研究に挑戦される方々を主な対象とし,なるべく難しい言葉を用いずその方法論を解説し,レビュー研究の完遂までサポートするという,私の日々の活動や資料を書籍1冊に落とし込むことができました。構想から執筆まで非常に入念な準備を行い,執筆された原稿の推敲に多くの労力と時間を注いだ甲斐もあってか,刊行後は読者の皆様より書籍に関する温かいコメントを多数いただけたことが非常に嬉しかったことを覚えております。
タイトルにある通り,前書はスコーピングレビューにフォーカスを当てた1冊でしたが,読者の方々から,「次はぜひ,システマティックレビューに関する初心者向けのガイド本を書いてほしい」といったご要望をいただくこととなりました。われわれのグループでは,これまでシステマティックレビューとスコーピングレビューでおおむね同じ数のプロジェクトを実践してきた経緯もあったため,大変嬉しいご要望でもあったのですが,その方法論の難しさは遥かにスコーピングレビューを上回るものであるため,果たして書籍1冊にまとめることができるものか,当初はいくらかの懸念がありました。
しかしながら,われわれが初めてシステマティックレビューの方法論を学んだときの苦難・大変さを思い返し,われわれが苦しんだ経験や,陥ってしまった多くのピットフォールを糧に,少しでも後世の方々がそれらを回避し,システマティックレビューに対する心理的ハードルを下げてもらえる一助,あるいはその成功・完遂率を上げてもらえるようなお守りのような存在となれるのであれば,これほどまでに社会貢献ができるチャンスはないのではないかと考えました。今回も,構想から執筆に想定以上の労力と時間がかかってしまいましたが,多くの方々のご協力の末,無事執筆関係者一同が満足する書籍を完成させることができました。本書では,初めてシステマティックレビュー研究に挑戦してみたい方々を主な想定読者とし,序盤ではシステマティックレビューに関する概要や,メタアナリシスを含むその論文の読み方について解説しています。次に,近年報告数が非常に増加傾向にあるネットワークメタアナリシス論文の読み方の基本を押さえ,続けて多くのボリュームを割いて,実際にシステマティックレビューを行うための手順を,今回も小さなステップごとにわかりやすく解説しています。システマティックレビューの中でも,メタアナリシスを伴う方法論としては実際には有病率のメタアナリシス,診断精度のメタアナリシスなどさまざまなバリエーションがありますが,今回は初心者にも比較的取り組みやすいと思われる,治療効果のメタアナリシスにフォーカスしております。
最近導入されるようになってきている,比較的新しく,トレンドになっているような良いだろうと思われている1つの治療と,従来からなされているような別の標準的な治療と,どちらが科学的に優れていると言えるのか。実臨床において,このような疑問を感じる若手〜中堅世代の方々は,少なくないのではないでしょうか。前述のようなある治療と別の治療の1対1の比較治療効果を,既存の多数のランダム化比較試験の結果を統合し,科学的にその是非・推奨の程度を明らかにしたい場合は,本書で主な解説対象としているペアワイズのシステマティックレビューおよびメタアナリシスの手法がとても適しています。本書のタイトルにもありますように,システマティックレビューが「誰でもできる」ことを目指した,わが国にこれまでありそうでなかった初心者向けガイドブックとなっておりますので,システマティックレビューに挑戦してみたことはあるが頓挫してしまった方,挑戦したかったが高い障壁を感じておられた方は,ぜひ本書を手元に置きながら,ステップを1つずつこなし,実践を試みていただければと思います。
書籍の刊行は主執筆者1人の力ですべてを行うことは難しいことも多いため,今回も前書に引き続き,普段から複数のプロジェクトを実施している共同研究者の方々に分担執筆にご協力いただきました。また髙橋祐太朗氏を初めとするメジカルビュー社編集部のスタッフの方々には,私の細かなミスに機敏かつ丁寧に辛抱強くご対応いただきました。監修の片岡裕貴先生には,前回以上に丁寧にご助言をいただき,本当に多くの項目の原稿改善においてご尽力賜りました。またこうして日々健康な状態で執筆ができるのも,影で支えてくれている妻や子ども達のおかげであると思っております。関係者の皆様に,この場を借りて厚く感謝申し上げます。
2025年6月
北川 孝
目次
1章 システマティックレビューとは何か 北川 孝,林 昌輝
1 システマティックレビューの概要
システマティックレビューの歴史
システマティックレビュー概論
スコーピングレビューとシステマティックレビューの違い
システマティックレビューとメタアナリシスの違い
近年のシステマティックレビューの発展
コラム システマティックレビュー研究の派生型
2章 システマティックレビュー・メタアナリシス論文の読み方
1 基本的なメタアナリシス論文の図表などの読み解き方
PRISMAフロー図の確認 那須崇史,佐々木大輔
エビデンスの確実性の評価の結果の確認 奥山 航
バイアスリスクの図表の読み方 伊佐次優一,北川 孝
フォレストプロット図の読み方 北川 孝,奥山 航
ファンネルプロット図の読み方 倉澤康之
検索ストラテジーの確認 伊佐次優一,北川 孝
2 持ち時間別・システマティックレビュー論文の読み方のメソッド
15分で読み解く必要がある場合 小野田祐紀,北川 孝
30分で読み解く場合 奥山 航,北川 孝
3 ネットワークメタアナリシス論文の読み方
メタアナリシスとネットワークメタアナリシスの違い 鈴木皓大,北川 孝
transitivity(推移性) 倉澤康之,北川 孝
consistency(一貫性) 倉澤康之,北川 孝
ネットワークプロット図の見かたと解釈方法 金子隆生
リーグテーブルの見かたと解釈方法 浦 慎太朗
コラム PRISMA-NMA 伊佐次優一
治療ランキングの見かたと解釈方法 奥山 航
SUCRA 図の見かたと解釈方法 倉澤康之
ネットワークメタアナリシスにおけるエビデンスの確実性の評価 奥山 航
実際のネットワークメタアナリシス論文の読み解き例 佐々木大輔
コラム コンポーネントネットワークメタアナリシス 北川 孝
3章 システマティックレビュー実践のためのステップ各論
1 システマティックレビュー作成の全体像 北川 孝
システマティッレビュー実践のための13のステップ
コラム システマティックレビューの出版数のトレンド
2 システマティックレビュー前半の作業のポイントとAIを活用した作業の効率化
システマティックレビューにおけるレビューテーマ/レビュークエスチョンを決める際のポイント 北川 孝
予備検索の具体的な方法 前田大忠,北川 孝
生成AIを活用した予備検索のメソッド 伊佐次優一,奥山紘平
テーマ選定における生成AIの活用 槶原勇人
コラム ラピッドレビュー 奥山紘平,伊佐次優一
一歩踏み込んだ適格基準の設定 林 昌輝,北川 孝
検索式作成のポイント 佐々木大輔,倉澤康之
コラム システマティックレビューの方法論の厳格さのチェック-AMSTAR- 林 昌輝,奥山 航
灰色文献・レジストリ情報への対応 鈴木皓大
プロトコルの作成と登録 金子隆生
スクリーニングの実践におけるAIツールの活用 伊佐次優一,古賀秀作
解析を踏まえたデータ抽出における注意点 倉澤康之,北川 孝
データ抽出におけるAIツールの活用 槶原勇人,田中克宜
コラム システマティックレビューの自動化を支えるAIツールの精度 奥山紘平
3 バイアスリスクの評価
バイアスリスク評価のさまざまなツール 林 昌輝,鈴木皓大,北川 孝
RoB2 tool 鈴木皓大,林 昌輝,北川 孝
Risk Of Bias In Non-randomized Studies-of Interventions(ROBINS-I) 池田朋大,鈴木皓大
The Newcastle-Ottawa Scale(NOS) 湯田智久,林 昌輝
Physiotherapy Evidence Database(PEDro) scale 小野田祐紀,北川 孝
コラム システマティックレビューのバイアスリスクの評価-ROBIS- 奥山紘平
4 メタアナリシス
共通効果モデルとランダム効果モデル 倉澤康之
2値変数のデータの統合 倉澤康之
連続変数のデータの統合 倉澤康之
EZR(Easy R)を用いたメタアナリシスの実際 佐々木大輔
RStudioを用いたメタアナリシスの実際 倉澤康之,北川 孝
感度分析 北川 孝
サブグループ解析 鈴木皓大
コラム 前向きメタアナリシス 北川 孝
5 エビデンスの確実性の評価
エビデンスの確実性とは何か 北川 孝
バイアスリスク林 昌輝,倉澤康之,北川 孝
非一貫性 池田朋大,佐々木康貴,北川 孝
非直接性 槶原勇人,北川 孝
不精確さ(imprecision) 倉澤康之,北川 孝
コラム trial sequential analysis(TSA) 北川 孝
出版バイアス 倉澤康之,奥山 航,北川 孝
GRADEproの使い方 浦 慎太朗
コラム GRADE 評価のオンライントレーニング 浦 慎太朗
6 図表作成のコツ
PRISMAフロー図の作成のコツ 那須崇史,佐々木大輔
バイアスリスク評価の結果の図表作成のコツ 金子隆生
フォレストプロット図作成のコツ 倉澤康之
ファンネルプロット図作成のコツ 倉澤康之
コラム 投稿先の選び方 伊佐次優一
コラム citation manager(文献管理ソフト) 槶原勇人
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書籍情報
- ISBN:9784758322928
- ページ数:280頁
- 書籍発行日:2025年6月
- 電子版発売日:2025年7月5日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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