2・3級合格をつかむ心電図問題集160＆とことん解説

序

心電図検定は医療従事者としての基礎知識を証明する重要な資格として広く認知され，多くの方が受験し，合格をめざしています．しかし，心電図の学習は専門用語や波形の解釈といった難解な要素が多く，初学者にとっては高いハードルとなりがちです．

本書は，数多くの問題と視覚的にわかりやすい，図解した解説を加えて構成しました．それぞれの波形のポイントを簡潔かつ明確に整理することで，初学者にも理解しやすい内容としています．本書の執筆にあたり，心電図マイスターを取得しており，心電図に関する書籍をすでに3 冊出版されている医師である藤澤先生のご指導を賜りました．藤澤先生は，心電図の学問的理解と臨床応用の架け橋となる知識の普及に情熱を注がれており，その卓越した専門性とわかりやすい指導には，多くの医療従事者が助けられているかと思います．

本書は藤澤先生のマイスターならではの豊富な経験と知見を，そして1，2，3，4 級を取得した私の知識，分かりやすく伝えるデザイン力を相乗させつくり上げた書籍となっています．心電図の学習は一朝一夕に身につくものではありませんが，本書を活用して効率的に理解を深めていただければ幸いです．そして，本書が心電図への苦手意識を克服し，自信をもって患者対応ができる医療従事者の一助となることを願っています．

最後に，本書の出版にあたり多大なご協力をいただいた藤澤先生，出版社の皆様をはじめとする関係者の皆様，そして，新しい挑戦をあたたかく応援してくださった，関係者の皆様に深く感謝申し上げます．それでは，心電図の世界への第一歩をともに踏み出しましょう．

2025年6月

一般財団法人 脳神経疾患研究所附属総合南東北病院
循環器/ 心臓血管外科病棟
髙嶋俊介

本書の最大の特徴は，豊富な問題数と，医師と看護師による心電図問題集である点です．多くの問題を解き，濃厚な解説をくり返し読むことで，インプットとアウトプットを同時に行える，まさに最強の学習方法を提供します．問題集で重要なのは，解説の質です．極端な話，臨床や試験本番で間違えなければ問題集での間違いはむしろ学びのチャンスです．大切なのは，解説を通じて「どこが間違いだったのか」「何を読みとるべきだったのか」を理解すること．それによって得た知識は確実に次につながります．

一方で，問題に正解したからといって解説を読み飛ばしてしまうこと，誰しも経験があるのではないでしょうか．それは非常にもったいないことです．本書では，問題と解説をじっくり読むだけでも膨大な学びを得られる構成となっています．

共著者である髙嶋先生は，心電図検定のバッジを集めるほど心電図に造詣が深い看護師です．ここまで心電図に熱意を注ぐ看護師は非常に珍しい存在といえるでしょう．また，看護師が作成した心電図問題集というのも，世の中ではあまり見かけません．本書では，看護師としての視点と心電図の専門家としての視点を併せもつ髙嶋先生が，発信活動を通じて培った解説力とデザイン力を存分に発揮しています．その結果，従来の心電図書籍にありがちな白黒で味気ないイメージを払拭し，比較的読みやすく，理解しやすい構成に仕上がりました．

私自身にとっても，共著という形での執筆ははじめての経験でした．議論を重ねながら仕上げた原稿には，これまでの著作にはない新たな魅力があると自負しております．特に，本書は心電図が苦手で教科書を読むのが苦痛な方に最適です．初学者にも取り組みやすいようにハードルを低く設定し，少しずつ読み進められる工夫を凝らしました．「飽きずに楽しく学べる」本として，多くの方のお役に立てれば幸いです．

最後に，本書の作成にあたり，髙嶋先生をはじめ，編集を担当してくださった羊土社の皆様に，この場を借りて深く御礼申し上げます．

2025年6月

愛媛大学大学院医学系研究科
循環器・呼吸器・腎高血圧内科学
藤澤友輝