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- 実験医学増刊 Vol.43 No.12 がん幹細胞とは何者なのか? がんの「幹細胞性」を再定義する
商品情報
内容
治療標的とするのが困難だった「がん幹細胞」を可塑性と多様性に富む“動的な存在”と捉える最新概念から,がん幹細胞を取り巻く微小環境やエピゲノムとの関連,さらには各臓器ごとの具体的ながん幹細胞研究最前線までをご紹介.治療抵抗性の謎に迫り,がん根治をめざす新たな治療戦略へのヒントが満載の一冊.
序文
序文
「がん幹細胞」が白血病においてはじめて同定されてからすでに四半世紀が経った.当時急速に進展した幹細胞生物学の考え方が,がんという病態にも当てはまることに気づいた世界中の研究者が「がん幹細胞説」を提唱し,こぞってこの領域の研究を進めた.それまでは長い間,「がん」は遺伝子の病気であり,ゲノムに傷がついたため増殖を止められなくなったがん細胞が,ブレーキが効かなくなった車のように暴走してモノクローナルに増える病気であると信じられており,その前提のもと研究が行われてきた.従来型の抗がん剤や放射線治療も,暴走するがん細胞の増殖を止めることを目的として,開発されてきた.
このような背景があるので,当時がん研究者のなかには,がん幹細胞説を違和感のあるコンセプトとして捉える方も多かった.一方で,がん幹細胞説を提唱する研究者は,幹細胞研究などの背景をもち,がん研究の経験が比較的新しい研究者も多かった.「がん幹細胞説」を仮説として,幹細胞研究で一般的に使われるスフェロイド培養などを用いて研究を進めると,実験が見事にうまくいく.やはり仮説は正しい.そのことに世界中の研究者が気づいた.これまでの「がん」という病態の概念を根本から揺るがすものであった.
正常組織幹細胞が組織を構成する細胞のヒエラルキーのトップにあるのと同様に,がん幹細胞こそががん組織を構成するがん細胞のヒエラルキーのトップにあって,がん幹細胞を標的とすればがんが治るのではないかと考えられるようになり,がん幹細胞研究から創薬へ,と世界中で研究が進められた.しかしその後,がん幹細胞を退治しても,また別なところからがん幹細胞が現れる,といった謎の現象が次々と報告され,がん組織は正常組織とは全く異なり,七変化する(可塑性をもつ)がん幹細胞やがん細胞からなることもわかってきた.このときの期待と落胆があまりにも大きいため,創薬業界では,がん幹細胞という言葉を注意深く使う必要があるとも聞く.
現在では,がん幹細胞集団自体も不均一な細胞集団であること,微小環境の影響も受けて抗がん剤や放射線療法,さらには免疫チェックポイント阻害剤にも抵抗性を示すこと,転移や再発にも直接かかわることなどさまざまなことが明らかになっている.つまりがん幹細胞はがんの病態すべてに関与する「幹細胞性」というがんの重要な特性の一つとして考えられるようになってきている.
実験医学増刊号では,10年前に「がん幹細胞」の特集を行っている.その後10年の研究の進展により,当初とは異なる,再定義された現代のがん幹細胞について,本分野の第一線の研究者の方々に執筆をお願いしたところ,熱意のある総説をたくさんいただくことができた.まだまだわからないことが多い本分野の基礎研究と,創薬標的,実臨床に至るまでの道のりについてエキサイティングな話題が満載の増刊となった.学生の方々,基礎研究,創薬研究,バイオマーカーや機器開発,臨床に携わる方々をはじめ,多くの分野の方々に手に取っていただき,皆様の今後の発展に役立てていただければ幸いである.お忙しいなか執筆いただいた先生方,誠にありがとうございました.この場を借りてお礼申し上げます.
2025年6月
金沢大学がん進展制御研究所
後藤典子
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目次
第1章 がん幹細胞の多様性,可塑性アップデートと標的治療
1.がん幹細胞とCD44:フェロトーシスを標的とした新たな治療戦略【安藤泰樹,佐谷秀行,永野 修】
2.白血病幹細胞の特性と根絶治療法の開発【菊繁吉謙,赤司浩一】
3.静止がん幹細胞の機能解明とその根絶に向けての課題:造血腫瘍と腸管腫瘍の比較から【比嘉綱己,中山敬一】
4.がんの起源と進化から再考するがん幹細胞【西村友美,小川誠司】
5.オルガノイド研究から明らかになるがん幹細胞とその制御機構【太田悠木,藤井正幸,佐藤俊朗】
6.進化するがん幹細胞理論【コッポ ロベルト,井上正宏】
第2章 微小環境によるがん幹細胞の制御
1.腫瘍免疫微小環境により制御されるがん幹細胞【廣橋良彦,鳥越俊彦】
2.シングルセル空間解析から紐解くがん組織多様性とその制御機構【神田裕介,森 裕太郎,岡本康司】
3.乳がんにおけるがん関連線維芽細胞の役割の解明【竹内康人,後藤典子】
4.がん幹細胞の制御における血管周囲ニッチの役割【渡部徹郎】
5.HARP現象が解き明かすがん幹細胞の創出機序とがん幹細胞ニッシェ【津田真寿美,田中伸哉】
6.混合オルガノイドを用いたがん微小環境の再現とがん幹細胞制御【関根圭輔】
第3章 エピゲノム,RNAによるがん幹細胞の制御
1.エピゲノム制御因子を標的としたがん治療【西村建徳,新城恵子,鈴木美穂,近藤 豊】
2.がん幹細胞性・難治性を担うlncRNAとRNA結合タンパク質【堀江公仁子,井上 聡】
3.m6A修飾RNA制御機構とがん幹細胞【原 知明,孟 思昆,石井秀始】
4.テロメラーゼ逆転写酵素の新たな機能とがん【町谷充洋,増富健吉】
第4章 臓器別のがん幹細胞アップデート
1.脳腫瘍根治へ向けたがん生態系の理解【椨 康一】
2.消化器がんにおける“がん幹細胞性”と治療戦略【中西祐貴,後藤規弘,丸野貴久,妹尾 浩】
3.消化器がん:大腸がんとがん幹細胞【青木正博,藤下晃章】
4.炎症がん微小環境は幹細胞様化を誘導し大腸がん悪性化を促進する【武田はるな】
5.組織幹細胞からたどる肺がん多様性の分子理解【浜本純子,安田浩之】
6.乳がん:転移における乳がん幹細胞性の制御と血管性ニッチ【本宮綱記,後藤典子】
7.乳がん:脂肪細胞によるがん幹細胞性促進機構【下野洋平】
8.急性骨髄性白血病幹細胞を標的とした新規治療薬の開発と応用【山形和恒,黒木瑤子,北林一生】
9.白血病幹細胞の細胞周期制御【鷹尾珠美子,平尾 敦】
第5章 がん幹細胞標的治療の開発
1.薬剤耐性に寄与するがん幹細胞性を標的とした新規薬物療法の構築【馬島哲夫,清宮啓之】
2.がん幹細胞を根絶するウイルス療法の開発【岩井美和子,藤堂具紀】
3.CAR-T細胞療法によるがん幹細胞排除の可能性【保仙直毅】
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書籍情報
- ISBN:9784758104289
- ページ数:214頁
- 書籍発行日:2025年7月
- 電子版発売日:2025年7月25日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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