- m3.com 電子書籍
- ERからはじまる外傷の治療戦略
商品情報
内容
重症外傷の患者がERにやってきた!今やるべきは止血?検査?目の前の患者の様子を観察しながら,リアルタイムでさまざまな情報を統合し,次の戦略をたてていく,そのために必要な考え方と知識を外傷外科のエキスパートが解説.著者が実際に経験した症例をもとにした14Caseで,実際の対応だけでなく,ケースバイケースで対応していくための土台となる基本の考え方の両方が学べます.14のCaseパートで出てくる単語のうち,押さえておきたい77単語は,後半の用語解説パートで補足解説しているので,これから外傷を診ていく人にも安心.
序文
はじめに
外傷診療と聞いて,どのようなイメージをもたれるでしょうか.
「正直,あまり診たくないですね」「ショック状態の患者さんを前にすると,何からはじめればいいのかパニックになります」と話す救急医,研修医の先生や,「予定手術で忙しいのに,外傷手術なんて無理だよ」と感じる外科医の先生も少なくありません.
外傷が悪性腫瘍など他の内因性疾患と大きく異なる点はいくつかありますが,特に医療者が困惑しやすいのは,同じ臓器損傷でも,患者の背景や合併損傷の有無,病院のリソースやシステムによって,適切な治療方針が大きく変わってくるという点ではないでしょうか.例えば,大腸がんStage Ⅱの患者さんに対する術式や化学療法は,標準治療としてほぼ統一された指針があります.しかし,外傷による出血性ショックに対する止血治療は,必ずしもそうではありません.CT画像がない状況で,手術やTAE(動脈塞栓術)などの選択肢を,救急外来で迅速かつ的確に判断し,連続的に実行していく必要があります.
この治療選択を誤ると,どれだけ優れた外科手技をもつ外科医がいたとしても,止血が遅れることで「Preventable Trauma Death(防ぎ得た外傷死)」につながってしまう可能性があります.つまり,腫瘍外科手術においては「手術自体が目的」であるのに対し,外傷手術では「手術は止血のための手段」にすぎず,その手段を“いつ・どのように”使うかがきわめて重要となるのです.
これまで,外傷手術の手技を解説した教科書は数多く出版されてきましたが,情報が限られた状況下で,どのように自信と根拠をもって止血手段を選択すべきか,その考え方を解説したものは,ほとんどありませんでした.
本書では,当院に実際に搬送された14の症例をもとに,救急隊の入電から止血完了までの一連の流れを,医療者間の会話や外傷外科医の思考過程とともに時系列で記載しました.そのなかで,手術を含む止血ツールの使い方と,その根拠について具体的に解説しています.各シナリオには複数の「治療選択の分岐」を設けており,読者の皆さんにも一度立ち止まって,「もし,自分が当直中にこの患者が搬送されてきたら,どの治療を選ぶか?」と考えていただける構成としています.そうした臨場感をもって読み進めていただければ,より深い理解と実践的な知識につながることと思います.
最後に,本書の出版にあたり,私の診療を受け入れてくださった患者の皆様,私の判断を客観的に評価・指導してくださった病院スタッフ,一日本人を家族のように迎え入れてくれた,海外研修先のコーンケン公立病院外傷センターのスタッフ,そして日々の健康を気遣い支えてくれている家族に,心より感謝申し上げます.
2025年6月
執筆者を代表して
田村 暢一朗
目次
Caseパート
1 CT で止血できますか?:e FAST陽性ショック 〜見える化より,生きる化
【難易度】★☆☆☆☆
【ディスカッションの深さ】★☆☆☆☆
【キーワード】小腸間膜損傷
2 CTの情報を適切な止血につなげるためには? 〜CTで得られること,CT で失うこと
【難易度】★★☆☆☆
【ディスカッションの深さ】★★☆☆☆
【キーワード】脾損傷
3 小さな血腫のその奥には?:シートベルト損傷 〜大胆と繊細を使い分ける
【難易度】★★☆☆☆
【ディスカッションの深さ】★★★★☆
【キーワード】上行結腸間膜損傷/上行結腸全層損傷
4 This is trauma surgery ! 情報のない世界で一歩踏み出すために必要なこと 〜内因? 外因? 不明な状況から開胸に至るプロセス
【難易度】★★☆☆☆
【ディスカッションの深さ】★★★★★
【キーワード】胸椎骨折/胸腔内穿破
5 日本では少ない鋭的損傷への対応に必要な知識 〜刺傷をみたときの5 つのポイント~ ①刺入~刺出孔,②後腹膜血腫取り扱いの違い,③手術適応,④ CT の臨床的意味の違い,⑤ proximal control
【難易度】★★★☆☆
【ディスカッションの深さ】★★★☆☆
【キーワード】腎損傷
6 牛に背中を突かれ,胸腔内・腹腔内ともにeFAST 陽性 〜「もー,困った」:開胸or 開腹?
【難易度】★★★☆☆
【ディスカッションの深さ】★★★☆☆
【キーワード】脾損傷/腎損傷/膵尾部損傷/横隔膜損傷
7 患者の背景によって止血方法を変えるべきか? 〜外傷は患者を選ばない,医師は患者を選べない
【難易度】★★★☆☆
【ディスカッションの深さ】★★★★☆
【キーワード】脾損傷/腎損傷
8 Time is money! 損傷臓器すべてのトータルリスクを下げるために 〜頭部外傷に対する手術or 脾損傷:Which is first ?
【難易度】★★★☆☆
【ディスカッションの深さ】★★★★★
【キーワード】重症頭部外傷/脾損傷
9 鈍的肺挫傷・肺気瘤で手術が必要となる稀な症例を見逃さない 〜Looking for Zebra?
【難易度】★★★★☆
【ディスカッションの深さ】★★★★☆
【キーワード】骨盤骨折/肺気瘤・肺挫傷
10 鋭的胸部外傷:いつ開ける? どう開ける? 肺門部クランプという魔法の杖 〜胸腔ドレナージ→開胸へ至るプロセス
【難易度】★★★☆☆
【ディスカッションの深さ】★★★★☆
【キーワード】肺裂創/肺動脈損傷
11 止血超難関損傷:開放性骨盤骨折 〜開いてしまったパンドラの箱
【難易度】★★★★☆
【ディスカッションの深さ】★★★★★
【キーワード】骨盤骨折/尿道損傷/直腸損傷
12 経皮的大動脈内バルーン遮断(REBOA)は決定的止血ではない 〜見た目の血圧上昇と止血,どちらが大事ですか?
【難易度】★★★★☆
【ディスカッションの深さ】★★★★★
【キーワード】肝損傷/下大静脈損傷/右腎損傷/右多発肋骨骨折/右大腿骨骨折
13 重症肝損傷を目の前にして,Pringle法でコントロールできる出血とできない出血を冷静に見極められるか? 〜肝パッキングで終わってOK?
【難易度】★★★☆☆
【ディスカッションの深さ】★★★★☆
【キーワード】肝損傷/左肝静脈損傷/横行結腸間膜損傷
14 鋭的頸部損傷(penetrating neck injury)で特に注意すべきこと:まず気道確保! からスタート 〜患者と家族に「クビ」と言われないように
【難易度】★★★☆☆
【ディスカッションの深さ】★★★☆☆
【キーワード】内頸静脈
用語解説パート
5点腹腔内パッキング / AAST Grade / Cattell-Braasch法 / Clamshell開胸 / crash laparotomy / Duplex法 / eFAST / GCS / hybrid ER / local wound exploration / lung sliding / Mattox法 / 修正Mattox法 / midline shift / MIST / occult pneumothorax /open book typeの骨盤骨折 / PPP /Pringle法 / Rb直腸 / アブセラ / アルゴンビーム(アルゴンビームコアギュレーター) / 遺残血胸 / 一時閉腹(TAC) / 牛による動物外傷 / 開胸心臓マッサージ / 外傷性窒息 / 外傷チーム呼び出し(Trauma code, Trauma team activation) / 下肺靱帯切離 / 肝臓パッキング / 気管支ブロッカー / 気管切開術 / 胸腔ドレナージ / 胸骨正中切開 / 胸部下行大動脈遮断 / 緊急手術に対応できる重症初療室 / 緊張性気胸 / 計画的再手術(planned reoperation) / 経動脈的血管塞栓術(TAE) / 経皮的大動脈内バルーン遮断(REBOA) / 血栓溶解療法 / 後腹膜の3つのZone / 骨髄輸液路 / 骨盤創外固定 / サムスリング(pelvic binder) / 死の三徴 / 自動縫合器 / シースイントロデューサー / シートベルト痕 / 滲出性出血(oozing bleeding) / 迅速導入気管挿管(RSI) / 心タンポナーデ / 心嚢開窓 / セルセーバー® / セレスキュー®(ゼラチンスポンジ) / 造影剤漏出像(extravasation) / タコシール®(absorbable fibrin sealant patch) / ダッシュボード損傷 / ダメージコントロール手術 / 炭酸水素ナトリウム(メイロン®) / 胆汁腫(biloma) / 超緊急輸血 / デグロービング損傷 / ドクターヘリ / 乳酸アシドーシス(代謝性アシドーシス) / 尿道造影 / 尿道損傷 / 肺気瘤 / 肺門部遮断 / 脾摘出後重症感染症(OPSI) / フィブリン / 腹部コンパートメント症候群 / 腹部大動脈遮断 / ブリーフィング(ブリーフィングシート) / フレイルチェスト / 分離肺換気 / 膀胱瘻(造設術) / メラサキューム
索引
監修者・著者プロフィール
便利機能
- 対応
- 一部対応
- 未対応
- 全文・
串刺検索 - 目次・
索引リンク - PCブラウザ閲覧
- メモ・付箋
- PubMed
リンク - 動画再生
- 音声再生
- 今日の治療薬リンク
- イヤーノートリンク
- 南山堂医学
大辞典
リンク
- 対応
- 一部対応
- 未対応
対応機種
iOS 最新バージョンのOSをご利用ください
外部メモリ:18.8MB以上(インストール時:43.7MB以上)
ダウンロード時に必要なメモリ:75.1MB以上
AndroidOS 最新バージョンのOSをご利用ください
外部メモリ:18.8MB以上(インストール時:43.7MB以上)
ダウンロード時に必要なメモリ:75.1MB以上
- コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
- コンテンツの使用にあたり、m3.com電子書籍アプリが必要です。 導入方法の詳細はこちら
- Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
- Androidロゴは Google LLC の商標です。
書籍情報
- ISBN:9784758124416
- ページ数:288頁
- 書籍発行日:2025年7月
- 電子版発売日:2025年7月25日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
お客様の声
まだ投稿されていません
特記事項
※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。
※コンテンツの使用にあたり、m3.com 電子書籍アプリが必要です。
※eBook版は、書籍の体裁そのままで表示しますので、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。


