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- 暴走する細胞たち がんの神話と謎
商品情報
内容
本書は、「がん患者とその家族、医師、学生に、がんに関する正しい知識と情報を提供することで、がんに対する恐怖心をなくすこと」を目指した書籍です。本書の最大の特徴は、がんに関する情報についてきわめて公平に書かれています。昨今、がんについての本やネットの情報には、「必ず治る」、「奇跡の治療法」、「これは危ない」といった人々を煽るセンセーショナルな言葉が並んでいます。しかし、このような言葉を使う治療法や食事療法、がんにつながるという化学物質のほとんどには、科学的な根拠がありません。本書はまったく違う視点で書かれており、このような「がんの神話を否定する」内容となっています。がんにまつわる事柄について、正しいか正しくないかを、科学的根拠に基づいて論理的に説明するだけでなく、論争になっているがん検診の問題点や、化学療法の効果、治療成績の解釈については、数学(おもに確率統計)を使って説明しています。分子標的治療や免疫療法を含めた最新のがん治療法についても、効果が証明されているものに関して、その生物学的な原理から正しく解説しています。
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序文
序文
なぜ私たち二人が、新たにがんの本を書くのか?
私たちはいくつかの理由からこの本を一緒に書くことになりました。少年時代から60年来の友人であるリチャード・ジョーンズ博士(本書では通称のリックでよぶことにします)は、がんについて大切なことを多くの人に伝えたがっていました。私はがんという病気をもっと知りたいと思っていましたし、最近退職したので本書の執筆に協力できると考えたのです。
私たちの長い交友関係のなかで、家族や友人の多くが、がんにかかってきました。私たちの両親は全員、がんで亡くなったのです。父は胆管がんと診断され、1カ月後に世を去りました。母の場合は、転倒して腰を骨折したときに、思いもよらずレントゲンで肺がんが見つかりました。私たちの愛とサポートのもと、母は2度の放射線治療を乗り越え、さらに5年間、健康で幸せに暮らすことができました。リックの父は、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia, CML)で亡くなりました。彼が診断された1970年代には、CMLは例外なく致命的でした(過去25年間で、CMLはまさにがんのサクセスストーリーとなり、いまでは死ぬことはめったにありません)。リックの母親は膵臓がんで亡くなりましたが、私の母のがんと同じく喫煙が関係していたに違いないでしょう。
若い頃、リックと私はペンシルベニア州ハリスバーグ近郊の通りに住んでいました。私たちは同じ野球チームでプレーし、友人のスティーブ、ボブ、ランディと夏のほとんどを一緒に過ごしたのです。地元の市民プールに遊びに行き、ピックアップスポーツ*(バレーボール、ウィッフルボール**、フットボール)をプレーし、三つのPがつく遊び(ping pong[卓球]、pool[ビリヤード]、pinochle***[ピノクル])で延々と競いあいました。一緒に音楽(ビートルズ、サイモン&ガーファンクル、モータウン、たまにクラシック)も聴いたし、トラブルに巻き込まれたことも。計画したわけではありませんが、私たちは同じバックネル大学に通うことになったのです。リックはジョーンズ家の伝統(彼の父、兄弟、そして後に息子も皆通った)から、私はペンシルベニア州中部で最高の小規模リベラルアーツ・カレッジに興味があったからです。
がんに対処するために、私は何度もリックに助けを求めました。私の妻はリンパ腫と診断され、腹部の手術を勧められたのです。リックのおかげで、幸いにして妻はリンパ腫ではなく、手術の必要もないことがわかったのでした。ほかにも数え切れないほど多くの場面で、リックは私の家族や友人を助けてくれました。彼は、私たちが、がんの診断や治療にまつわる、混乱するほど膨大な情報を理解して、適切な質問をし、正しい判断ができるようにしてくれたのです。こうした相談のなかで、彼はジョンズ・ホプキンス大学医学部の腫瘍内科の教授として、また血液悪性腫瘍・骨髄移植プログラムのディレクターとして35年以上にわたって培った知識と見解を惜しみなく共有してくれました。
リックはずっと(少なくとも私が彼を知る限りは)医者になりたいと思っていました。バックネル大学で4年間、生物学と化学(そしてカード遊びも)を学んだ後、フィラデルフィアにあるテンプル大学の医学部に進みました。内科の研修を終えると、ペンシルベニア州中部にある家庭医療の診療所で医師として最初の仕事を得たのです。この仕事は、彼が医学部入学のさいに受けた公衆衛生局の奨学金の条件でした。ボルチモアのジョンズ・ホプキンス大学医学部で腫瘍学(がん)のフェローシップを選択したのは、彼の父親ががんで亡くなった後であり、それが原因だったのでしょう。1987年に腫瘍学のフェローシップを終えると、リックはホプキンスにとどまることを決断し、教育、研究、患者ケアを合わせた役割を楽しんできたのです。
何年もの間、私はリックがその分野でとても尊敬される存在になってきたと感じていました。医学会議やシンポジウムで講演するために、リックは年に何度も世界中を飛び回っていたのです。本書を通して、リックと彼のチームががん研究に貢献してきたことを、あなたは学ぶでしょう。がんを発生させる細胞(がん幹細胞)に関する先駆的な研究と、﹁完全に﹂適合した骨髄(幹細胞ともよばれる)ドナーの必要性をなくすための進歩は、彼の二つの代表的な業績です。リックは学生たちに高い期待をもつホプキンスの優れた教師でもあります。ボブやランディにお金を奪われないようにピノクルをうまくプレイする方法や、デュプリケート・ブリッジでマス
*訳註:公園などで、集まったメンバーが即席のチームをつくって行うスポーツ。ピックアップゲームともよばれる。
**訳註:野球を原型として考案されたスポーツ。
***訳註:米国のカードゲームの一つ。
†訳註:医師が専門分野の知識や技術を深めるための高度な教育プログラム。ター・ポイントを多く獲得する方法など、彼の厳しくも知識豊富なアドバイスが証明しているのです。リックはベッドサイド・マナーがよく、多くの共感をもって患者を助けると彼の同僚から聞きました。彼が助けた家族や友人から深く感謝されるのを私もみてきましたので、それが本当だとわかっています。
ですから、リックがこの本を書く資格があるのは明らかです。では、私はどうでしょう? リックが医学のキャリアに対してレーザーのように焦点を絞っていたというならば、私のキャリアの焦点はよくてもぼんやりしたものでした。音楽学校を受験した後、私は数学を専攻し始めたのですが、数学があまりに抽象的になったため、すぐにリベラルアーツに転向しました。おかげで、おもに人文科学系の科目を幅広く履修することができたので、私は宗教と哲学を専攻しました。宗教を専攻して何をしたか? というと、陸軍に徴兵され、中距離弾道ミサイル担当の兵士としてドイツで2年間勤務し、児童サービスのケースワーカーとして低所得家庭を支援し、教育研究と学校心理学の修士号を取得し、郡の福祉サービス・プランナーとして2年間働き、最終的に新興のコンピューターとソフトウェアの分野で自分の適性を見つけたのです。
以上のすべてを踏まえ、私は次のような心持ちで、一般の読者に向けたがんに関する本書を執筆します。(1) そもそも私はがんについてほとんど知らなかったので、私ががんを正確に文章化するほど理解できれば、ほかの人たちも同じように理解できる可能性が高い。(2) 私はがんがもたらす精神的・肉体的な犠牲を目の当たりにした。(3) 私は物事の仕組みを知るのが好きで、あの木の重さはどれくらいだと思う? といった突き詰めた質問をする。
研究者であり教師でもあるリックは、一番重要な仕事は学生や患者にがんの科学について教育することだとよく話してくれました。リックの願いは、患者が基本的ながんの生物学を理解することで、がんと診断された恐怖に縛られずに、自身の病気を管理するよいパートナーになることです。リックが学生や患者を教育するさいには、専門家でなくてもがんの生物学がわかるような物語や逸話を使っています。
この本について話し合いを始めたとき、私たちの第一の目標は、がんをできるだけわかりやすくすることでした。リックの科学的な背景、経験、エピソード(タンポポとその根、ハエ、稲妻、シンガポールについて多くを学ぶでしょう)と、比較的このトピックにうとい私の組合せがうまくい
‡訳註:(前頁)カードゲームのブリッジの一種。くと考えたのです。急速に変化する医学分野の現在の知見を正確に捉えながら、幅広い読者にがんを理解してもらうことに挑みました。この本は真の共同作業の成果ですが(誰がどの曲を書いたかレノンとマッカートニーがいい争うようなことはありません)、よりわかりやすくするために、まったくの素人である私が一貫して書くことにしました。
がんの原因を解明し、新たな治療法を発見するのは難しいことです。医師や研究者たちは、何世紀にもわたりこうした疑問に答えようとしてきましたし、いまもなお続けています。がんの歴史は人類と同じくらい古く、多くのことが解明されてきましたが、まだわかっていないことも多いのです。本書では、がんを理解するための一般的な基礎を築けるよう、さまざまなトピックを詳しく取り上げます。また、具体的な内容を深く掘り下げるために役立つ参考文献も紹介しています。科学はできるだけ﹁非科学的﹂になるように本文を書きましたが、個々のトピックに関する科学や生物学についてもう少し詳しく知りたい方のために、﹁サイエンスコーナー﹂という補足情報を設けていくつかの疑問に答えています。
本書の目的は、
・がんの生物学、予防、治療について、わかっていること、まだわかっていないことの理解を深める
・がんにまつわるいくつかの神話を否定する
・医師、家族、友人の助けを借りながら、よい質問をして、情報をもとに適切な判断ができるよ
・そしてもっとも重要なことは、不安や恐怖を減らし、より希望をもってがんに向き合うことである
リックと私は、一緒にこの本を書くことを楽しみました。あなたも同じように本書を楽しんで、何かを学んでほしいと思います。私は多くのことを学ぶことができたのですから。
目次
第1章 がんの神話と謎
第2章 がんの生物学 細胞が暴走する
第3章 がん幹細胞 タンポポ現象
第4章 転移 動く標的
第5章 臨床の基礎 研究から臨床へ、そして再び研究へ
第6章 治療対治癒 ハエ、ハエたたき、タンポポ、芝刈り機の話
第7章 がんの診断 知らない悪魔より、知っている悪魔のほうがまし
第8章 がん治療 戦争に負けることなく戦いに勝つ
第9章 がん予防Ⅰ 始まる前にやめる
第10章 がん予防Ⅱ 何事もほどほどに(ほどほどにもほどほどに)
第11章 私はいかにして心配するのをやめて、がんを恐れないようになったか
あとがき
謝 辞
訳者あとがき
日本の正しいがんの情報が得られるサイト
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参考文献
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書籍情報
- ISBN:9784621311660
- ページ数:256頁
- 書籍発行日:2025年8月
- 電子版発売日:2025年8月13日
- 判:指定なし
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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