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- 麻酔 2025年9月号 【特集】周術期のアレルギーに関する諸問題
商品情報
内容
序文
巻頭言
現代の医療は標準化された治療から,患者一人一人に合わせた個別化医療へと大きく舵を切ろうとしています。周術期医療においては,複雑な患者背景や高度化した術式からリスクを評価し,それぞれに適切な対応をとることで最良の結果を得る管理が必要であり,従来の一律な管理では限界があります。こうした中で注目されるのが,周術期管理の最適化と予測医療の導入です。
個別化医療とは,遺伝情報,生活習慣,基礎疾患など,個人の特徴に応じて最適な治療を提供する医療を指します。がん治療における分子標的治療薬はその代表例で,腫瘍の遺伝子発現パターンに基づき,薬剤を選択することで高い治療効果と副作用の軽減が図られています。このアプローチはがんに限らず,心血管疾患や糖尿病などの慢性疾患領域にも広がっています。一方で,周術期医療においては個別化医療の実施は困難な状況です。しかし,麻酔科医は術前の評価から術中管理・術後回復まで一貫して関わることで,手術リスクを最小限に抑え,患者の早期回復を支援しています。プレハビリテーションや術前栄養管理といった介入は,患者の体力・栄養状態を術前から整え,周術期の合併症リスクを下げるうえで有効であることが明らかとなっています。また,術後疼痛管理チームによる個別の鎮痛戦略も,回復促進とQOL の向上に寄与しています。さらに,疾患に合わせた麻酔薬の選択に関する知見も,個別化医療の視点から再評価されています。例えば,プロポフォールは多くのがん種において抑制的に作用することが報告されていますが,吸入麻酔薬は腫瘍の種類により促進的にも抑制的にも働くことが示されています。神経膠腫では,セボフルランがmiR‒210/HIF‒1αを介して,デスフルランがmiR‒138/HIF‒1αおよびmiR‒335/MMP9 を介して細胞活性を抑制する一方で,卵巣がん細胞においては,同じ麻酔薬が逆に細胞の遊走や増殖を促進するといった報告もあります。このように,がん種と麻酔薬との相互作用は多様であり,がん種に合わせた麻酔薬の選択や周術期管理の最適化は今後の重要な研究課題です。
さらに近年では,バイタルサインの経時的変化に着目した動的予測モデルの活用が注目されています。心拍数,血圧,呼吸数といった基本的な生体情報を機械学習により解析することで敗血症の予後予測が可能であると報告されましたが,これは術後せん妄,急性腎障害,周術期死亡といった重大な合併症の早期予測につながる可能性があります。従来は単一時点での数値で評価されていたものが,持続的な頻脈や低血圧など推移として捉えられることで合併症発症を示す重要なパターンとして可視化されるのです。こういった予測医療の実装においては,AI によるビッグデータ解析といった先端技術の発展が鍵を握っています。
患者それぞれのリスクプロファイルに応じた介入をすることで,治療の精度と安全性は大きく向上すると思われます。その中で,麻酔科医が果たす役割はますます重要になります。基礎研究と臨床研究を通じてエビデンスを蓄積し,個別のリスクに応じた薬剤選択や管理戦略を構築していくことがわれわれには求められています。すべての医療を個別化することは,倫理的・経済的な課題も含め,現時点では困難です。しかし,最適化された周術期管理は実現可能であり,それが予測医療と融合することによって,より高いレベルでの安全性と治療効果を生み出すことが期待されます。これからの医療は,画一的な治療から,より精緻で動的な管理へと移行していくでしょう。麻酔科医として周術期医療の最前線に立って,この変革を牽引し,患者の生命とQOL を守る要でありたいと思います。
(日本医科大学教授 石川真士)
目次
巻頭言
周術期管理の最適化と予測医療 石川 真士
特 集
周術期のアレルギーに
関する諸問題
緒言とまとめ 岡本 浩嗣
周術期のアレルギーとアナフィラキシー 高澤 知規 554 周術期アナフィラキシーの診断と治療 堀内 辰男 562 静脈麻酔薬,吸入麻酔薬,筋弛緩薬と
アレルギー 高木 俊一
消毒薬,ヨード,ラテックス,金属,食べ物のアレルギー 﨑村正太郎ほか
局所麻酔薬,抗菌薬とアレルギーの総説 尾﨑 温ほか 587 輸液・血液製剤とアレルギー 谷川 義則ほか
気管支喘息とアレルギー 萩平 哲
症例報告
手術待機中に DPP-4 阻害薬関連水疱性類天疱瘡を発症し,手術施行時期の決定に苦慮した 1 症例 森本優佳子ほか
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書籍情報
- ISBN:9784014007409
- ページ数:95頁
- 書籍発行日:2025年9月
- 電子版発売日:2025年9月4日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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