脊柱管狭窄症と装具　仙腸関節・恥骨・姿勢

はじめに

本書は、からだ全体の姿勢のバランス障害や不良姿勢が、脊柱・四肢の慢性痛・障害を引き起こすことに着目した書物で、読みやすい内容になっています。手術療法や薬物治療ではなく、不良姿勢を改善させるための日常生活の工夫・考え方や、運動学と重心線の視点から観察できた疾患および簡単な装具療法に限定して解説しました。

本書は、脊柱管狭窄症（腰椎部の変形性脊椎症）の原因や病態を追求するためだけの内容ではありません。本書のタイトルを特に治療の選択が困難な「脊柱管狭窄症」としたのは、本症を代表に、あらゆる整形外科疾患は、姿勢と装具（仙腸装具）が深く関連していると考えたからです。その詳細について、本文で解説しています。

脊柱・膝関節・足部その他の疾患についても姿勢の視点から観察して、読みやすい内容になるように心がけました。解説・説明が不十分な部分もたくさんありますが、ほかの専門書も参考にしていただければ幸いです。

本書は、不良姿勢・慢性痛・神経障害などの患者さんから、直接、お話を丁寧にお聞きした内容や語り口をヒントにしたものです。病気の説明は簡素にして、著者自身が経験した疾患に限定し、稀な疾患は割愛しました。さらに、ほかの病院・クリニックの検査・画像所見などで病気と診断を受けた患者さんを主体に、姿勢のバランスの良し悪し・運動学の視点からその疾患を分析してみました。姿勢に少しでも関与する疾患や、基本的な関節・筋肉・神経と姿勢の関連性にも言及しました。

本書では、著者の経験と考え方について、以下の構成で述べています。

総論：姿勢に関する著者の概論的解説

各論：姿勢と運動学の視点から観察した四肢・体幹の疾患

少し理解しにくい部分や文脈・説明のうえで重複する内容がありますが、ご寛容いただけたら幸いです。また、医学の専門用語がたくさん記載されている項目は、難しければスルーして結構です。読者の興味ある項目から部分的に拾い読みしても結構です。ご批判をいただければ幸いです。

2025年10月

原田　孝