心エコー 2026年1月号 27巻1号 一流ソノグラファーに学ぶ基本のお作法—あなたはどこまで身についていますか？

巻頭言　基礎を固めてこその発展

すべての道において基礎を習熟することの重要性については，古今東西を問わず多くの教えとして説かれてきました．例えば，「初心忘るべからず」「枝本より大なれば必ず披く」「弓調馬服」など，枚挙に暇がありません．何事においても大きく飛躍するためには，まずは基本技術を十分に習得していることが前提条件です．心エコー技術の習得についても同じことがいえます．

臨床における心エコーの重要性に対する認識が高まるにつれ，どこの病院でも心エコー件数は増加し，それを支えるソノグラファーの需要も高まっています．それに伴い，心エコー図を学ぶ技師数も増えているのは，とても嬉しいことです．一方で，一定の経験年数がありながら，ときどき基本的な作法が十分に身についていない技師さんも散見されます．例えば，日本心エコー図学会認定専門技師試験では，二次審査まで合格するにはかなりの知識と経験が必要とされます．こうした二次審査合格者でも，実技が中心の三次審査では，心エコー断面の描出法が間違っていたり，画像のトレースが不正確であったり，基本的な患者対応の知識が不足していることなどが見受けられます．やはり，こうした心エコーの基本のお作法については，一度まとめて復習する場が必要です．一方で，最新の知識を学ぶ講演会はあっても，基本のお作法を学ぶ機会は限られているのが実情です．また，ある程度の経験を重ねてしまうと，改めて人に教えを請うのは難しいのではないでしょうか．

今回は，このような心エコーの基本的なお作法を見直していただくために，一流ソノグラファーの先生方をお招きし，改めて解説していただく特集を組みました．著者の皆様は指導者としての経験が豊富で，修練を積んだ技師でも忘れがちな点をよくご存じです．ぜひとも本書を役立てて盤石な基本のお作法を身につけていただき，大きく飛躍する足がかりにしていただくことを願っております．

大門雅夫