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- 極論で語る睡眠医学 第2版
商品情報
内容
序文
監修者・まえがき
きょく ろん【極論】
きょく ろん【極論】
(1)極端な議論.また,そのような議論をすること.極言.
(2)つきつめたところまで論ずること.
[大辞林第四版(三省堂)より]
本書『極論で語る睡眠医学第2版』は,第1版に続き,再びこの領域に大きなインパクトを与えると確信しています.
第1版は出版と同時に大きな反響を呼び,編集に携わった自分自身にとっても大きな転換点となりました.
内科診療の現場で「睡眠」をどう扱うのか
─これまでは睡眠薬処方の是非に留まっていた思考が,睡眠を「介入できるものとして」より立体的に捉え,そして診療の中で不可欠な内容と認識するようになりました.
人間は人生の半分近くを眠って過ごす存在であり,そこを軽視した医療はもはや成り立ちません.本書はまさにその現実を突きつけ,私たちに新たな地平を示してくれるものと思います.
今回の第2版では,河合先生が提唱する「24 時間医学」の視点がさらに強調されています.14章(238 頁)に展開される「24 時間医学」という概念は,睡眠を夜間だけの現象として切り離すのではなく,覚醒と睡眠を連続した一日の営みとしてとらえ,医学全般の中に位置づけようとするものです.
睡眠の生理学や生化学の基礎から臨床現場への橋渡し,そして睡眠時無呼吸の理解と管理に重点を置く構成は第1版を踏襲しつつも,最新の知見を盛り込みアップデートされています.
さらに今回,大幅に加筆されたのが「パラソムニア」(5章)「ナルコレプシー」(6章)です.こうした章を読み通すと,睡眠医学がいかに幅広く奥深い分野であるかを改めて実感させられます.
また後半部では,河合先生の提案により「境界領域で診る睡眠医学(第3 部)」「入院で診る睡眠医学(第4 部)」「社会で診る睡眠医学(第5 部)」という新しい枠組みが導入されています.これらのセクションは,単に専門的知識を紹介するにとどまらず,働き方改革や小児の健全な成長といった社会的テーマとも結びついており,睡眠医学が個人の健康だけでなく,社会の在り方全体に直結する学問であることを痛感させられる内容になっています.
現在,厚生労働省においても2008年以来の標榜科追加(睡眠障害科)が検討される動きがあり,国全体で睡眠医学への関心が高まっています.その意味でも,本書は単なる教科書の枠を超え,大げさでなく,今後の日本の睡眠医療をリードする「ゴールドスタンダード」を指南する書として位置づけられるのではないでしょうか.
通読すると,河合先生がなぜここまで睡眠医学に情熱を注いでこられたのか,その歩みを垣間見ることもできます.脳神経内科から睡眠医学へと進まれた経緯,師弟関係の中での学び,日米をまたにかけた臨床と研究の実績…,こうした河合先生の「血と肉」が行間を埋めて,本書を身近に感じさせてくれるのだと思っています.
ぜひ本書を手に取り,「24 時間医学」という扉を開けてみてください.
2025年9月吉日
監修者 香 坂 俊
著者・まえがき
今の自分はまだ怒っている
今の自分はまだ怒っている
本書の第2版改訂を提案いただいた丸善出版の編集部から連絡を受け,初版の原稿を読み返したところ,当時の自分が睡眠医学の置かれた状況に強い怒りを抱き,その怒りを原動力として書き上げていたことを,改めて鮮明に思い出しました.そして自問しました.
─「今の自分は,あの時と同じように怒っているのか?」と.
私の怒りの根源は,睡眠医学における「理想」と「現実」の大きな隔たりにあります.理想とは,全ての医学部とまでは言わずとも,大規模な医学部には「睡眠医学講座」が設けられ,毎年,定期的に睡眠専門医が輩出される状況です.私が身を置く米国でも,睡眠医学は独立した講座としてはまだ存在せず,既存の科の一部門にとどまっています.それでもフェローシップ制度が整っているため,毎年一定数の専門医が養成されています.ところが日本では「どこに行けば,体系的に睡眠医学を学べるのか?」すら明確でないという現状です.この理想と現実の差はあまりにも大きく,「どこから手をつければよいのか?」すらわからないほどです.
そして,この差を生み出している根本的な理由は,「睡眠医学は必要だ」という認識が,他の診療科の医療従事者に十分共有されていないことに尽きます.その溝を埋めるためには,全ての医療従事者に対し,睡眠医学が人間の生命活動の根幹に関わる学問であることを理解してもらう必要があります.本書は,そのために生まれました.別に読者の皆様に睡眠医学を専門に選んでいただく必要はありません.むしろ,それぞれの専門分野の中に必ず存在する「睡眠医学的要素」に目を向けていただきたいのです.なぜなら睡眠医学は,「睡眠」だけでなく「覚醒」も含めて人間を連続的にとらえる学問だからです.
さらに,本書では「睡眠医学をさらに学びたいと思った時に,どのような方法があるのか?」についても1章を割いて紹介しています(15章).学会などで私に声をかけていただければ,さらに詳しくお話しすることもできます.この分野はまだ人数が少ないため,比較的容易にネットワークに加わることができるのです.ある意味,チャンスの時代が長く続いているとも言えます.
「睡眠医学は絶対に必要である!」
─この思いが医療従事者の大多数に共有されるまで,私の怒りは燃え続けることでしょう.
最後にニューヨーク時代からの友人でもあるシリーズ監修者の香坂俊先生には,この改訂第2版でもお世話になりました。龍華朱音先生には今回も的確で味のあるイラストを描いていただきました.初版に引き続き本書の編集を担当いただいた丸善出版企画・編集部の程田靖弘様の変わらぬ熱意がなければ,そもそもこの本は存在しませんでした。皆様に感謝いたします.
2025年9月吉日
パロアルトの自宅で時差ぼけに悩まされながら
著者 河 合 真
目次
第1部 睡眠医学:総 論
1章 睡眠医学を学ぶための「極論」の前の「総論」[Introduction]
極論1 睡眠医学のお作法を知らずに研修期間は終わる
極論2 睡眠は究極のブライバシーである
極論3 終夜睡眠ポリグラフ検査を見れば進路が変わる. 睡眠そのものに興味を向けろ
極論4 共通語を知れば睡眠医学に参入できる
コラム1 睡眠医学はどうあるべきか?
第2部 外来で診る睡眠医学
2章 睡眠検査[Sleep Studies]
極論1 睡眠検査は睡眠を見て診るために行う
極論2 一番偉いパラメータは脳波! ゴールドスタンダードから始めよう
極論3 OSASだけ診るなら簡易検査の「少々間違う」を許容できるか?
極論4 MSLTは眠気を「見る」検査.実施はいろいろ大変
コラム1 眠りの判定に脳波が必要か?
3章 成人の閉塞性睡眠時無呼吸症候群:診断編 [Diagnostic approach for OSAS in adults]
極論1 OSASを知っている? ありがとう! でも謙虚であれ
極論2 OSASを診るな,患者を診ろ
極論3 上気道を診ないOSASの診察は無駄
極論4 OSASは突然「出現」したり「消失」したりする
コラム1 スクリーニングを感度の低い検査ですると,どうなるか?
4章 成人の閉塞性睡眠時無呼吸症候群:治療編 [Treatment approach for OSAS in adults]
極論1 AHIを知ることがOSAS治療の第一歩
極論2 CPAPは「人工呼吸器」ではない
極論3 CPAPで効果がなくても驚くことではない
極論4 医者の正義を押しつけない.疫学を脅しの道具に使わない
コラム1 「CPAPミラクル」は嗜む程度.中毒になるな! / コラム2 OSASの治療法の歴史
5章 パラソムニア: 睡眠中の異常行動 [Parasomnia]
極論1 パラソムニアは「睡眠に付き従う, 随伴する」ではなく,「睡眠中にするべきではない」行動
極論2 泥酔とパラソムニアは似ている
極論3 パラソムニアが生じる必要条件を考えろ
極論4 本物の睡眠専門医と睡眠検査技師と睡眠検査室の出番
コラム1 中枢パターン発生器(CPG)って?
6章 ナルコレプシー [Narcolepsy]
極論1 知らない疾患は絶対に診断できない
極論2 神経伝達物質を理解しなければ,診断も治療もできない
極論3 オレキシン・ハイポクレチンが「一番偉い」
極論4 REM睡眠は「かわいい」が「無防備で危険」
極論5 ドパミン作動薬の全てを敬い畏れよ
コラム1 オレキシン? ハイポクレチン? さあどっち? / コラム2 睡眠潜時反復検査(MSLT)の実施がなぜ難しいか?
7章 レストレスレッグズ症候群(下肢静止不能症候群)もしくはWillis‒Ekbom病 [RLS/WED]
極論1 ああ,もう「むずむず」とか,「脚」とか,「レッグス」とか,「レッグ」とかやめてくれ!
極論2 どうして「気のせい」では済ませられないのか?
極論3 簡単に「診断できる…」はずがない
極論4 原因がよく分からないのに治療していることを畏れよ
コラム1 疾患命名法
第3部 境界領域で診る睡眠医学
8章 救急外来における睡眠医学 [Sleep Medicine in Emergency room]
極論1 救急外来の「眠れません」は「眠れない」ことが問題ではない
極論2 ブレーキ痕がない交通事故では睡眠を絶対に忘れない
極論3 救急医が今そこで,燃え尽きようとしている
極論4 当直勤務のアウトカムは「生産性」ではない
コラム1 居眠り運転は,居眠る前が生死の分かれ目(「判断力低下」を軽く考えるな)
9章 不眠症 [Insomnia]
極論1 不眠が焦げつくのは,睡眠を知らないから!
極論2 きっぱりいい切る! 不眠とは「◯◯」の故障
極論3 鑑別診断ではなくシステムで考えろ!
極論4 慢性不眠症は治癒の可能性と治癒しない理由がある
極論5 睡眠薬は「一時避難所」
コラム1 不眠症に対する科によるイメージの違い
第4部 入院で診る睡眠医学
10章 入院病棟での睡眠医学 [Sleep Medicine for Inpatient Ward]
極論1 まとめて「入院患者」と呼べる単一の患者集団はない
極論2 不眠時処方は「避難所」だと思え.哲学なければ迷走する
極論3 不眠時処方の絶対「ダメ!」を弁える
極論4 「不眠を改善」=「睡眠薬を処方」という発想から脱却せよ
コラム1 同室者や夜勤の看護師さんの情報は絶対に無視しない.不眠ではない「眠れない」を見逃さない / コラム2 入院してよく眠れる患者たち
11章 集中治療室での睡眠医学 [Sleep Medicine in ICU]
極論1 「ICUの意識障害」は「覚醒機能不全」と捉える
極論2 RASは覚醒に必要だが,局在としては十分ではない
極論3 「覚醒機能不全」と考えれば「睡眠」も評価すべき
極論4 ICUに必要なのは「ブレインモニタリング」である
コラム1 正常な脳の睡眠を診るのが睡眠医学? / コラム2 ICUの脳波モニタリングの診療報酬を認めれば爆発的に検査がオーダーされるのか?
第5部 社会で診る睡眠医学
12章 医師の睡眠不足 [Insufficient Sleep of MDs]
極論1 医師は睡眠不足のことを 知らない
極論2 自覚症状を当てにするな!
極論3 医師たるもの,「Libby Zion事件」を全員知るべし
極論4 睡眠不足を見つけたらやることは1つだけ
コラム1 新しいルールを徹底させる方法:米国の強烈な方法 / コラム2 なぜ医師の交代勤務が確立できないのか?
13章 小児の睡眠医学 [Pediatric Sleep Medicine]
極論1 「寝る子は育つ」をよく考えろ
極論2 10代に「朝型」を強制するのは犯罪に近く,「睡眠時間の確保」は家庭,社会全体で考える
極論3 小児のOSASのメカニズムは成人と一緒だが「症状」が違う
極論4 小児のOSASは治療が違う
コラム1 うちの子の問題は全て睡眠が原因? / コラム2 小学校の授業中の居眠りは絶対に異常
14章 概日リズム睡眠・覚醒障害:そして24時間医学へ [Circadian Rhythm Sleep-Wake Disorder]
極論1 リズムとは繰り返すこと
極論2 「時計合わせ」はいつも重要
極論3 まずは,概日リズムに介入する原理を知るべし
極論4 「概日リズムの治療」は「行動の治療」であり,決して光だけで完結しない
極論5 そして睡眠医学は24時間医学へ進む
コラム1 時間生物学という分野 / コラム2 互師互弟と最初の師
15章 睡眠医学をいかにして学ぶか? [How can you learn Sleep Medicine]
極論1 知識や技術じゃない.睡眠愛を学ぶ.
極論2 「睡眠愛の萌芽」は自分で芽吹かせる
極論3 プログラムか? 師匠か? 師匠たちか? 選択肢はあるのか?
極論4 何をどうやって伝承していくのか?
コラム1 大学グッズから考える,何を誇りにするか?
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書籍情報
- ISBN:9784621311974
- ページ数:272頁
- 書籍発行日:2025年11月
- 電子版発売日:2025年12月2日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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