外来で使える痛み診療

  • ページ数 : 340頁
  • 書籍発行日 : 2025年11月
  • 電子版発売日 : 2025年11月28日
¥5,500(税込)
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商品情報

内容

痛みを訴える患者を、外来でどう診るか――
痛み診療は、本来チームで取り組むべき「集学的治療」が必要です。しかし、日常診療で痛みを訴える患者に出会うのはまず内科医・総合診療医。本書は、「どこまで内科で診るべきか」「どのように治療を進めるか」「いつ専門医にコンサルトすべきか」を、臨床の現場に即してわかりやすく解説しました。 特に、痛みのレッドフラッグを見逃さない診断力と、慢性疼痛患者のマネジメントの実際に重点を置き、診断から治療、コンサルト、ケースディスカッションまでを網羅。 薬物療法に加え、リハビリ、マインドフルネス、漢方、オピオイド治療、さらには集学的痛みセンターでの取り組みまで、多角的に紹介。また、豊富な症例を通して「外来で本当に役立つ視点」をお伝えします。

序文

序文

私の痛み診療との出会いは研修医の時の経験に遡るが、その時の指導医の言葉は深く心に残っている。すなわち、人の痛みは客観視できる指標がなく、自分事としにくいこと。まず全て受け止めることが大切であること(P.16)を学んだ。そのことを真に診療で実感し、何度も自身でかみしめたのは総合診療の外来をする中で多くの痛みの患者さんを主治医として診療するようになってからである。血液検査や画像検査で異常が出ない慢性的な痛みに苦しむ患者さんに日々接する中で、いかに主観的な訴えである「痛み」から、その背後にある病態生理を理解し、診断に結び付けることができるか、という課題に取り組んできた。また「痛み」という表現の裏にある患者さんの心理社会的な側面、ひいては人生の物語を深く理解できるのか、という課題にも取り組む必要があった。臨床実践の中で、痛みに取り組むことは自身にとって非常に重要なテーマとなった。

外来では、長く続いた痛みを完全に克服できた患者さんもおられた。一方で、痛みに苦しむ患者さんに向き合い、自身の持つ知識や経験を総動員し、できることの全て行っても患者さんの痛みを緩和することができず、無力感や閉塞感を感じることもあった。しかし、それ以上にこんなにも痛みに苦しむ方が多い、という事実が自分自身を駆り立てる原動力になった。私の外来に来られるまでに何年も苦しみぬいて来られた方も多かった。そして、そのように長期にわたって痛みに苦しんでこられた方は、その後の治療も容易ではないことも多いように思う。どの疾患にも言えることであるが、正しく病態を理解し、早く対処すれば、より予後は良いだろう。そのために、分野を問わず医師が痛みについてより理解を深め、苦手感がなく向き合うことができたら、痛みの慢性化を少しでも早期に食い止められるのでは、という思いもある。今この文章を書いているこの瞬間にも自分の力が及ばず痛みを緩和できなかった方の顔が思い浮かび、心が痛む。それらの方のためにも、自分自身がより良い癒し手になるための努力を惜しまず、またこの課題に多くの方、そして患者さんとともに取り組んでいきたい。本書の編集を通して、多岐にわたる分野で痛みのプロフェッショナルの先生方に貴重な知見と御経験の結晶である素晴らしい御原稿を頂いたことをこの場を借りて御礼申し上げたい。

また、まさに本書を編纂している最中に、私が総合診療医として学ぶ過程で深い学びを得た「病いの語り」の著者であるアーサー・クラインマン先生が来日され、直接お会いする機会を得た。ディスカッションの中で、自身が苦しむ患者さんとともに痛みを闘い、時にはともに喜び、時には自分の無力さに悩みながら歩んできた道は痛み診療を習得する過程で必然であったと感じた。「病の語り」からの一節を引用して本稿を締めくくりたい。

——治療者の行う最善のことは、病の経験とそれが患者の及ぼす心理的、社会的影響とを現象学的に正しく認識し、その認識を核にしてケアを構成することであると私は確信している。~中略~(それを専門家にどう教えるか、という文脈において)教訓を垂れるように教えることはできず、学ぶ者自身が痛みを覚え、他者のためになることをしようというさし迫った必要を感じるという困難な経験を通して、習得されなければならないものである1)。 ——

本書を手に取っていただく方とともに痛み診療に取り組み、痛みに苦しむ患者さんの力になれることを願っている。

参考文献

1)アーサー・クラインマン. 病いの語り 慢性の病いをめぐり臨床人類学. 誠信書房, 1996, p332.


2025年9月

片岡仁美
京都大学医学研究科医学教育・国際化推進センター

目次

第1部 診断総論

1 痛みを科学する

1 痛みの定義

2 痛みの機構分類

3 パーキンソン病の痛み

4 mesolimbic dopamine system と「痛覚変調性の痛み」機序

COLUMN 何が奇跡を起こしたのだろうか?

2 痛み診療 at a glance ~診断のポイントと共感~

1 医療面接

2 身体診察

3 アセスメント

4 痛み診療と共感(empathy)

3 痛みの診療ストラテジー

はじめに

1 痛みの定義

2 初診時の対応

3 患者背景の把握

4 検査

5 痛みに関わる種々の評価法

6 病状説明

7 治療目標の設定

8 治療法の選択

9 経過観察

まとめ

第2部 治療総論

1 薬物治療

はじめに

1 解熱鎮痛薬

2 オピオイド

3 鎮痛補助薬

4 局所麻酔薬・抗不整脈薬

5 抗けいれん薬(カルバマゼピン・バルプロ酸ナトリウム)

6 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)

7 NMDA 受容体拮抗薬

COLUMN 薬物治療 処方例

2 ペインセンター(集学的痛みセンター)とペインクリニック

1 痛みに対する診療施設の種類とその役割

2 ペインセンターに求められること

3 慢性疼痛患者の病態と治療アプローチ

まとめ

3 リハビリテーション

はじめに

1 急性痛に対するリハの適応

2 慢性疼痛に対するリハの適応

おわりに

4 痛み治療におけるマインドフルネス

はじめに

1 痛み臨床のマインドフルネスのエッセンス

2 マインドフルネスを取り組むための態度や心の質

3 コンパッション、好奇心、平静さを引き出すためのポイント

おわりに

5 漢方医学

1 漢方医学における人体の生理活動や病態の考え方

2 治療に際しての注意事項

最後に

COLUMN 漢方治療が有効であった例

6 集学的治療

はじめに

1 痛みは生体への警告信号

2 集学的治療が必要な痛み

3 集学的痛み治療

4 集学的治療に携わるメンバー

5 評価・介入のポイント

まとめ

7 オピオイド鎮痛薬による治療

1 痛みの病態とオピオイド鎮痛薬の薬理学的作用

2 痛みと薬物依存

3 オピオイドの適応患者

4 オピオイド処方で避けるべきこと

5 オピオイド治療の考え方

6 オピオイド治療の計画書の作成

7 オピオイドの副作用対策

8 オピオイド治療の評価

9 非がん性の痛みに使用可能なオピオイド

10 トラマドール

11 オピオイドの推奨投与量

12 オピオイドの推奨投与期間

13 オピオイドの休薬方法

8 集学的痛みセンターの実際と課題

はじめに

1 慢性疼痛に対する集学的痛み診療

まとめ

第3部 ケースディスカッション

A 頭頸部

1 一次性頭痛

はじめに

1 症例提示

おわりに

2 脳脊髄液漏出症

はじめに

1 症例提示

2 解説

3 三叉神経痛

はじめに

1 三叉神経痛(trigeminal neuralgia:TGN)

おわりに

4 顎関節症、舌痛症

1 顎関節症(temporomandibular disorder:TMD)

2 舌痛症(glossodynia) / 口腔灼熱症候群(burning mouth syndrome)

B 胸部

1 SAPHO 症候群

はじめに

1 症例提示

2 SAPHO 症候群とは

3 SAPHO 症候群の診断

4 SAPHO 症候群の診断パターン

5 SAPHO 症候群の治療

おわりに

2 微小血管狭心症

はじめに

1 症例提示

2 病態と機序

3 診断

4 病因・機序

5 治療と予後

3 胃食道逆流症

1 症例提示

4 胸壁症候群

はじめに

1 胸壁症候群とTietze症候群

2 胸壁症候群の症候

3 胸壁症候群の臨床所見と診断のポイント

4 胸壁症候群の診断とリウマチ性疾患との鑑別

5 症例提示

6 胸壁症候群の治療

まとめ

C 腹部・骨盤部

1 ACNES

はじめに

1 症例提示

2 ACNES の背景

3 ACNES の診断と外科的治療

4 外科的治療以外のACNESの治療

おわりに

2 Fitz-Hugh-Curtis症候群

はじめに

1 症例提示

3 過敏性腸症候群

はじめに

1 症例提示

おわりに

4 ループス腹膜炎

はじめに

1 症例提示

2 経過

3 考察

5 家族性地中海熱

はじめに

1 症例提示

2 病因とメカニズム

3 症状と検査

4 診断

5 治療

6 症例のその後

まとめ

6 慢性骨盤痛症候群

はじめに

1 症例提示

2 考察

まとめ

7 会陰部痛

はじめに

1 症例提示

2 会陰部痛の診断

3 会陰部痛の治療法

おわりに

D 神経障害性疼痛

1 視床痛

はじめに

1 症例提示

2 定義

3 症状

4 診断

5 責任病巣と病態機序

6 治療

2 有痛性糖尿病性神経障害

1 症例提示

2 症例の経過

3 症例の考察と解説

おわりに

3 複合性局所疼痛症候群(CRPS)

はじめに

1 症例提示

2 CRPS の診断

3 CRPS の治療

E 筋骨格系

1 筋膜性疼痛症候群

はじめに

1 症例提示

2 原因と危険因子

3 合併症

4 診断

5 治療

2 腰痛

はじめに

1 症例提示

2 特異的腰痛ルールアウトの実際

3 腰椎由来の神経障害性疼痛

4 従来の非特異的腰痛

おわりに

3 リウマチ性多発筋痛症

はじめに

1 PMR は除外診断

2 問診表

3 病歴聴取

4 身体診察

5 検査

6 治療

4 痛風、偽痛風、クラウンデンス症候群

はじめに

1 高齢者の痛風

2 ピロリン酸Ca結晶沈着症の臨床病型(急性から慢性まで)

3 クラウンデンス症候群

F 全身

1 線維筋痛症

はじめに:疾患の概要 線維筋痛とは

1 症例提示

2 文献的考察

2 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)

はじめに:疾患の概要 ME/CFSとは

1 症例提示

まとめ

3 子宮頸がんワクチン接種後に出た頭痛

はじめに

1 考察

4 身体症状症

はじめに

1 症例提示

2 考察

3 痛覚変調性疼痛

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書籍情報

  • ISBN:9784765320689
  • ページ数:340頁
  • 書籍発行日:2025年11月
  • 電子版発売日:2025年11月28日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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