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北大式小児がんのキャンサーボード 連携診療実践ハンドブック

  • ページ数 : 320頁
  • 書籍発行日 : 2025年11月
  • 電子版発売日 : 2025年11月26日
¥5,940(税込)
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商品情報

内容

本邦初のキャンサーボード実践ハンドブック!
北海道大学病院小児科で行われている実際のキャンサーボードをロールモデルとして,読めば各施設に応用して明日から実践できるようになるための必読書!
がん患者の状態に応じた適切な治療を提供するために主治医はもちろん手術,放射線療法,病理,化学療法,緩和ケアにかかわる専門医師や看護師,臨床心理士,社会福祉士等治療に携わるすべての医療関係者に役立つ1冊.

序文


本書を手に取ってくださった皆さんはどのような人たちなのでしょうか.医療者でしょうか,あるいは病院で働くけど,医療者でない方たちでしょうか.それとも患者さんでしょうか,あるいは患者さんの近くにいる人たちでしょうか.そのような皆さんは,キャンサーボードと聞いて,何を思い浮かべますか.医療者を中心とした治療方針を決定する会議でしょうか.あるいは,多職種による療養支援も含めた包括的な会議でしょうか.それが「小児がんのキャンサーボード」となるとどうでしょうか.患者本人の同意能力はどうか,成長・発達をどのようにみていくのか,家族への支援はどうか,小さい子どもが抗がん剤を投与されるとどうなるのか.このような様々な問題に対応する会議とは,どのようなものか,と思われることでしょう.

実は,小児がんのキャンサーボードについての体系的なマニュアルあるいは理念を説いたものや教科書は今までなかったのでした.全国の小児がんの診療を行う施設が,それぞれに工夫を凝らしてシステムを作り上げてきているのだと思います.

しかし,それではあまりにも大変ということで,今回,北海道大学病院から,サンプルを提示しようと思い立ちました.

北海道は日本の中央から遠く離れた辺境に位置します.しかし,100年も前から北海道大学を中心に小児医療が展開されてきました.今ではインターネットの発達もあり,中央からの距離はあまり問題なくなってきました.逆に北海道は中央から離れているので,多くの医療を道内で完結させたいという北海道民の願いもあり,中央とそれほど遜色のない医療が可能になってきました.北海道大学は敷地が広いので,医学部,歯学部,薬学部,保健学科,獣医学部,農学部などの医療系・生命科学系の学部が隣り合っていますし,病院の中には陽子線治療センターもあり,インフラは良いとも言えます.また,人々が因習にとらわれず,進取の気性に富んでいるので,新しいことを受け入れる柔軟性は高いとも言えます.結果として,この本では,症例検討会,多職種会議からAYA世代,緩和ケアまで,12ものカテゴリーについて記すことが可能になりました.この全てを皆様に取り入れて頂こうとは思いませんし,私たちのシステムもこのまま変わらないということもないと思います.あくまでも,日本に15ある小児がん拠点病院の一つで,日本の中心から離れた施設の現在の取り組みが示されていると考えて頂ければ幸いです.そしてご意見,ご批判などを賜れれば嬉しいです.

なお,編集の上岡里織さんには企画の段階から大変お世話になりました.ここに謝意を表します.

最後に,このような一見,とても複雑で大変な小児がん医療に携わっておられる皆さまに敬意を表し,また私たちと連帯することにより,私を含めて多くの人がこれからも自信を持って良い医療ができると感じられることを期待して,巻頭のご挨拶とさせていただきます.


2025年10月

北海道大学大学院医学研究院小児科学教室教授
真部 淳

目次

I章 キャンサーボードとは 〈真部 淳〉

1.小児がんのキャンサーボードの立ち位置

2.小児がんに関わる医療チーム

3.小児がんの患者と家族を支援する体制:多職種連携

4.キャンサーボード会議の注意点

II章 小児がん診療を支えるキャンサーボードの実際

1 症例検討会

A 重要性 〈平林真介〉

1.小児がんの概要

2.小児がんにおける生存率

3.トータル・ケア

4.症例検討会の実際と理想

B 小児内科 〈安部樹太朗〉

C 薬剤部 〈山口敦史〉

1.薬物療法

2.抗がん剤の種類と作用機序

3.副作用マネジメント

4.がん薬物療法のレジメン管理

5.適応外使用,未承認レジメン

6.症例検討会での薬剤師の役割

D 歯科 〈趙 継美〉

1.小児がん診療における歯科の役割とは

2.口腔を起因とする菌血症について

3.小児がん治療に伴う生活習慣の変化が口腔に与える影響

4.小児がん治療による口腔内合併症とその対応

5.歯科受診に伴う患児・保護者へのサポート

E その他職種 〈大浦果寿美〉

1.看護師の役割

2.チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)の役割

3.医療ソーシャルワーカー(MSW)の役割

4.多職種連携の重要性

5.課題と今後の展望

おわりに

2 病棟多職種会議(多職種カンファレンス)

A 重要性 〈古藤幸子〉

B 医療ソーシャルワーカー 〈丸山喬史〉

1.医療ソーシャルワーカーとは

2.経済的支援

3.就園・就学支援

4.在宅支援

C 多職種会議における看護師の役割 〈古藤幸子〉

D CLS 〈直正 唯〉

1.子どもにとって小児がんとは

2.CLSについて

3.CLSの視点と役割について

4.多職種と共有することの大切さについて

E 小児内科の立場 〈真部 淳〉

F 小児の入退院支援 〈安藤亜希子〉

1.看護師が担う入退院支援の役割

2.入退院支援の実際

3.事例

おわりに

G 保育士の視点から 〈松岡さとみ〉

1.病棟保育士の存在

2.小児科病棟における保育士の役割とは

3.年齢別で考える子どもとその家族との寄り添い方

4.保育士ができること

5.多職種カンファレンスから繋がるチーム医療

H 理学療法士の視点から 〈西嶋 愛〉

1.理学療法士の関わり

2.理学療法評価

3.理学療法介入

4.退院・復学などの社会復帰支援

5.多職種会議

I がんの子どもの家族との関係 〈松澤明美〉

1.子どもががんになることによる家族への影響

2.がんの子どもの家族をケアの対象としてとらえる

3.がんの子どもの家族との関係

3 脳腫瘍・陽子線治療

A 小児の脳腫瘍総論 〈山口 秀〉

1.分類

2.診断

3.初期対応

4.小児脳腫瘍の治療

5.小児脳腫瘍固有の問題点:長期合併症や治療後遺症

B 陽子線治療総論 〈橋本孝之 森 崇 西岡健太郎 青山英史〉

1.陽子線治療総論

2.陽子線治療キャンサーボードの意義と意味

C 小児内科医の立場から 〈寺下友佳代〉

1.当院での小児脳腫瘍・陽子線カンファレンス

2.小児脳腫瘍の診断・治療(小児科内科医の立場から)

3.長期フォローアップの視点から

おわりに

4 小児外科

A 総論 〈本多昌平 河原仁守 河北一誠〉

1.小児外科と小児がん診療

2.小児固形腫瘍

3.AYA(Adolescent and Young Adult)世代

4.本院におけるキャンサーボードの運営

おわりに

B 小児がん治療における小児外科医の役割 〈本多昌平 河原仁守 河北一誠〉

1.外科医が関わる小児がん治療戦略の立案

2.Oncologic emergency

3.コーディネーターとしての小児外科医の関わり

4.キャンサーボードにおける外科的検討項目

おわりに

C 小児内科医 〈長谷河昌孝〉

1.小児外科に依頼する主な処置・手術

2.小児外科と実施しているカンファレンス

3.小児外科との連携の実際

おわりに

5 小児における遺伝性腫瘍

A 総論 〈山田崇弘〉

遺伝性腫瘍の理解と対応—小児がん診療における視点の広がり

B 検査のタイミング 〈寺下友佳代〉

1.どのようなときに遺伝性腫瘍を疑うか

2.小児がんとして発症する遺伝性腫瘍

3.遺伝学的検査のタイミング

4.遺伝性腫瘍と診断されたら

5.症例提示

おわりに

C 遺伝カウンセリング 〈向中野実央 柴田有花 山田崇弘〉

1.遺伝カウンセリングとは

2.遺伝カウンセリング担当者

3.小児領域の遺伝カウンセリングで気を付けること

4.これからの遺伝カウンセリング

おわりに

D 臨床遺伝専門医 〈山田崇弘〉

1.臨床遺伝専門医制度の設立

2.臨床遺伝専門医の養成システム

おわりに

6 がんゲノムと早期臨床試験会議

A がんゲノム医療について 〈木下一郎〉

1.がんゲノム検査の概要

2.CGP検査の流れ

3.がんゲノム医療の課題

4.小児がんにおけるゲノム医療の意義

B がんゲノムと臨床試験 〈山口 秀〉

1.臨床試験とは

2.分子標的薬を用いる臨床試験の特徴

3.小児がんにおける臨床試験

C 小児がんにおけるがんゲノム検査の特徴 〈齋藤祐介〉

1.がんゲノム検査の有用性

2.がん遺伝子パネル検査の種類

3.がんゲノム検査で検出される遺伝子変異

4.がんゲノム検査と遺伝性素因

5.がんゲノム検査と治療選択

6.がんゲノム医療の実際

7 児童精神会議

A 精神的なケアの重要性(総論) 〈直正 唯〉

1.小児がん患者の心理的ストレスについて

2.児童精神科合同カンファレンスについて

3.児童精神科合同カンファレンスの実際

おわりに

B 小児がんにおける児童精神医学の立ち位置 〈中右麻理子 齊藤卓弥〉

1.北海道大学病院の模索

2.社会適応について

3.精神疾患

4.治療の受け入れ

5.親支援

C 小児内科医の立場から 〈寺下友佳代〉

1.小児がん患者の経験と精神心理的な影響

2.小児がん患者の高次脳機能障害

3.当院での経験

4.児童精神科との定期カンファレンス

おわりに

8 固形腫瘍病理検討会

A 総論 〈真部 淳〉

B 病理医 〈高桑恵美〉

1.固形腫瘍病理検討会

2.小児がんの病理診断

3.AYA世代のがん

4.今後の展望

C 小児内科医 〈澤井彩織〉

1.各診療科の医師の役割

2.小児内科医が固形腫瘍ボードに求めること

おわりに

D 小児外科医 〈河原仁守〉

小児外科医の固形腫瘍ボードでの役割

おわりに

9 造血細胞移植

A 総論 〈平林真介〉

1.造血細胞移植とは

2.造血細胞移植の実際,流れ

3.造血細胞移植にかかわる多職種

4.造血細胞移植のカンファレンスについて

B 小児科医 〈平林真介〉

1.小児における造血細胞移植の適応

2.ドナー/造血細胞の選択

3.小児ドナーの倫理的課題

4.移植前処置

C 看護師 〈山川 愛〉

D 薬剤師 〈山口敦史〉

1.造血幹細胞移植

2.前処置に用いられる抗がん剤

3.移植後に使用される薬剤

4.無菌調製

5.造血幹細胞移植カンファレンスにおける薬剤師の役割

10 長期フォローアップと移行期医療

A 移行期医療の重要性と難しさ─総論 〈寺下友佳代〉

1.移行期医療とは

2.移行期医療はなぜ重要か

3.一般的な移行期医療の流れ

4.移行期医療の課題

おわりに

B 小児がん専門医の役割とWEBによる外来カンファレンス 〈真部 淳〉

C 小児内分泌 〈中村明枝〉

1.下垂体前葉障害

2.甲状腺機能異常・甲状腺腫瘍

3.糖・脂質異常

4.骨カルシウム代謝異常

D 血液内科医の視点から 〈荒 隆英〉

はじめに─小児がん患者のCancer Survivorshipを考える─

1.なぜ移行期医療が必要なのか

2.移行期医療の実際

3.移行期医療の課題と対策

おわりに

E 産婦人科医 〈小林範子〉

1.小児がん治療が卵巣に与える影響

2.小児がん治療に伴う晩期合併症

3.妊孕性温存療法

4.中長期的フォローアップ

おわりに

F 内分泌内科医 〈亀田 啓〉

1.小児がん治療が内分泌系に与える影響

2.長期フォローアップにおける内分泌評価

3.代謝・内分泌異常に対する治療と管理

4.内科へのトランジション

5.成人科での継続的なフォローアップ

おわりに

G 看護師 〈押切美佳〉

1.入院中からはじまる移行期支援

2.発達段階別のかかわり

3.長期フォローアップ外来(LTFU外来)

おわりに

11 AYA世代と妊孕性温存

A AYA世代総論─血液がん─ 〈後藤秀樹〉

1.血液がん治療における妊孕性低下のリスク

2.妊孕性温存への取り組み

3.血液がんにおける妊孕性温存の課題

おわりに

B 妊孕性温存の実際(医師の立場から) 〈寺下友佳代〉

1.妊孕性温存療法の重要性

2.妊孕性温存療法の適応

3.妊孕性温存療法の実際

4.妊孕性温存療法の課題と今後の展望

おわりに

C 妊孕性温存の実際(看護師の立場から) 〈石岡明子〉

12 緩和ケア

A 小児緩和ケア概論 〈長 祐子〉

1.歴史的な背景

2.小児緩和ケアの理念

3.小児緩和ケアの対象疾患

4.チーム医療(多職種連携)としての緩和ケア

5.小児緩和ケアにおける苦痛の評価

B 小児緩和ケアの意義と課題 〈敦賀健吉〉

1.小児緩和ケアの意義

2.小児緩和ケア特有の課題

3.小児緩和ケアにおける緩和ケアチームの利点

C 緩和ケアチームにおける小児科医の役割 〈長 祐子〉

1.緩和医療の中の小児科医

2.小児科医の役割

3.小児の苦痛評価と対策(非薬物療法と薬物療法)

4.意思決定において

5.処置時の疼痛管理

D 緩和ケアチームにおける麻酔科医の役割 〈三浦基嗣〉

1.鎮静と全身麻酔

2.術前管理・評価

3.術前準備

4.疼痛管理

E 緩和ケアチームにおける薬剤師の役割 〈熊井正貴〉

1.非オピオイド性鎮痛薬

2.オピオイド性鎮痛薬

F 緩和ケアチームにおける看護師の役割 〈西田真理〉

1.小児がん拠点病院における緩和ケアチームの活動

2.エンド・オブ・ライフ期の緩和ケア(倫理的視点と意思決定支援)

3.悲嘆のケア(グリーフケア)

G 家族との関係 〈長 祐子 直正 唯 松岡さとみ〉

1.緩和ケアの導入と家族とのコミュニケーション

2.告知と意思決定

3.きょうだいへの支援

4.療養場所について

13 国際キャンサーボード 〈真部 淳〉

Column 親の会の役割と協働作業 〈早坂瑞樹〉

1.小児科病棟における親の会

2.親の会による効果の実際

3.親の会における看護師の役割

4.今後の親の会

III章 症例で見る実際

1 脳腫瘍 〈山口 秀〉

1.症例

2.解説

2 固形腫瘍 〈河北一誠〉

1.症例

2.キャンサーボード

3.治療経過

4.症例を通じて得られたキャンサーボードの有用性と

今後の課題

おわりに

3 内分泌合併症 〈中村明枝〉

1.症例

2.キャンサーボード

3.治療経過

4.今後の課題

おわりに

4 神経変性疾患 〈大浦果寿美〉

1.症例の概要

2.キャンサーボードに準じた多職種連携の実際

3.考察

おわりに

5 AYA世代 〈真部 淳〉

1.26歳女性 胞巣状軟部肉腫

2.20歳女性 甲状腺乳頭がん

3.18歳男性 嗅神経芽細胞腫

4.16歳女性 慢性活動性EBウイルス感染症

おわりに

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書籍情報

  • ISBN:9784498245082
  • ページ数:320頁
  • 書籍発行日:2025年11月
  • 電子版発売日:2025年11月26日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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