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- Unusual Inflammations ―日常診療に潜む“非典型”炎症を読み解く―
商品情報
内容
日常臨床で遭遇する「炎症」の中には“変なやつ”が潜んでいます.著者はそれを『Unusual Inflammation』と呼び,意識的に細分化することで臨床の意義を見いだします.炎症は,単にある/なしを判定しプロブレムリストに記載するものではありません.真の病態の理解には,病像の中核をなす炎症パターンの理解が不可欠です.稀代の臨床医である著者の炎症観を,ぜひご堪能ください.
序文
推薦文~広大な炎症の世界へ誘う一冊~
百科全書的な知識を背景に,内科の広い領域に対して「炎症」という視点から縦横無尽に切り込み,そこに著者独自の感性による考察を加えた,まさに“野趣溢れるジビエの一皿”のような一著である.
わたしたちが臨床で目にする病像は,(外因性・内因性の)病理本体に加え,それに対する多様な生体反応の積分値でもある.その中核に位置する「炎症」は,しばしば過剰となり,病巣の外にまで影響を及ぼす.すなわち「臨床像の理解」には「様々なパターンの炎症の理解」が必須となるはずである.
著者は『内科診療フローチャート』を編んだ百科全書的臨床家であると同時に,知る人ぞ知る「狩猟内科医」でもある.(わたしを含めた)リウマチ科医,感染症科医,アレルギー科医,血液内科医が「自分たちの領域の炎症」を守備範囲として,行儀よく包丁を用いているのに対して,著者は「内科すべて」を対象として大鉈を振るっているかのように見える.その文献渉猟の質量と臨床観察の深さは圧巻であり,随所に「炎症を狩る者」の鋭い洞察が光る.
第1章「通常の炎症の成立機転」から始まった話は,第2章「単球増多を伴う炎症」に引き継がれていく.個人的にも,遷延する炎症反応の評価に際して最初に重視することは「血算と白血球分画の時系列結果」であり,(「炎症反応」の代名詞である)CRPではない.
著者の「個人的な考え方」に触れたい(せっかちな)読者は,第6章の「EGPAとHESはどのように鑑別すべきか?」を通読してほしい.これはリウマチ科の教科書にも血液内科の教科書にも書かれていない創見であると思う.
読者はぜひこの「髙岸ジビエ料理」をじっくりと味わい,唸ったり感心したりしていただきたい.そして若い医師たちはぜひ,自らのブッシュナイフを携え,炎症という複雑な藪に分け入り,新たな道を切り拓いてほしい.
2025年11月
帝京大学ちば総合医療センター
第三内科学講座(リウマチ)准教授
萩野 昇
はじめに
『炎症』という言葉は,医師であれば日常診療ではほぼ毎日目にする機会があろう.プロブレムリストにも,カルテにもよく記載されていることと思う.だがしかし,その『炎症』という状況をどこまで細分化し,意識して把握/鑑別しているだろうか?
同じ『炎症』にも日常で診ているものとは顔色が異なる,『変なやつ』がいる.その『変なやつ』 を私はUnusual Inflammationと呼んでいるが,皆さんはその『変なやつ』に心当たりはあるだろうか?
・もし心当たりがあるという人へ
どのくらいのパターンを認識しているだろうか? この書籍に書かれている以外のパターンを知っていたら,是非教えていただきたい.心からお願いしたいと思う.また,もしあなたが知らないパターンをこの書籍から得ることができたならばとても嬉しく思う.
・全く心当たりがないという人へ
全くもったいない臨床経験を積んでいる! 炎症をただの『炎症』とプロブレムリストに記載するなんて.今からでも修正し,これからの臨床経験を非常に豊かなものにしてほしい.
Unusual Inflammationを知るにはまずはUsualを知らねばならない.Usual Inflammationはおそらく日常診療で多く遭遇する細菌感染症や外傷に伴う炎症のことである.
第1章ではUsual Inflammationとして,一般的な細菌感染症の炎症パターンを説明(復習)する.その後の第2章以降では,Usualと異なるUnusual Inflammationを,症例をベースに解説していこうと思う.
注意事項として,
この書籍に記載した内容は,主に私の臨床経験から生まれた知識を元にしている.したがってエビデンスがない部分も多い.エビデンスがあるものに関しては,極力そのエビデンスを紹介するようにしている.筆者は医学部を卒業後,大学医局には属さず,ひたすら市中病院で総合内科(昨今の分類では,地域主幹病院における“なんでも内科”.振り分けのみではなく,初診,診断,治療,フォローまで一貫して行う)で研鑽し,現在はリウマチ膠原病内科を専門として診療している.いわゆる『変わった病気』の臨床の専門家とも言えるが,研究という面ではテンでダメ,未熟以下であり,その点ご容赦いただきたく思う.
また,この書籍を読むにあたって,最も注意してほしいことは以下である.
・ 診断に重要なのはやはり病歴である.病歴なくして診断はできない.この書籍は血液データが主題となっているが,血液データのみで診断ができるとは考えてはいけない.
・ この書籍に記載した内容は,あくまでも個人的な臨床経験によるものが多いが,自分の診療を振り返った結果,また気づいてから数年の臨床経験において再現性はあるように思う(これも印象にすぎないが). これを今後クリニカルクエスチョンとして,臨床研究として扱う場合,著作権フリーでありどんどんやってほしい.一つだけ発案者として願いが許されるならば,その研究結果がポジティブであれ,ネガティブであれ,結果を教えていただけると幸いである.
2025年11月
髙岸勝繁
目次
Chapter 1Usual InflammationとUsualの中のUnusual
1-1 Usual Inflammation〜細菌感染症や外傷に起因する炎症の特徴〜
このような反応が生じる機序
1-2 リンパ球が抑制されないショック症例
ショックの原因別の血球分画
症例1-2の診断は
1-3 好酸球が抑制されない敗血症
相対的副腎不全を合併している
そもそも敗血症ではない
(補足)ANCA関連血管炎(AAV)の炎症
1-4 好塩基球が上昇した炎症
好塩基球増多と慢性骨髄性白血病(CML)
CML以外の好塩基球増多の鑑別
Challenge症例
Chapter 2単球増多を伴う炎症
2-1 遷延する炎症+単球増多
CMMLと慢性炎症
症例2-1の2年後
2-2 単球割合(%)の増加が目立つ炎症
くすぶり型IVLとは
悪性リンパ腫による炎症 診断のコツ?:単球を意識せよ
悪性リンパ腫による炎症 診断のコツ?:骨髄濃度を意識せよ
悪性リンパ腫では,基本的に免疫グロブリン上昇は認められない
症例2-2の続き
Challenge症例
Chapter 3CD4+ T細胞の過活動による炎症
CD4+ T細胞過活動と好酸球増多
CD4+ T細胞過活動と免疫グロブリンの増加
身体所見,検査所見の組み合わせ
複数の薬剤に過敏性反応を呈する症例
CD4+ T細胞の過活動パターンを示す疾患例
症例3-1のその後
Challenge症例
慢性好中球減少症の鑑別
症例のつづき
補足:溶血のない直接クームス陽性の意義
Chapter 4CD8+ T細胞の過活動やIL-18が関連した炎症
4-1 IL-18が関連した炎症
AOSDやsJIAとIL-18
IL-18のマーカーとしてのフェリチン
AOSDに対する治療
4-2 CD8+ T細胞の過活動による炎症
補足:DLBCLとフェリチンの関係を考えてみる
補足:MAS/HLHの臨床症状,特徴
Challenge症例
パルボウイルスB19の概要
関節リウマチとフェリチンの関係は
Chapter 5M蛋白血症を伴う臓器障害:MGCS
MGCSの症状/症候
5-1 神経障害が主となる他のMGCS, POEMS症候群
神経障害が主となるMGCS
POEMS症候群
POEMS症候群の臨床症状
POEMS症候群の検査所見
5-2 ALアミロイドーシス
ALアミロイドーシスの症状・所見
ALアミロイドーシスの診断
Chapter 6疾患オーバービュー
6-1 VEXAS症候群
VEXAS症候群の診断
VEXAS症候群の治療
6-2 血管内リンパ腫
IVLの症状・所見
HPS-associated variant IVLの診断
6-3 好酸球増多の評価方法
好酸球増多による臓器障害
好酸球増多の評価方法
6-4 好酸球増多を伴う炎症:EGPAとHESはどのように鑑別すべきか?
EGPAの典型的な経過
EGPAとHES:臓器障害のパターンから考えてみる
臓器障害や臨床経過からのEGPA,HESの考え方
治療方針からのEGPA,HESの考え方
6-5 特発性多中心性Castleman病とTAFRO症候群
特発性多中心性Castleman病(iMCD)
TAFRO症候群
特発性多中心性Castleman病(特発性MCD)とTAFRO症候群の治療
6-6 大型顆粒リンパ球増多症/白血病
LGL白血病を鑑別に挙げる状況
LGL白血病の背景疾患
Felty症候群とLGL白血病
LGL白血病疑い症例の初期評価
T細胞性のLGL増多症の評価
NK細胞性のLGL増多症の評価
LGL白血病の治療
6-7 IgG4関連疾患
IgG4関連疾患の診断
IgG4関連疾患の治療
6-8 成人Still病
成人Still病の臨床所見,経過
成人Still病の診断基準
成人Still病の治療方針
6-9 重症薬疹(DIHS/DRESS,SJS/TEN,AGEP)
薬剤性過敏症症候群(DIHS/DRESS)
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)
急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)
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書籍情報
- ISBN:9784498120280
- ページ数:184頁
- 書籍発行日:2025年11月
- 電子版発売日:2025年12月3日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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