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- 医療AIの臨床実装――医療現場で使用されるAI技術
商品情報
内容
AIの得意・不得意などの特徴をつかみ,「臨床をAIの進化に生かし,AIを臨床に生かす」ためにどうすればいいのか具体的に解説する1冊! 学習データにおけるノイズやドメインシフトの問題をどうクリアしていくか,個人情報である各症例のデータや画像をどう取り扱うか,また,医療AIを用いてどのように診断・治療に生かすか,など現場で必要となる知識をまとめた画像診断支援システムや電子カルテ解析を適切に活用するための必読書です.
序文
序文
深層学習の登場以降,人工知能(AI)技術は飛躍的な進歩を遂げ,社会の多様な領域で実装が加速している.とりわけ2017年のTransformerの登場は転機となり,生成AIの能力向上がこの潮流を一段と押し広げた.いまやAIは,社会を支える基盤技術の一つとして重要な役割を担っている.2024年のノーベル賞において,物理学賞のジェフリー・ヒントン博士,化学賞のデミス・ハサビス博士がAI研究の成果により受賞したことは,AIが要素技術として人類に大きく貢献してきた事実を,歴史的に刻む出来事であったと受け止めている.ノーベル賞はアルフレッド・ノーベルの遺志に基づき,人類への顕著な貢献を顕彰する賞である.AIの貢献がその文脈で評価されたことは,学術と社会の接点に新たな地平を開いた.
医療分野においても,AIの活用は研究段階を超え,実臨床の現場へと確実に広がりつつある.一方で,医療は他分野と異なり,関連法規やガイドラインが多層的であり,人命に直結するという特性から,より慎重な設計・評価・運用が不可欠である.教育・人材育成,持続可能な運用体制,データガバナンスと公平性,説明可能性や安全性の確保など,AIが真に医療に資するために解くべき課題は少なくない.まさに人類の英知を結集し,学際的・実務的な協働によって推進すべき重要領域である.
本書は,このような状況認識のもと,医療AIの臨床実装に関する最先端の知見を体系的に整理し,現場での活用に向けた実践的な指針を提示することを目的としている.最新動向の俯瞰にとどまらず,評価・規制・運用にわたる論点を横断的に扱い,研究から臨床への橋渡し(トランスレーション)を具体的に描き出した.読者の皆様には,本書を通じて医療AIの現在地と課題,そしてより良い未来へ向けた道筋をご理解いただけると確信している.
最後に,本書は国内における当該分野のトップランナーの先生方にご執筆を賜った.ご多忙の折にもかかわらず貴重なお時間と知見を寄せてくださった先生方に,心より深く感謝申し上げる.
2025年10月
浜本隆二
目次
CHAPTERI 臨床応用を目的とした医療AI研究開発
1.我が国における医療AIの臨床応用に関する現状〈浜本隆二〉
1.我が国の医療AI研究開発戦略
2.我が国における医療AIの臨床応用に関する現状
3.AIを利用した医療機器に対する薬事規制のあり方や法制度およびガイドラインなどの整備
4.医療AIの課題と今後の方向性
2.内視鏡画像診断支援AI〈山田真善 山田滋美 近藤裕子 浜本隆二 斎藤 豊〉
1.開発の背景とアンメット・メディカル・ニーズ
2.WISE VISIONTMの技術概要と開発経緯
3.検知モデルの構築と性能評価(DESIGN AI-01試験)
4.臨床現場での導入実績と具体例(DESIGN AI-02試験)
5.検知性能改善モデル(DESIGN AI-01a試験)
6.AIによる病変の質的診断(DESIGN AI-03試験)
3.病理画像診断支援AI〈坂下信悟 石川俊平〉
1.病理画像診断支援AIの歴史
2.現在の病理画像診断支援AI技術と応用
3.病理画像診断支援AIの今後の展望
4.超音波画像診断支援AI〈小松正明 小松玲奈〉
1.超音波画像診断支援AI
2.研究開発における課題
3.超音波画像データセット
4.セグメンテーション
5.説明可能AI
5.人工知能技術を活用した放射線画像解析〈小林和馬〉
1.医用画像解析における技術的潮流
2.診断支援システムとしてのAI技術の活用事例
3.今後の課題と展望
6.VUCA時代のAIグランドデザイン〈志藤光介 藤澤康弘〉
1.医療現場でAIを活用するにあたって「最高の顧客体験」とは何か?
2.「時は金なり」:AI開発に向けて必要なデータの準備
3.実例の紹介:東北大学における病理AI開発の取り組み 患者主体の医療と次世代診断支援へ
4.社会実装に向けて:信頼されるAIを,現場へ届けるために
7.手術画像解析AI〈北口大地 竹下修由 伊藤雅昭〉
1.AIによる大腸がん手術の解剖構造認識
2.手術における臓器認識AIの性能評価
3.手術における臓器認識AIの有用性を探索する 多施設共同ランダム化比較試験
8.Precision OncologyへのAI活用〈安田知弘 小山隆文 浜本隆二〉
1.AIの必要性と近年の動向
2.臨床データの取り扱い
3.AIの臨床応用に向けて
9.自然言語処理を用いた電子カルテ情報の解析〈竹内俊貴 西村邦裕 堀之内秀仁〉
1.自然言語処理を用いた電子カルテ情報の解析
2.肺がん症例における治療効果と生存曲線の予測
3.希少疾患における表現型異常の抽出
4.大規模言語モデルの発展と電子カルテ情報解析への活用
CHAPTERII AIを活用したプログラム医療機器の社会実装
1.AIを活用したNECの医療・ヘルスケア領域への展開〈上條憲一 久保雅洋 和賀 巌〉
1.内視鏡画像解析AI
2.大規模言語モデルを用いた医療文書作成支援による医師業務の効率化
3.将来の発症リスク推計AI
2.SYNAPSE Creative Space〈伊藤広貴〉
1.富士フイルムのAI技術を用いた開発方針
2.AI開発支援プラットフォーム「SYNAPSE Creative Space」によるAI開発の民主化
3.SYNAPSE Creative Spaceを用いた開発事例
3.超音波検査領域における医療AIの社会実装〈酒井 彬 岩本和樹〉
1.胎児心臓超音波スクリーニングの課題と研究の歴史
2.開発技術
3.臨床試験と薬機承認
4.超音波検査診断支援AIの今後の展望
4.nodoca〈沖山 翔〉
1.nodocaの概要
2.nodocaの臨床応用と現場での価値
3.いち臨床医がAI医療機器開発に至ったプロセス
4.nodocaが描く医療の未来
5.医療現場で活躍する最新の内視鏡AI技術〈菊池亮佑 柴田淳一 多田智裕〉
1.内視鏡AIの技術的背景
2.消化器がん検診とAI
3.内視鏡AIの開発と開発上の課題
4.内視鏡AIの社会実装に向けた課題
5.内視鏡AIの未来とグローバル展開
CHAPTERIII 医療AIの臨床応用に向けた倫理的・法的・社会的課題への取り組み
1.医療AIと法律〈板倉陽一郎〉
1.医療AIと関連する法令
2.医療AIと倫理〈中田はる佳〉
1.データの源となる人への配慮事項
2.一般市民の医療データ利用に対する意識
3.医療データの二次利用を倫理的に進めるための視点
3.薬事開発からみるMLMD開発〈加藤健太郎〉
1.MLMDに対する日本の規制は厳しいのか
2.薬事の観点からみた医療機器開発
3.MLMDの承認審査について
4.医療DX─厚生労働省の取り組み〈吉原博紀 青木智乃紳〉
1.医療DX政策の概要・経緯
2.一次利用の取り組み
3.二次利用の取り組み
5.次世代医療基盤法〈宮田智昭〉
1.次世代医療基盤法とは
2.医療AIの研究開発の場面で活用し得る次世代医療基盤法の制度
3.次世代医療基盤法に関する現在の取り組み状況
6.デジタルデータのAI研究開発等への利活用に係るガイドライン〈松橋祐輝 中野壮陛〉
1.AI医療機器開発における仮名加工情報の制度理解と活用方策
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書籍情報
- ISBN:9784498148703
- ページ数:208頁
- 書籍発行日:2025年11月
- 電子版発売日:2025年12月2日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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