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- 麻酔 2025年12月号 投稿論文掲載号
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内容
序文
生産性向上に対する複雑な気持ちと向かう先
日本の経済が語られる際に,しばしば“生産性の低さ”が課題の一つとして取り上げられます。“日本人は働いていない”という意味ではなく,“働いている割に(諸外国と比較して)成果が不十分”ということです。私自身,経済について詳しいわけではありませんが,一般的に生産性は分子に“付加価値(品質,提供スピード)や収益など”を,分母に“投入資源(費用,労力,時間)”を置く式で表されます。“生産性”とやや似た言葉として,企業側がコストに焦点を当てた場合には“費用対効果”,消費者側の立場からは,獲得に要した努力や価格に見合っているかという意味での“コストパフォーマンス(コスパ)”,費やした時間に見合っているかという意味での“タイムパフォーマンス(タイパ)”という言葉もよく耳にします。高い生産性や費用対効果,コスパ,タイパは効率的な経済活動や消費者の満足感を示しており,それらを意識した仕事や生活を送ることの重要性には異論がありません。しかし,なぜかすっきりしない気持ちもあります。
日々忙しい麻酔科診療においても,生産性はもちろん重要です。先ほどの式で考えると,分母にあたる投入資源を減らすために,有効性の低い業務の取捨選択や,IT ツールを用いた業務の効率化(時間削減)に常に努め続けなければなりません。一方,分子にあたる付加価値や収益などへの取り組みは,立場や求める方向性によってスタンスが異なります。一つの方法は,診療報酬の算定を念頭に置き,コストカットと収益を意識した医療を行うことです。もう一つの方法は,付加価値を創造する取り組みです。価格を自ら決定できる企業であれば(もちろん消費者の反応を見ながらですが),付加価値に対する価格転嫁が可能ですが,医学・医療においては,進歩(新しい知見)や付加価値の創造(医療の質やサービスの向上)があっても,保険収載されるまでは収益に結びつきません。例えば2022年,皆様の長年の努力により,術後鎮痛の重要性(付加価値)が社会に認められ,術後疼痛管理チーム加算が算定できるようになりました。ここに至るまでには,多くの投資(術後鎮痛の体制作り,エビデンス作り,効果を社会へアピールなど)が必要であったはずです。
短期的視点に立ち,コストカットや収益の増加を目指すことは重要ですが,それだけを続けることには限界があります。医療機関,とりわけ研究・教育施設においては,研究を通じて新しい知見や付加価値を創出し,その領域を志す方への教育を行うことも責務の一つです。上記の式の分子に資金の獲得,論文発表,研究内容の重要性・インパクト(有益な効果)やその領域を目指す方の増加,分母に研究・教育に必要な時間・費用や困難さ(達成までの労力)を置くことになるでしょう。しかし,この部分のバランスは非常に悩ましいと思います。短期的な視点でいえば,タイパやコスパがそれほど良いとは思えない研究・教育を進めていくためには,主体性と熱意が必要です。中長期的な視点をもちながら,新しい知見や価値を生み出し,未来につなげるという組織の方向性を,教育を通じて多くの方が共有しなければなりません。進歩と付加価値創造に挑戦することは,多様性の時代においても公約数の範囲内であるはずです。研究や教育を続けていくための主体性と熱意を持続させるためには,新しい挑戦や教育を評価する組織の雰囲気と,日々の業務の見直しによって生産性を向上させ,人的・時間的資源を捻出することが必須条件となります。
ここまで“生産性を上げる”ということに対する私の感想を述べさせていただきました。結局のところ中長期的な視点をもちながら,そして未来につながることを期待しつつ,さまざまな意味での生産性を上げていくことが重要であると今さらながら感じています。
(信州大学教授 田中 聡)
目次
巻頭言
生産性向上に対する複雑な気持ちと向かう先 田中 聡
症例集積研究
わが国の小児感染症の流行の観点から考察した当院の小児手術の感染症による中止率 篠﨑 友哉ほか
症例報告
一酸化窒素吸入が有用であった左室形成術後の肺高血圧症 小笠原拳斗ほか
自律神経過反射と抜管後換気不全を来した慢性期脊髄損傷患者の麻酔管理:3 種類の麻酔法を試みた 1 症例 千綿 洋平ほか
特発性冠動脈解離を発症した妊婦への帝王切開の周術期管理 関川 香織ほか
高度肥満妊婦に対して X 線透視下硬膜外カテーテル留置後に帝王切開を行った 1 症例 伊原 彩季ほか
経皮的僧帽弁接合不全修復術に伴う医原性心房中隔欠損により高度な右左シャントを生じた 1 症例 中西 智紀ほか
膵頭十二指腸切除術後の胃内容排出遅延に対して茯苓飲合半夏厚朴湯が有効であった 1 症例―気虚型・気滞型の食欲低下を鑑別する重要性― 出野 智史ほか
慢性呼吸不全患者の腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術において下肢末梢神経ブロックを用いた1 症例 森脇 扶美ほか
紹介
フォンタン術後患者の非心臓手術における麻酔科管理の徹底―JCHO 中京病院での情報共有システム導入前後の変化―加藤真奈美ほか
漢詩から探る華岡青洲の交友(その 2):青洲の詩友達荒川 一男ほか
外国文献紹介
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書籍情報
- ISBN:9784014007412
- ページ数:99頁
- 書籍発行日:2025年12月
- 電子版発売日:2025年12月9日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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