症状から学ぶ生化学

  • ページ数 : 424頁
  • 書籍発行日 : 2025年12月
  • 電子版発売日 : 2025年12月23日
¥16,500(税込)
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商品情報

内容

生化学は、多くの疾患に関与する重要な学問分野である。学生は医学教育の初期段階の基礎科目として生化学を学び、代謝経路や酵素名などの膨大な知識をぎゅうぎゅうと頭に詰め込むが、臨床教育の段階でその生化学的な知識を疾患と結びつけて学ぶことは容易ではない。しかしながら臨床医学の現場においては、目の前の患者が訴える症状に対する適切な治療法を選択するために、症状・徴候をもたらす疾患とそれを裏付ける生化学的概念との結びつきを理解しておく必要がある。本書は「症状」から生化学を学ぶという、新しい切り口で書かれた教科書である。臨床現場でよく出合う10症状の下にそれぞれ5つの症例が示される。症状の提示から臨床的思考の展開、検査オーダーの妥当性とその結果の解釈へと続き、最後に症状の背景にある生化学的変化が詳細に解説される。医師の思考プロセスを学生が追体験できるような構成が特長である。各症例の終わりには学習のポイントを整理した「まとめ」と、医師国家試験、CBTやUSMLE STEP1の対策にもなる解説付きの復習問題が用意されている。本書は、統合型カリキュラムの教科書としても有用である。章のタイトルには症状名のみが記載されており、最初から診断名がわからない構成にすることで、学生が臨床推論の力を高めることができるよう配慮されている。一方で、巻末には取り上げられた疾患一覧や詳細な索引もあり、必要な情報にすばやくアクセスできるようになっている。広範で複雑な生化学をよりよく理解するため、臨床推論能力を向上させるために役立つ一冊である。

序文

訳者序文


私は医学部卒業後,産婦人科医として3年間フルタイムで勤務した後に基礎医学である生化学教室の大学院で研究を開始し,現在に至るまでの35年間,生化学者として研究と教育に携わってきた.東京大学,九州大学,順天堂大学と,複数の医学部で医師を目指す学生の教育を担当してきたが,そのほとんどが臨床医を志す医学部学生から,「生化学」が臨床医学からは遠く,興味をもって学ぶことが難しい学問であると捉えられていることを感じていた.一方で,実際に患者に向き合って診療活動を行っている若い医師たちからは「学生時代にもっと真面目に生化学を勉強しておけばよかった」という言葉を何度も聞いた.臨床医になって気づく生化学の重要性を,医学部の現役学生にもっと伝えたいと考え,臨床医学に直結した形式で執筆されている生化学の教科書2冊を翻訳した(『マークス臨床生化学』医学書院,『ビジュアル パニーニ臨床生化学』南江堂).さらに順天堂大学の生化学教育において,実際の症例を提示した後にその症例の病因の基礎となる生化学を自主学習するグループ学習を開始したところ,学生が主体的に学習してくれることを経験した.具体的な症例に基づいて生化学を学ぶことができれば,臨床医を目指す医学生たちにもっと生化学の重要性を理解してもらえるのではないかと考えていたときに出合ったのが本書である.

本書の構成はとてもユニークである.呼吸困難,黄疸,下痢といった症状別のタイトルが付けられた合計10章から構成され,それぞれの章で5つの症例が提示される.各症例では,患者の主訴,病歴や家族歴が紹介された後に,血液検査,尿検査,診断画像,生検の病理像などが提示される.すなわち,読者は臨床医が実際の外来で患者や家族に対峙するのと同じ順序で症例と向き合うことになる.各症例の解説では,まず「臨床医学の視点」で鑑別診断に必要な検査とその結果の解釈が示され,「基礎医学の視点」でそれを裏打ちするのに必要な生化学・生理学的な知識が整理されている.さらに「臨床医学の視点」と「基礎医学の視点」の両者で複数の「問」として,症例に直接,あるいは間接的に関係する質問が示され,それに答える形で症例に関係する知識を広げることができる.最後に「症例の転帰」として,診断と患者に対して施された治療が示される.各症例の締めくくりとして「まとめ」の項目で,重要なポイントが箇条書きで整理される.各章の最後にはCBTやUSMLE Step1の形式で10個の「復習問題」が示され,詳細な解説がまとめられている.

このような形でまとめられた生化学の教科書は,国内はもとより世界的にも稀有であり,翻訳に値する書籍であることを確信した.臨床医を目指す医学部学生に加えて,初期研修医や専修医の教育,自主的な勉強会のテキストとしても利用できると考え,生化学者と臨床医の両者の視点で翻訳する必要を感じた.まず,東京大学腎臓・内分泌内科の南学正臣教授に共監訳者を依頼した.医学部長という多忙な職にありながら,南学教授には快く監訳をお引き受けいただくことができた.さらに臨床医として石原寿光教授(日本大学糖尿病代謝内科),勝海悟郎特任助教・南野徹教授(順天堂大学循環器内科),生化学者として南嶋洋司教授(群馬大学生化学),臨床と基礎に精通する蔵野信教授(東京大学臨床病態検査医学)を訳者に迎え,最強の布陣で翻訳を行えたことは望外の喜びであった.私自身も一部の翻訳を担当し,すべての訳を2人の監訳者が二重に確認し修正を行うことで,全体の統一を図った.米国と日本で基準値や診断基準が異なる項目や疾患に関しては,原書の記載を残すとともに日本で使用されている基準値や診断基準を追記するように心がけた.

全体を通じての進行,用語や形式の統一に関しては丸善出版の諏佐海香様に全面的にお世話になった.この場を借りて深い感謝を申し上げたい.

本書が医学部学生や若い臨床医に生化学の重要性を伝え,そのさらなる理解に導くことができることを心から祈っている.


2025年11月

監訳者・訳者を代表して
横溝 岳彦



原書献辞


本書は,学生からの意見と,家族からの愛情あふれる支えがなければ生まれ得ませんでした.同様に重要だったのは,教師や同僚からの支援と指導です.これらすべてが私たちを支え,前進させる絆となりました.学びへの愛,科学的探究心,謙虚さを育み,学生たちが自信をもち自己を発見する手助けをしてくださったJoseph R. Bertino博士に本書を捧げます.



原書序文


過去20~30年の間,特に2010年のフレクスナー報告100周年以来,医学部カリキュラムは基礎医学分野間の統合に加えて,より重要と考えられる基礎医学と臨床医学間の統合が大きく進んでいる.医学教育分野の研究において,基礎医学と臨床医学の関係を明確に示した方が,学生が教材を認知的に統合できることを示す論文が複数発表され,この傾向を支持している.言い換えれば,学生が複雑な情報を処理し記憶するためには,学生がその情報を使用するのと同じ形式(すなわち医師の思考回路)で学習することがより効果的である.

生化学的な代謝の調節異常,すなわち代謝異常は,多くの急性および慢性疾患の臨床症状において重要な役割を果たしているが,生化学的代謝は臓器別のカリキュラムにうまく当てはまらないため,生化学は基礎科学の入門コースで教えられることがほとんどであり,その後のより臨床に関連したカリキュラムにおいて意味のある形で教えられることはない.さらに,ほとんどすべての生化学の教材は生化学的代謝に基づいて構成されているが,同じ代謝経路の異なる部分の欠損が大きく異なった臨床像をもたらすことがある.例えば,プリン代謝の異なる酵素の突然変異によって,痛風や重症複合免疫不全症といった全く異なる疾患が引き起こされる.学生は,臨床像に焦点を当てて,1つまたは複数の生化学的代謝の変化がどのようにしてそれらの臨床上の転帰をもたらすのかを理解するよりも,それぞれの生化学的経路とそれに関連する臨床上の転帰を丸暗記することに集中しがちである.

臨床例を用いて基礎医学や生化学を明らかにしようとする教科書は他にも存在するが,本書は患者を中心に考え,疾患や生化学的経路ではなく症状別に構成されている.患者は症状を訴えて医師のもとを訪れるのであるから,本書は,生化学的経路の変化がその症状を引き起こす,複数の鑑別診断を必要とする症状を提示するという視点から作られている.それぞれの症例について,1つ以上の生化学的経路の変化がどのようにしてこの臨床像を引き起こしたかに議論の焦点が当てられている.例えば,糖新生経路とその制御について,ひとまとめに包括的な議論をするのではなく,2つの異なる症状を伴う3つの異なる症例を提示している.それぞれその症例において,その症例の臨床症状,徴候,検査値を説明できるように,糖新生系路の異なる制御段階に焦点を当てて論じている.

本書では,10種類の一般的な症状を取り上げ,各章では1つの症状に関して5つの症例を提示して,それぞれその症状の鑑別診断を解説している.本書は全体を通じて会話形式でわかりやすく書かれている.各章は,症状の概要を説明する序論から始まる.次に,各症例の患者を紹介し,その症例の鑑別診断を行う際の臨床的根拠を述べている.次に,臨床検査をオーダーする根拠と,臨床検査の結果が鑑別にどのように影響するかが解説される.それに続いて,その症例の臨床像に関わる基礎医学についての詳細な議論が行われる.これらの議論は,医師の思考過程にならったものであり,学習を促進するために質疑応答形式で行われる.その章の終わりには,症例がどのように解決されるかについての臨床的な話題が示され,情報量が多い解説が追加されている.各章の最後には,10問の多肢選択問題が掲載され,正解と不正解の両方の解説がなされている.

本書は多くの標準的な生化学の教科書,特に単体の生化学や基礎医学の講義中心のコースの教科書として役立つ一方で,基礎医学と臨床医学の統合カリキュラムの主要な資料として優れている.より上級の学生にとっては,疾患に関連する生化学の優れた復習用の教科書としても有用である.

本書のさまざまな使用法,あるいは使用者に対応するために,各章にはその章で議論される症候を示すタイトルが付けられている.これにより,学生は最初から診断名を知ることなく,各症例を通して臨床医学的な推論に取り組むことができる.本書は,疾患のリストや索引も充実しており,必要な情報を簡単にみつけることができる.



原書謝辞


各章の査読とご意見を賜りましたZeynep Gromley博士,Naomi Schlesinger博士,Susan S.Brooks博士に深く感謝申し上げます.また,本書の構想を認め,実現の機会を与えてくださったWolters Kluwer社にも厚く御礼申し上げます.特に,編集協力,指導,そして忍耐をもって支えてくださった以下の皆様に深く感謝申し上げます:Lindsey Porambo,Crystal Taylor(編集担当),Andrea Vosburgh(フリーランス開発編集者),Deborah Bordeaux(開発編集者),Varshaanaa Muralidharan(編集コーディネーター),Bridgett Dougherty(制作プロジェクトマネージャー),Steve Druding(デザイナー),Gayathri Govindarajan(Straive社プロジェクトマネージャー).



目次

1章 息切れ

2章 黄疸

3章 下痢

4章 あざ

5章 疲労

6章 成長障害

7章 乳児期および幼児期における発達の遅れ

8章 痛風

9章 精神状態の変化

10章 肥満

付録A 復習のための問と解答

付録B 本書に掲載されている疾患一覧(五十音順)

索引

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書籍情報

  • ISBN:9784621312209
  • ページ数:424頁
  • 書籍発行日:2025年12月
  • 電子版発売日:2025年12月23日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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