実践!実装科学

  • ページ数 : 164頁
  • 電子版発売日 : 2026年2月3日
¥2,640(税込)
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商品情報

内容

エビデンスを社会に届ける実装科学の入門書

研究成果(エビデンス)と現場実践(プラクティス)の間に横たわるギャップ。本書は、そのギャップを埋め、社会実装へつなげる学問「実装科学」の基礎から応用までを幅広くカバーした、新しい学問領域の入門書です。
前半ではグローバルに共有されている実装科学の定番書を翻訳し、後半では“実践!”を意識した具体的な知見と実装へのヒントを盛り込んで、理論と実践の橋渡しを目指しています。
研究成果を実際の医療・保健・社会の場で活かすための羅針盤となる1冊です。

序文

序文

近年、研究助成や評価の場面でも「社会実装」という言葉が多く使われるようになり、実装科学という学問領域が少しずつ認知されるようになってきた。

筆者が実装科学という言葉に触れたのは、推薦人になっていただいた京都大学大学院 中山健夫先生から、10年ほど前に「先生が行っていることは実装科学そのものですね!」とお声掛けいただいたのが初めてであった。恥ずかしながら、それまで実装科学、D&I(Dissemination and Implementation)研究といった学問領域があることは知らなかった。

本書の中で触れるが、筆者らは長年、心肺蘇生やAED(自動体外式除細動器)の効果検証と普及啓発活動をライフワークとして実践してきた。筆者が医師2年目に参加したある研究会で、「心疾患による死亡の多くは院外での突然死であることを知っているのか? 循環器専門医として、もっと医療のフォーカスを院外に向けて心肺蘇生の普及活動をするべきではないか?」との問いかけに感銘を受け、心肺蘇生の普及活動を始めた。

文献を調べてみると、米国シアトルから「Community Based CPR」という論文が出されており、市民が心肺蘇生を実施すると院外心停止からの救命率が約2倍上昇することが報告されていた。1982年の論文である。しかし、当時、すでにこうした研究から20年近く経過していたが、市民のみならず、自分自身をはじめ医療者の多くも心肺蘇生の重要性を認識しておらず、十分に訓練も受けていなかった。

自身の勤める病院で、患者さんや家族等を対象に心肺蘇生の普及活動を始めてみたものの、医療者の多くは関心を持ってくれない。そうした中で、同じく推薦のお言葉をいただいた当時の指導者であった永井良三先生から、「心肺蘇生の普及活動をするのは大事だが、もっと勉強をして研究をして、発信をできるようになりなさい」とアドバイスをいただいた。

心肺蘇生の普及につながる研究はないかと学会を彷徨っているときに出会ったのが、地域網羅的院外心停止症例のレジストリであるウツタイン大阪プロジェクトであった。今思うと、自分がやりたかったことは、「心肺蘇生の有効性はわかっているのに、なぜ広がらないのだろう?」という疑問のもとに、エビデンスとプラクティスのギャップを埋める、まさに、実装科学研究を無意識のうちに進めていたのだと思う。さらに、こちらも本書内で触れている、PHR(パーソナルヘルスレコード)を活用し、本人や家族が主体的に、自身の健康医療情報を活用して健康になり、医療の質を高める取り組みも、エビデンス、あるいは社会基盤づくりからスタートする取り組みであるが、実装科学が求められる挑戦だと思っている。

本書では、実装科学のエッセンスをコンパクトにまとめてあるCambridge Elements Series, Elements of Improving Quality and Safety in HealthcareのPaul Wilson、Roman Kislov著『Implementation Science』を翻訳しつつ、我々の研究チームがこの間に進めてきた実装科学に関わる実際の研究、取り組み、そこから学んだ経験を読者の皆様とシェアしたいと考えている。

本書の作成過程を通じて、筆者一同、実装科学を改めて学び、深めているところであるが、実装科学はまだまだ発展途上の学問であると感じている。文中には、本書を作成する過程で生じた疑問や提案などをコラムとして紹介しているが、その中には、「実装科学は単にエビデンスとプラクティスのギャップを埋めるだけなのか?」、「社会を変えるために求められるエビデンスを構築することも実装科学の一部ではないのか?」といった内容も含めている。翻訳部分であるPart 1の中では、この分野から過去10年ほどの間に生まれた数多くのアイデア、理論、戦略を紹介するとともに、「実装科学は“科学”なのか?」といった視点を含めて、この分野について批判的に考察もしている。そして、結論の中で、「実装科学は今、“始まりの終わり”に立っている。実装科学の分野にとって、現在の喫緊の課題は、単に研究成果を実践に移すことだけではなく、実装科学そのものを実践に移すことである」と述べている。まさに、実装科学で得られるアイデア、理論、戦略を活かし、臨床現場を改善する“実践”が求められている。

本書を通じ、多くの皆様が実装科学に関心を持つだけでなく、ともに実装科学という新しい領域を切り開き、発展させていく仲間になってくれることを期待している。

最後に、2024年度に京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻の中で立ち上げた、おそらく我が国で最初の体系的な実装科学の授業である「健康・予防医療学領域の実装科学」に参加し、本書の作成にあたってのヒントを与えてくれた学生の皆さんにも感謝したい。


2025年8月

石見 拓

目次

Part1 実装科学の基礎

   1 はじめに

   2 実装科学とは何か

   3 実装科学の簡略な歴史

   4 実装科学の実践

   5 実装科学への批判

   6 結論

Part2 実装科学の応用(各論と実践)

   1 実装戦略の解説および各論

   2 実装理論・モデル・フレームワークの解説および各論

   3 政策立案における実装科学

   4 エビデンスを普及させるための理論・戦略

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書籍情報

  • ISBN:9784899965039
  • ページ数:164頁
  • 電子版発売日:2026年2月3日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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