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- 生命倫理と医療倫理
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内容
序文
序文
人類はその誕生以来今日まで長い歴史の中で優れた文明を築き上げるに至りました。とりわけ20世紀後半から今日に至る科学技術のめざましい進歩は,グローバルなIT社会をもたらす一方で,先進諸国においては少子化・超高齢社会の到来に直面しています。
しかしながらこのような人類文明の発展を支える人間自体の生物学的な構造は過去数千年の間不変であり,それゆえに多くの難問が発生してきています。特に医学医療の分野においてはその課題は深刻です。 たとえば2003年4月14日,人間の設計図とも言うべき全ゲノム配列の解読完了が高らかに宣言されましたが,個人の遺伝子情報をどのように取り扱うかについては暗中模索とも言うべき状況にあり,今後私たちは大いに知恵を絞っていかねばなりません。また,生殖医療や再生医療が長足の進歩を遂げつつある現在,体外受精,体細胞核移植技術(いわゆるクローン技術),胚性幹細胞など幹細胞の応用,遺伝子診断や遺伝子を用いた疾患治療等,一個人のレベルのみならず人類全体として“適切かつ思慮深い”対応を求められる課題が山積しています。
さて生命倫理の4原則は,①自律の尊重,②無危害,③善行,④正義,です。また近年,関係学会や省庁から遺伝医学医療に関連した種々の倫理指針が示されています。しかし先端医学研究ならびに先進医療の現場においては,常にこれらの原則や指針を尊重しつつも,個々の事例ごとに専門家が徹底した議論を戦わせ選択を行っていかねばなりません。しかもしばしばその選択は苦渋に満ちたものにならざるを得ません。また,高度先進医療が展開する中にあっても,誰一人として免れることのできない死を,どのように取扱い対処していくかという問題一つ取り上げても明らかなように,先進医療の現場では検討を要する課題が新たに生まれています。
つまり,今後飛躍的な発展が期待される21世紀の医学医療の中で遭遇する可能性のある,生命倫理にまつわる諸問題を提示し俯瞰することによって,水先案内の役割をも果たし得るような,医学医療に特化した倫理学のテキストが今こそ大いに求められていると言えるでしょう。本書は一般的な生命倫理学概論としてではなく,医学・歯学教育の改革を目指して文部科学省より2001(平成13)年に示されたモデル・コア・カリキュラムに盛り込まれた「医の倫理」の内容をも踏まえた,医学医療倫理に関する新たな視点に基づくテキストとして企画しました。執筆陣は,第一線で活躍中の生命倫理学者・哲学者・法学者,医療の現場や専門領域で活躍中の医師・看護師・医学研究者から成り,簡潔ながら現在のstate of the artを集約できていると考えています。医療従事者はもとより,これから医学,歯学,看護学を学ぶ学生や大学院生,医学隣接領域の自然科学を学ぶ学生,一般大学で哲学・倫理学を専攻する学生にもわかりやすいテキストとすることを目指しましたので,さまざまな場面で活用されることを願っています。
2004年8月
編者
目次
Ⅰ部 医療における原理・原則
第1章 生命倫理の今日的課題
1.はじめに―医学・生命科学の発展と生命倫理―
2.社会規範としての生命倫理―生命倫理の意義
3.生命倫理規範の形態
4.生命倫理の基本原則
5.倫理問題の具体的現況―今日の先端医学が投げかける倫理問題
6.むすびに
第2章 健康、疾患、病気
1.はじめに
2.健康と疾患の概念や定義に関わる問題
3.病気
第3章 医療者‐患者関係
1.臨床現場でみられる医療者‐患者関係
2.インフォームド・コンセント
3.守秘義務について
4.患者と医療者の意見が対立する場合
5.インフォームド・コンセントとコミュニケーション
第4章 臨床倫理
1.臨床倫理とは
2.医療機関における臨床倫理支援体制
3.臨床倫理の事例検討法
4.対話の文化を求めて
第5章 看護とケア
1.はじめに
2.生命倫理学におけるケアと、ケア論の発展
3.看護のケア(nursing care)とは何か
4.おわりに:看護におけるケアの課題
Ⅱ部 生命の始まりをめぐる倫理問題
第6章 着床前検査と胚選別
1.着床前検査とは
2.着床前検査の倫理的問題
3.諸外国における着床前検査
4.日本における着床前検査の歴史と導入・普及をめぐる論争
5.おわりに
第7章 人工妊娠中絶と出生前検査
1.問題の所在:「選択の尊重」と「差別払拭」の間で
2.障害者運動と出生前検査
3.女性の人権と出生前検査
4.法による優生思想の裏づけ:優生保護法
5.母体保護法、残された課題
6.もう一つの課題、堕胎罪
7.出生前検査:知る権利、知らせる義務
8.報告書が促した2つの方針転換
第8章 生殖補助医療技術
1.はじめに
2.生殖補助医療技術(ART)の歴史と分類
3.生殖補助医療技術の問題点
4.おわりに
第9章 新生児医療・小児医療における生命倫理
1.はじめに
2.NICUに入院する重症新生児
3.治療方針決定のためのガイドライン―「こどもの最善の利益」を考える
4.おわりに
Ⅲ部 生命の終わりをめぐる倫理問題
第10章 高齢者の医療と福祉
1.はじめに
2.高齢者の医療と福祉をめぐる現状と課題
3.認知症高齢者の尊厳の保持をめぐる課題
第11章 エンドオブライフ・ケア
1.はじめに
2.ホスピス
3.緩和ケア
4.生命維持治療の差し控えと終了の問題
5.日本におけるガイドライン策定
6.意思決定プロセス:≪情報共有=合意≫モデル
7.本人の意思の尊重―人生の物語りを核として
8.おわりに
第12章 臓器移植
1.はじめに
2.移植の類型と特徴
3.脳死の定義
4.脳死は人の死か
5.ドナーの同意を確認する方法
6.子どもの臓器提供:家族の希望
7.臓器移植法の改正
8.生体移植の倫理とルール
9.おわりに
第13章 安楽死と尊厳死
1.はじめに
2.「安楽死」論の歴史的変遷
3.「安楽死」の展開
4.安楽死・尊厳死が含意するもの
5.おわりに
第14章 救急医療・災害医療
1.はじめに
2.救急医療における医療倫理の難しさ
3.救急医療におけるインフォームド・コンセントと患者の意思決定
4.心肺蘇生
5.救急医療での医師の応招義務
6.医療機関の外で行う救急医療
7.救急・災害医療におけるトリアージ
8.新型コロナウイルス感染症におけるトリアージ
9.おわりに
Ⅳ部 先端医療技術
第15章 遺伝子・ゲノム医療
1.はじめに
2.遺伝子・ゲノム医療とは
3.遺伝の基礎知識
4.遺伝子医療の実際
5.遺伝子医療からゲノム医療へ
6.ゲノム医療におけるゲノム情報の保護と利活用
7.遺伝子・ゲノム医療の新技術とその課題
8.おわりに
第16章 再生医療
1.はじめに
2.再生医療の概要
3.再生医療の倫理問題の論点整理
4.再生医療をめぐる倫理的問いとその考察
5.再生医療ビジネス
6.おわりに
第17章 脳・ロボット・AI
1.医療におけるロボットとAI
2.ロボット・AIと脳神経科学
3.脳神経倫理とAI倫理の交差
4.今から少し先の未来:マインド・リーディングとニューロプライバシー
5.おわりに
Ⅴ部 医療と社会
第18章 医学研究
1.はじめに
2.動物を対象とした医学研究
3.人を対象とする医学研究
4.科学者の行動規範と不正行為、利益相反
第19章 医療情報をめぐる倫理と法
1.はじめに
2.医療情報の守秘
3.個人情報保護
第20章 公衆衛生の倫理
1.公衆衛生とは
2.公衆衛生の歴史
3.公衆衛生―責任の主体と議論の枠組み
4.感染症対策とヘルス・プロモーションの倫理的課題について
5.まとめ
第21章 医療機関における医療安全への取り組みの現状
1.はじめに
2.日本における医療安全への取り組み
3.医療機関における医療安全への取り組み
4.おわりに
第22章 医療人類学
1.生命倫理学と医療人類学の関係
2.11の用語で理解する医療人類学
3.グローバル/ローカル指向と現代的/伝統的課題の四象限で、人々の病いを理解する
第23章 医療とジェンダー
1.はじめに
2.ジェンダー概念の誕生:マネーやストーラーのジェンダー概念
3.ジェンダー概念の展開:〈男性/女性〉間の権力関係を分析するジェンダー概念
4.ジェンダー概念の現在:知を再構築するジェンダー概念
5.結びに代えて―ジェンダー概念のこれから
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書籍情報
- ISBN:9784765320849
- ページ数:307頁
- 書籍発行日:2026年2月
- 電子版発売日:2026年3月17日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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