臨床経食道心エコー図学

  • ページ数 : 448頁
  • 書籍発行日 : 2023年3月
  • 電子版発売日 : 2026年3月17日
¥19,800(税込)
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商品情報

内容

「施設流」から「標準」へ.現場の共通言語を構築する,経食道心エコーの新たなバイブル

経食道心エコーの役割は拡大しているが,現場の教育は施設ごとに偏りがある.本書は,解剖学的理解に基づく手技の実際から,各疾患の病態・術中評価,最新の治療支援に至るまでを網羅的に解説した.単なる知識の羅列ではなく,実際の診療で活用可能な知識として習得できることを重視した.第一線で活躍する執筆陣の経験に基づく技術と,臨床的治験が凝縮されている.次世代へ繋ぐ教育指針や,自身の知識の再確認として,十年先も手元に置きたい一冊.

序文

監修のことば


ふと気づけば,私たちは経食道心エコーの多くを,各々の現場の経験や創意工夫だけで乗り越えてはいないだろうか.先達が築き上げた診療の礎(いしずえ)の上に立つ者として,その知見を誰もが立ち返られる体系的な学問へと整えることは,次世代に対する私たちの義務であると考えた.

これまで本邦には,熟練した先達による「コツ」や「工夫」を伝える優れた書籍や講演が数多くあった.しかし用語の定義や描出手技,解釈の枠組みは,個々の術者やエコーラボに委ねられ,体系的に収束してきたとは言い難い.各施設が現場で知恵を絞ることは重要だが,参照すべき「物差し」がなければ,貴重な知見は記録されることなく消えてしまう.臨床的判断と技術が高度に融合するこの領域の蓄積を,一度整理し,後進に手渡すべきではないか.この問いが,本書の原点である.

私自身,「臨床心エコー図学」を通じて,何度も「目から鱗が落ちる」経験をしてきた.優れた教科書は,時代を超えて読者を導き,臨床の現場で確かな判断軸を与えてくれる.現在,心エコーは循環器診療に欠かせないツールとなったが,一方で専門的に担う医師が不在で困っているという声も耳にする.

経胸壁アプローチに加え,経食道アプローチが守備範囲を大きく広げている今こそ,共通の言語が必要である.共通言語を持たない文明が衰退したように,私たちもまた,この技術を正確に言語化し,共有しなければならない.

本書には「臨床経食道心エコー図学」という,いささか大それた書名を冠した.この名にふさわしいものにするため,執筆・編集作業にあたっては何度も推敲を繰り返した.校正に次ぐ校正により,出版を大幅に遅らせることにもなったが,その分,読者の皆さまにとって実践的で,現場で信頼に足る一冊に近づいたと自負している.

本書の成立には,吉川純一先生をはじめ,わが国の心エコー診療を切り拓いてこられた諸先輩方の存在を忘れることはできない.先達の卓越した洞察と不断の努力があったからこそ,今日の診療がある.本書は,その大きな流れの中で生まれた,次世代へ繋ぐための一里塚である.

ウェブやAIが急速に発展する現代において,書籍の意義についても議論を重ねた.しかし,十分な検証を経て体系化された教科書は,今なお臨床からアカデミックな領域まで,広く受け入れられる道標になると確信している.

本書を,これからの時代を担う若き医師たちに捧げたい.君が行う経食道心エコーは,ここに書ききれないほどの経験とエビデンスの積み重ねの上に成り立っている.患者さんは,鎮静下で,自らの心臓の奥深さを私たちに示してくれる.

この画像,その解釈は,患者さんの今後を左右する決定的な瞬間に値するか.そんな問いを常に胸に抱きながら,本書で学び,次の一例,次の一瞬に生かしてほしい.この本は,君のために,そして君の先にいる患者さんのためにある.


2026年2月

渡辺弘之



序文


経食道心エコーtransesophageal echocardiography(TEE)は,高い空間分解能をもって心臓を至近距離から観察できる画像診断法として,経胸壁心エコーを補完する形で進歩してきた.その高い解像度から,弁膜症や感染性心内膜炎,心臓腫瘍だけでなく,大動脈疾患や肺血管疾患に至るまで,幅広い循環器疾患の診断や治療方針決定において重要な役割を果たしてきた.さらに,近年の構造的心疾患structural heart disease(SHD)に対するカテーテル治療の飛躍的発展に伴い,その役割を「診断」から,「治療を支えるリアルタイムナビゲーション」へと大きく進化させてきた.

しかし,技術の加速度的な発展の一方で,臨床現場における教育体制がそのスピードに十分追いついているとは言い難い.TEEの実施主体は,心エコー専門医のみならず,一般循環器内科医や麻酔科医,心臓外科医などへと広がってきている.このような状況下で,独りよがりな手技や解釈に陥ることなく,安全で質の高い医療を提供するためには,教育的視点に立脚した「共通の理解」と「標準的な言語」の確立が不可欠である.

本書「臨床経食道心エコー図学」は,発刊から20年以上にわたりバイブルとして愛読され続けている吉川純一先生の名著「臨床心エコー図学」の精神に倣って,その「経食道心エコー版」となることを目指して企画・編集した.今後,ますます医療技術が進歩し,新しい治療法やデバイスが登場したとしても,その根底にある解剖学的理解や描出技術の基本は不変であり,それこそがTEEを習得するうえでの確固たる柱となるからである.

本書の構成には,TEEに関わる幅広い読者層が,それぞれの経験や到達段階に応じて活用できるよう,明確な意図を込めている.常に美しい画像を描出する,という意識を基盤として,そこからさらに,得られた画像が「どの断面で,どのような生理的または病的意義があるのか」を理解することに,TEEの本質的な価値がある.

「Part. Ⅰ 総論」では,解剖学的基礎,基本断面の描出,パネルやプローブ操作を含む手技の実際について,初学者が「どのように理解すべきか」という思考過程に重点を置いて解説した.

「Part. Ⅱ 各論」では,各疾患の病態把握から術中評価,さらには最新の治療支援に至るまでを詳述している.本邦においてTEE診療の第一線で活躍する執筆陣の経験に基づく,数値やガイドラインだけでは語り尽くせない具体的なテクニックや臨床的知恵が凝縮されている.断片的な知識としてではなく,実際の診療で活用可能な知識として習得できることを重視した.

本書では,初学者でも理解しやすくするため,基礎的かつ必須の知識は繰り返し述べられており,読み進めるうちに点と点がつながり線となるよう構成上の工夫を凝らしている.また,熟練した読者にとっても,自らの実践を言語化し,客観的に再確認するための内容となっている.10年後,あるいはその先の未来においても,本書が臨床現場の傍らにあり,ボロボロになるまで使い込まれる「座右の書」であり続けることを切に願っている.TEEに関わるすべての読者が,それぞれの立場と経験に応じて新たな発見を得て,より安全で質の高い医療の提供へとつなげていくことを心より期待したい.

最後に,本書の出版にご尽力いただいた文光堂の藤巻柚香氏と堀内珠理氏に一同心から感謝を捧げる.


2026年2月

北井 豪・太田光彦

目次

Part.Ⅰ 総論

第1章 解剖

A.経食道心エコーに必要な心血管の解剖

B.経食道心エコーに必要な咽頭の解剖

第2章 手技の実際

A.検査室の配置と感染予防

B.鎮静とモニタリング,急変時の対応

C.プローブ挿入の実際と合併症

D.プローブ操作と描出の基本

E.小児に対する経食道心エコー

F.手術室における経食道心エコー

G.機器設定とパネル操作の基本

 1.PHILIPS

 2.GE

H.インターベンション手技の際の放射線防護

第3章 経食道心エコーの進歩と新しいモダリティ

A.経食道心エコーの過去・現在・未来

B.心腔内エコー(ICE)

C.CT・MRI

Part.Ⅱ 各論

第1章 僧帽弁疾患

A.僧帽弁逆流(MR)

 1.成因と重症度評価および外科的治療における評価

 2.外科医が求める経食道心エコー

 3.カテーテル治療における評価

 4.外科的僧帽弁形成術におけるCTの活用 

B.僧帽弁狭窄(MS)

 1.成因と重症度評価および外科的治療における評価 加藤奈穂子

 2.外科医が求める経食道心エコー

C.比較的稀な僧帽弁疾患

第2章 大動脈弁疾患

A.大動脈弁狭窄(AS)

 1.成因と重症度評価および外科的治療における評価

 2.外科医が求める経食道心エコー

 3.TAVI/TAVRにおける評価

 4.valve-in-valveやSAVRにおけるCTの活用

 5.AR をきたしうる他の疾患

B.大動脈弁逆流(AR)

 1.成因と重症度評価および外科的治療における評価

 2.外科医が求める経食道心エコー

 3.CTによる逆流の評価

 4.MRIによる逆流の評価

C.大動脈弁の先天異常

 1.大動脈二尖弁(BAV)

 2.大動脈一尖弁と多尖弁

第3章 三尖弁疾患

A.三尖弁逆流(TR)

 1.成因と重症度評価および外科的治療における評価

 2.外科医が求める経食道心エコー

 3.カテーテル治療における評価

 4.CT による評価

第4章 肺動脈弁疾患・右室流出路疾患

A.肺動脈弁疾患

 1.肺動脈弁狭窄(PS)(弁上・弁・弁下)

 2.肺動脈弁逆流(PR)

B.右室流出路疾患

 1.右室二腔症

第5章 塞栓症

A.短絡(シャント)性心疾患

B.血栓

 1.左心耳血栓

 2.左心耳に対する外科的アプローチ

 3.その他の血栓

第6章 人工弁機能不全

A.狭窄

B.逆流

C.弁周囲逆流に対するカテーテル治療

第7章 感染性心内膜炎(IE)

A.自己弁IE

B.人工弁感染(PVE)

C.デバイス関連IE

D.その他のIE

第8章 肥大型心筋症(HCM)

A.HCM

B.外科医が求める経食道心エコー

第9章 冠動脈疾患と心筋梗塞後の合併症

A.左室壁運動の経食道心エコーでの評価

B.心筋梗塞後合併症

第10章 大動脈疾患

A.大動脈解離

B.大動脈プラーク

C.その他の大動脈疾患

第11章 心臓腫瘍

A.良性心臓腫瘍

 1.粘液腫・乳頭状線維弾性腫・Lambl 疣贅

 2.CAT・CCMA

 3.その他の良性腫瘍

B.悪性心臓腫瘍

 1.原発性悪性心臓腫瘍

 2.転移性悪性心臓腫瘍

第12章 先天性心疾患

A.心房中隔欠損(ASD)

B.卵円孔開存(PFO)

C.心室中隔欠損(VSD)

D.房室中隔欠損(AVSD)

E.動脈管開存(PDA)

F.Ebstein病

G.三心房心

H.Fontan術後

I.修正大血管転位

第13章 心機能評価

A.左室,右室の経食道心エコーを使った評価法

第14章 補助循環

A.PVAD(Impella)

B.ECMO(PCPS)

C.VAD

第15章 知っておくべき正常構造物・アーチファクト

A.左上大静脈遺残(PLSVC),および心臓腫瘍と鑑別すべき構造物

B.よく見るアーチファクト

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書籍情報

  • ISBN:9784830619762
  • ページ数:448頁
  • 書籍発行日:2023年3月
  • 電子版発売日:2026年3月17日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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