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- 脳卒中データバンク2026
商品情報
内容
序文
推薦の言葉
私が大学を卒業した1977年,CTの臨床導入が本格化し,脳卒中「診断革命」が始まりました.そして同年,国立循環器病センター(後に「国立循環器病研究センター」に改称)(以下,国循)も開設されました.CT時代の脳卒中診療に興味があった私は,恩師の尾前照雄先生(九州大学第二内科教授,後に国循第3代総長)の勧めで国循でレジデント研修を始め,国内初の脳卒中集中治療室(Stroke Care Unit:SCU)で,急性期脳卒中患者の診療に携わりました.
臨床研究は,1例を分析する「症例報告」から始まります.多数の患者を経験できる国循では「症例集積研究」が容易であったため,病歴室に閉じこもって患者カルテを調べ,分析しました.しかしこの方式では,100 ~ 200例を集めるのがやっとでした.統計解析も手計算で,あるいは初期のパーソナルコンピュータで何時間もかかりました.こうしたアナログ時代の臨床研究が英語論文として採択され,非常に嬉しかったことを覚えています.1980年代後半~ 1990年代前半の話です.
1990年代に多施設共同研究時代が始まります.国内では,1998年に実施された個票を用いた全国急性期脳梗塞登録研究Japan Multicenter Stroke Investigators’ Collaboration(J-MUSIC)が最初です.主任研究者は恩師の山口武典先生(後に国循第6代総長)で,私は事務局を担当しました.約17,000例が全国から集まり,多くの研究成果を上げました.しかしこの研究は,紙ベースでの情報収集によるものでした.
この研究を継承し,かつコンピュータベースの情報収集方式に転換して始まったのが,主任研究者小林祥泰先生(後に島根大学学長)によるJapan Standard Stroke Registry Study(JSSRS)です.デジタル時代の脳卒中データバンク(Japan Stroke Data Bank:JSDB)のスタートです.JSSRS事業は,日本脳卒中協会(Japan Stroke Association:JSA)で管理されていましたが,2015年に国循に管理移管され,名称もJSDBに変更され,当初は私が,次いで後任の豊田一則(国循副院長)が責任者を務めました.これ以降のこと―特に脳卒中・循環器病対策基本法との関係などについては,『脳卒中データバンク2021』や本書にて紹介されています.
本書には,四半世紀の期間に国内の急性期脳卒中診療機関に入院した約30万例の解析結果が示されています.病歴室に通い詰めてカルテ1冊1冊を何時間もかけて調べた45年前の自分を思い出すと,この30万例は途方もない量です.脳卒中患者一人ひとりとその家族,診療担当医や医療スタッフ,そして記録を収集・報告してくれた各施設の分担研究者に対する深い敬意と感謝とを胸に,本書を推薦させていただきます.
2026年2月
公益社団法人日本脳卒中協会 理事長
公益財団法人循環器病研究振興財団 理事長
国立循環器病研究センター 名誉院長
医誠会国際総合病院 病院長
峰松 一夫
『脳卒中データバンク2026』発刊にあたって~四半世紀を過ぎて~
日本脳卒中データバンク(JSDB)事業の端緒は,小林祥泰先生(現:島根大学名誉教授)が1999年に起こした脳卒中急性期患者データベース構築研究です.患者登録は2001年頃から盛んになり,それから今年で25年.この事業の転換点の一つは2015年に国立循環器病研究センター(国循)に運営・管理を移管したことで,それから早くも10年を過ぎました.この25年間に,約5年ごとに登録患者情報を纏めた書籍を発刊し,今回の『脳卒中データバンク2026』が6冊目に当たります.
本書は,2023年末までに入院し登録された294,331例の急性期脳卒中患者の情報を解析した結果を載せています.前書『脳卒中データバンク2021』では,2018年末までに登録された199,599例の情報が含まれていましたが,その後の5年間で10万例近くの患者が登録されており,平均すると年間2万例近くが登録されていることが分かります.仮に国内の新規脳卒中発症者を年間30万例と見積もると全国の患者の7%近くが登録されていることになり,全国の趨勢を予測するにまずまずの症例数と考えます.
本書には,JSDB事業の参加施設の先生方がそれぞれテーマを決めてご執筆された37編と,この5年間に英語原著論文として公表された16編の解説,そして総括的内容の記事も併せて,計58編の脳卒中に関する話題を,非専門家,非医療者の方にも分かりやすく説明しています.これまで四半世紀にわたって本事業を支えて下さった小林祥泰先生と峰松一夫先生(国循名誉院長)にも,ご寄稿いただきました.
本書の発刊にあたって,膨大な臨床情報の提供にご尽力くださった全国の参加施設の医療者と患者・家族の皆様,分担執筆者の先生方,国循オープンイノベーションセンター情報利用促進部と脳血管内科の編集委員会のメンバーに,厚く御礼申し上げます.第2部の解析のもとになるデータセットの作成は,情報利用促進部の宮嵜潤二先生にお願いしました.多大な労務を円滑にこなしてくださり,感謝いたします.
なお,本書の発刊と時期を合わせて,日本脳卒中データバンクは一般社団法人化いたします.より透明性の高い,利用しやすい法人となるよう努めていく所存です.これも転換点の一つとなるかもしれません.今後も引き続き,日本脳卒中データバンクを宜しくお願い申し上げます.
2026年2月
一般社団法人 日本脳卒中データバンク 代表理事
国循脳卒中データバンク2026編集委員会 委員長
国立循環器病研究センター 副院長
豊田 一則
目次
第1部 日本脳卒中データバンク(JSDB)の概要
1.JSDBの最近5年間のデータの総括的な解析結果 (宮嵜潤二,古賀政利)
2.JSDBの臨床情報入力システムと展望 (吉村壮平)
3.JSDBのデータを用いた研究の展望ーAI時代のビッグデータ活用ー (吉江智秀)
特別寄稿1.脳卒中データバンクの歩みと今後の課題 (小林祥泰)
特別寄稿2.脳卒中・循環器病対策基本法と日本脳卒中データバンク(JSDB)のその後 (峰松一夫)
第2部 JSDBの大規模データが示す脳卒中診療の実態
Ⅰ.脳卒中全般
1.病型分類ごとの臨床的特徴 (鴨打正浩)
2.脳卒中と年齢の傾向-発症年齢を中心に- (永田栄一郎,宮嵜潤二,柴田健雄)
3.脳卒中と性差 (有竹 洵,長井 篤)
4.脳卒中のリスク因子 (山田健太郎)
5.脳卒中の季節変動 (吉江智秀)
6.病院前救護の実態 (山本良央,城倉 健)
7.急性期リハビリテーションの現状 (佐々木正弘,境 梨沙)
8.入院中合併症 (笠井陽介,丸山路之,稲葉 真)
9.退院・転院先 (寺﨑修司)
10.脳卒中と栄養管理 (片山正輝,宮嵜潤二,釜本 大,柴田 護)
Ⅱ.脳梗塞・TIA
1.病型分類ごとの臨床的特徴 (徳岡健太郎,野川 茂)
2.虚血性脳卒中特有のリスク因子 (梅村敏隆)
3.心疾患,心房細動(AF),CHADS2 (板橋 亮)
4.奇異性脳塞栓症の現状と転帰 (五十嵐晴紀,竹川英宏)
5.その他の脳梗塞とbranch atheromatous disease(BAD)の臨床的特徴 (足立智英)
6.潜因性脳梗塞(cryptogenic stroke)の実態 (安東孝記,吉江智秀)
7.Tissue-based definitionに基づく一過性脳虚血発作の臨床症状と転帰 (祢津智久,丸山博文)
8.NIHSS, mRSの分布と関連因子 (永金義成)
9.頭蓋内および頭蓋外動脈狭窄を有する虚血性脳血管障害例の特徴 (山田丈弘)
10.血管内治療(EVT)の実態 (梅村武部,波多野武人)
11.脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)における抗血小板療法 (半田 明)
12.急性期脳梗塞・脳出血における発症前および退院時抗凝固療法の実態 (八木田佳樹,大山直紀)
13.若年性脳梗塞の臨床的特徴 (尾原知行)
14.脳梗塞の外科治療 (坂井信幸,坂井千秋)
15.増悪と再発の予測因子 (杉森 宏)
16.入院中死亡症例 (齋藤拓也,矢澤由加子)
17.機械学習による転帰予測 (吉村壮平)
Ⅲ.脳出血
1.高血圧性脳出血の実態と予後不良因子および出血部位別の特徴 (岡内正信,三宅啓介)
2.入院時血圧と出血部位および急性期降圧治療の実態 (小川敦史,三輪佳織)
3.高血圧以外の原因-血管異常 (設樂智史,吉田和道)
4.脳アミロイド血管症関連脳出血の臨床的特徴 (三輪佳織)
5.JSDBデータを用いた急性期脳出血患者に対する止血治療候補患者の臨床転帰-FASTEST 試験登録基準に準じて- (滝川浩平,吉村壮平)
6.脳出血の外科治療 (杉本至健,川野伶緒,石原秀行)
Ⅳ.くも膜下出血
1.脳動脈瘤の部位と形態 (藤村 幹,宮嵜潤二)
2.くも膜下出血に対する内科的治療 (園田和隆)
3.くも膜下出血の外科治療 (渡部寿一)
4.くも膜下出血後の脳血管攣縮と遅発性脳虚血 (細貝昌弘,堀江信貴,井川房夫)
第3部 JSDBを用いた最近の研究
1.BMIが虚血性脳卒中および出血性脳卒中の転帰に及ぼす臨床的影響 (三輪佳織)
2.飲酒と脳卒中重症度との関係 (汐月博之,西條泰明,大櫛陽一,小林祥泰)
3.悪性腫瘍合併脳卒中 (吉本武史)
4.来院時間帯が脳卒中患者の機能予後に与える影響 (大前智也,柳澤俊晴)
5.20年間の脳卒中重症度と転帰の推移 (豊田一則)
6.腎機能低下における脳梗塞の病型と転帰 (三輪佳織)
7.心房細動関連脳梗塞ー重症度と転帰の長期推移 (豊田一則)
8.発症時刻不明脳梗塞の特徴と転帰 (和田晋一)
9.後方循環系脳梗塞の予後 (小柳正臣,波多野武人,中井陸運,小倉健紀)
10.動脈解離による脳卒中患者の性状,発症危険因子と重症化因子 (柏原健一)
11.静注血栓溶解療法(IVT)を受けた脳梗塞患者の臨床転帰の長期的変化 (石上晃子)
12.脳梗塞重症度別の再灌流療法の施行率と転帰の推移 (髙下純平)
13.抗血栓薬内服中の脳出血患者の重症度と転帰 (新垣慶人)
14.Xa阻害薬内服中の頭蓋内出血の特徴と転帰 (和田晋一)
15.くも膜下出血(SAH)患者の年齢と転帰 (井川房夫)
16.くも膜下出血(SAH)患者の転帰予測モデルの検証 (井川房夫)
JSDB 理事会・運営委員会・事務局,国循編集委員会
日本脳卒中データバンク参加施設
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書籍情報
- ISBN:9784521751733
- ページ数:304頁
- 書籍発行日:2026年3月
- 電子版発売日:2026年4月15日
- 判:AB判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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