診断エラーを防ぐ―小児科の落とし穴

  • ページ数 : 296頁
  • 電子版発売日 : 2026年4月25日
¥4,400(税込)
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商品情報

内容

迷いのない診断,日常診療に潜む誤診の回避体験を読んで積み上げる
臨床は知識と経験に基づく連続したタスクであり,状況によって変化する.そのため正確な診断であっても常に誤診のリスクが付きまとう.診断エラーを回避するため,コミュニケーション技術に基づく問診,身体診察,検査,家族説明,鑑別疾患,診断のステップを通して,落とし穴の回避術をシステマティックに展開.教科書にはないピットフォール,ニアミスだから記憶に刻まれる.

序文


小児科の落とし穴に光を照らしてみよう

人はなぜ,本を読み,映画を見るのだろう.落語を聞いたり,お芝居を見に行くのもわくわくする体験である.それらを「面白い」と思うのは,そこに強烈な,おそらく自分は一生かかっても体験できないような「人生」があるからではないだろうか.確かに自分の人生も面白いものではあるが,一方で「限り」もある.自分とは全く違った「人生」が上記の芸術にはあり,作者や演出家の見事なドラマツルギーに嵌まりながら,別の人生を体験できることが面白いのだと思う.

さて,診断に関しても同じことが言える.自分が診断したことがある実臨床での経験は有限である.だからこそ,教科書や論文を読むことで,あたかも自分が経験したことのように知識が拡がっていく.インターネット上の「まとめサイト」を読むのもタイパが良い.ただ,基本的に教科書に書かれているのは「成功事例」だ.この診断のためにはこの所見をとり,この検査をして,陽性であれば診断できるという1本のレールに基づかれて書いてある.しかしそれだけでは,そのレールに乗れなかった話はわからない.それなのに分かったつもりになっていると,レールを外れたときに対応できない.それでは,その勉強は別の「人生」を歩むほどの体験にはほど遠かったと言えるし,レールを外れたままになると診断エラーに繋がっていく可能性が高くなる.

誰しも,自分で経験したことに関しては,心に刻み込まれる.一度経験した診断エラーは心に刻み込まれ,次の診断エラーを防ぐことに貢献する.しかし,初めて出会った症例では,前述のような勉強だけでは心に刻み込まれないため,正しい診断にその知識を生かすことができないことが多い.やはり一番心に残るのは,一緒に働いている同僚の話だ.宴会の席で,先輩がボソボソと,自分が若かったときの失敗談を話してくださったことが心に残ったりする.「ああ,こんなすごい先輩でも診断エラーをしたんだ」と心に残る.それこそが,別の「人生」として心に刻み込まれるのである.その先輩が経験したことを自分が経験したときに,まるで以前経験したかのように対応できるのである.心に刻み込まれるのは一定の温度感が必要なのだ.この本では,国立成育医療研究センター総合診療科診療部長の永井章先生のアイディアで,さまざまな「クリニカル・パール」が散りばめられている.それらはすべて,ピットフォール,つまり「小児科の落とし穴」に光を照らしたものであり,さまざまな病態における小児の診断エラーを防ぐことを目指した話が集められている.これらの内容は温度感をもって疑似体験できるものであり,御執筆いただいた,たくさんの国立成育医療研究センターの先生方には感謝しかない.

米国では年間4万から8万人が診断エラーのために死亡しているとされる.それにもかかわらず,ある本邦の調査によれば,「診断エラーをしたことがある」と答えた医師は6割で,残りの4割の医師は「診断エラーをしたことがない」「わからない」と答えている.そう答えた医師はきちんと向き合っていないだけなのではないだろうか.自身の診断エラーを真摯に振り返り,そこに光を当てて次に生かすことで,診断エラーを減らしたり,対応できたりするようになる.この本では自分で診断エラーを経験する前に,あたかも他人の人生を経験するように学びが深まる.自分で同じ診断エラーを経験した後に読めば,さらなる学びにも繋がっていく.

この本を通じて,全国の小児科医と一緒に,小児の診断エラーへ向き合ってみたい.そして,小児の診断エラーを予防するための戦略やシステムの改善につなげたいと考えている.


2026年1月

窪田 満(国立成育医療研究センター総合診療部 統括部長)




正しく診断するために努めていくべきこと―本書は症候と診断エラーに基盤を置いた診断手引書でありパール集でもある

本書の構想は,もともとは,大それたことではあるが,退官が近づき私自身がこれまでの臨床で学ばせていただいた「クリニカル・パール的なものを」をまとめたいと,中山書店編集部の益子様にご相談したことが始まりであった.その小さい思いに,平素から多くの指導をいただいている国立成育医療研究センター総合診療部統括部長の窪田満先生が深く共感してくださり,多くのご教示をいただく中で,プロジェクトは大きく動き出したという経緯であった.その結果,当センターの総力を結集した形で「小児の診断エラー」に特化した実践書として,本書を世に送り出すことができたことは本当にありがたいことだと編者の一人として深く感謝している次第である.

私自身,小児科医になって以来,的確に診断を下せる医師に強い憧れを抱き研鑽を積んできた面がある.また長年,小児総合診療の現場に身を置く中で痛感したのは,「正しい診断」の持つ重みである.つまり診断とは,目の前の患者さんの苦痛を取り除き,回復へと導くための「具体的な道標を示す」に他ならないということである.その道標が正しい目的地に到達できる精度を高めるためには,知識と経験を積み,標準的医療を愚直に実践する基礎的臨床力と言えるものが不可欠であることは申し上げるまでもない.

しかし,臨床の現場ではそれと並んで大切なこともあることを学んだ.それは,診断の各プロセスの「フレームワーク(枠組み)」を常に明確に意識し,思考のプロセスを構造化することである.つまり主訴を正確に捉え,そこからどのようなロードマップを描くべきかを明確な枠組みを持って考えること.同時に,正しい診断には常に「診断エラー」と隣り合わせであるという事実も忘れてはならないものであろう.「診断を下した瞬間から,エラーの可能性が始まっている」という危機感をも持って診療を行うことが極めて重要であろう.

また診断は,子どもたちの症状を癒やすための「手段」であるとも言え,診断エラーを最小限に抑えるためには,診断を「動き」としてイメージすることもとても重要である.診断を行った段階で,次の一手,そしてその次の一手まで考えていく.換言すると主訴から始まるアウトラインを明確にし,臨床経過を時間軸で捉える視点も欠かせないということである.そしてどれほど優れたフレームワークがあっても,盲信は禁物である.病状が改善しないとき,あるいはご家族の納得が得られていないと感じるとき,速やかに既存のフレームを見直し,新たな視点へと移行する柔軟性も必要である.患者さんの病状の推移を凝視し,ご家族の表情や言葉から違和感を汲み取ること,そして自分の描いたイメージが実際と乖離していないか,常に謙虚に,かつ丁寧に問い直すという姿勢が求められよう.医学に対しても,人に対しても,どこまでも「誠実」であること,これこそが本書の根底に流れる哲学であろう.こうしたことを踏まえて私たちが日頃から全幅の信頼を寄せている各先生方に執筆をご依頼させていただき,「診断エラーをいかに防ぐか」という視点から,多くの有益なフレームワークと,実践的なクリニカル・パールを提示していただくことができた.

本書を通じて読者の皆様が新たな視点を得,それが診断エラーの回避につながり,一人でも多くの患者さんの笑顔に寄与することができれば,編者の一人としてこれ以上の喜びはない.


2026年1月

永井 章(国立成育医療研究センター総合診療科 診療部長)

目次

総論 診断エラーに陥らないための光

診断エラーの穴を照らす光となるもの:基本的戦略 (永井 章)

診断エラーに陥らないための光①診察姿勢 (窪田 満)

診断エラーに陥らないための光②問診のエラー (永井 章)

診断エラーに陥らないための光③身体所見 (前川貴伸)

診断エラーに陥らないための光④血液・尿検査 (窪田 満)

診断エラーに陥らないための光⑤微生物学的検査 (庄司健介)

各論1 小児総合診療

保護者とのコミュニケーション (余谷暢之)

育児不安への支援 (堀川美和子)

子ども虐待の疑い (中尾 寛)

5歳児健康診査 (小坂百合香)

Down症候群の管理 (島袋林秀,青木美紀子)

不登校 (山元(轡田)志穂)

ICUへの転棟,ICUからの転棟 (酒井伶奈)

在宅重症児の病状変化 (伊東 藍)

在宅重症児の家族の負担感 (中村知夫)

オンラインを用いたケア (千先園子)

遺伝子診断の臨床応用 (蘇 哲民)

各論2 小児救急医療

救急外来での家族説明 (天笠俊介)

他院との電話でのやりとり (大西志麻)

意識障害 (森脇太郎)

急性呼吸障害 (坪倉 慎)

頭部外傷 (富田慶一)

誤飲,誤嚥 (多賀谷貴史)

自殺企図・オーバードーズ (内田佳子)

不機嫌な乳児 (岡嶋貴惠)

RRS(Rapid Response System) (益田博司)

各論3 中枢神経系疾患と発達

神経診察 (早川 格)

てんかん診療(重積時,慢性管理時) (阿部裕一)

急性脳症・脳炎,髄膜炎 (相原健志)

低緊張性発達遅滞 (髙橋達也,早川 格)

繰り返す頭痛 (永井 章)

神経発達症 (岡 牧郎)

各論4 胸部疾患

胸痛 (浦田 晋)

心雑音 (三﨑泰志)

川崎病 (益田博司)

反復性喘鳴 (肥沼悟郎)

各論5 腹部疾患

繰り返す嘔吐症 (柘植朋子)

下痢・血便 (竹内一朗)

腹痛・急性腹症 (藤雄木亨真,米田光宏)

便秘症 (清水泰岳)

偶然発見された肝機能障害 (伊藤玲子)

各論6 免疫・アレルギー疾患

反復性発熱 (河合利尚)

関節炎 (小椋雅夫)

アトピー性皮膚炎 (豊國賢治,福家辰樹)

薬物有害反応(ADR) (山本貴和子,平井聖子,萩野紘平)

各論7 血液・リンパ節疾患

貧血 (井口晶裕)

出血傾向 (坂本 淳)

リンパ節腫大(悪性か良性か) (湊 苑子)

脳腫瘍 (寺島慶太)

各論8 腎疾患・電解質異常

血尿・蛋白尿 (亀井宏一)

夜尿症と尿路感染症 (二木良平)

急性腎障害 (西 健太朗)

電解質異常 (加藤宏樹)

各論9 内分泌・代謝疾患

糖尿病性昏睡 (内木康博)

低身長,体重増加不良 (吉井啓介)

高アンモニア血症,代謝性アシドーシス (飯島弘之)

各論10 皮膚・耳・眼の疾患

蕁麻疹 (吉田和恵)

小児難聴 (守本倫子)

斜視・眼振 (仁科幸子)


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書籍情報

  • ISBN:9784521751740
  • ページ数:296頁
  • 電子版発売日:2026年4月25日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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