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- 開腹手術を学びなおす 自律神経温存広汎子宮全摘術・傍大動脈リンパ節郭清
商品情報
内容
序文
巻頭の辞
婦人科がん手術は,腫瘍の根治性を追求するのみならず,出血の制御,尿路・腸管・神経など周辺臓器の保護,さらには術後機能の温存までを視野に収めた,高度で繊細な外科医療である。なかでも開腹手術は,術者が自らの眼で術野を見極め,手指の触覚をもって組織の性状や緊張を感じ取りながら,立体的な解剖学的理解のもとに進める,婦人科腫瘍外科の基盤となる術式である。
近年,腹腔鏡手術やロボット支援手術は大きく発展し,婦人科領域においても重要な位置を占めるに至った。しかし,局所進行例,巨大腫瘍,周囲臓器浸潤例,再発例,あるいは高度癒着や予期せぬ出血への対応を要する症例においては,開腹手術がなお不可欠である。また,開腹手術を通じて培われる解剖の把握,層を見極める眼,組織に適切な緊張を与える技術,危険を察知し回避する判断力は,あらゆる婦人科がん手術に通底する基本でもある。開腹手術を学ぶことは,単に一術式を修得することではなく,婦人科腫瘍外科医としての思考と技術の根幹を培うことにほかならない。
本書は,婦人科がん開腹手術を志す若い医師,日々の診療のなかで改めて基本を見直したいと考える術者,そして後進の育成に携わる指導者の先生方に向けてまとめたものである。術式の手順を示すにとどまらず,「何を指標に進むのか」「どの層に入るべきか」「どこに危険が潜むのか」「なぜその操作を選択するのか」といった,術中判断の拠り所をできる限り明示することに努めた。手術とは単なる操作の連続ではなく,解剖学的理解と経験に裏打ちされた判断の積み重ねである。本書がその一端を伝えるものとなれば幸いである。
また本書では,読者の理解を助けるため,文章による解説に加えて,実際の術野を示す動画,重要局面を捉えた静止画,さらに解剖学的構築や手技の要点を整理したスケッチを随所に盛り込んだ。手術手技の理解には,言葉のみならず,術野の変化や剥離層の連続性,術者と助手の視点の違いを視覚的に把握することが重要である。これらが,読者にとって術中の情景を具体的に思い描きながら学ぶ一助となることを願っている。
私自身,多くの症例に向き合うなかで,手術の本質は単なる切除範囲の拡大ではなく,根治性,機能温存,そして安全性の調和にあることを学んできた。病変を確実に切除することはもとより重要であるが,同時に,患者が術後もその人らしい生活を営み得るよう配慮することこそ,婦人科がん手術に携わる者の責務であると考えている。本書が,より安全で質の高い婦人科がん手術の実践に資することを心より願う。
本書の刊行に当たり,長年にわたりご指導を賜った恩師の先生方に,深甚なる感謝の意を表したい。諸先生方から学んだのは,手技そのもののみならず,解剖を尊び,病態を見極め,患者に真摯に向き合う外科医としての姿勢であった。また,これまで診療の場において多くを学ばせてくださった患者の皆様に,心より御礼申し上げる。一例一例の手術が,医師としての謙虚さと責任の重さを私に教えてくださった。さらに,本書において助手の立場から貴重なご執筆を賜り,内容の深化に大きく寄与してくださった棚瀬康仁先生に,深く感謝申し上げる。術者とは異なる視座からの記述は,本書に豊かな奥行きを与え,読者にとっても実践的理解の大きな助けとなるものと確信している。本書の企画,編集,刊行にご尽力くださったメジカルビュー社の皆様にも,衷心より感謝申し上げる。皆様のご高配なくして,本書をこのような形で世に問うことはできなかった。そして最後に,本書の完成は,ひとえに家族の理解と支えの賜物である。深く感謝する。
2026年4月
前国立がん研究センター中央病院婦人腫瘍科科長
加藤友康
目次
第1章 婦人科がん手術のために必要な基礎知識
1 子宮,卵巣,腟の基本的解剖所見
2 骨盤内後腹膜の層構造
3 尿管下腹神経筋膜を軸とした骨盤内の腔間隙靱帯の位置関係
第2章 手術の概略
1 広汎子宮全摘術
1 開腹,腹腔内精査
2 後腹膜腔を展開
3 膀胱剥離
4 右骨盤リンパ節郭清
5 基靱帯切断
6 直腸腟間腔を展開
7 膀胱子宮靱帯前層
8 仙骨子宮/直腸腟靱帯を切断
9 膀胱子宮靱帯後層と腟傍組織を分離してそれぞれ切断
10 腟管の切断,腟断端縫合
11 ドレーン留置,後腹膜縫合,閉腹
2 傍大動脈リンパ節郭清術
1 開腹 広域正中切開
2 腸間膜切開
3 下大静脈周囲リンパ節郭清
4 左傍大動脈リンパ節郭清
5 大動静脈間リンパ節郭清
6 傍大動脈高位リンパ節の郭清
7 傍大動脈低位リンパ節郭清
8 閉腹
第3章 広汎子宮全摘術:美しい手術のために
1 膀胱子宮靱帯前層の処理
1 前層処理の下準備(“前奏”)
2 尿管トンネル入り口
3 トンネル入口部開放後
4 尿管ころがし
5 三角陥凹部
2 直腸腟間腔の展開
1 ダグラス窩腹膜切開
2 直腸腟間腔の展開
3 直腸腟間腔の壁内側切開
第4章 広汎子宮全摘術:機能を温存するために
神経温存のためのポイント
1 膀胱機能に関与する神経
2 広汎子宮全摘術中に損傷を受ける自律神経
3 自律神経の温存レベル
4 自律神経温存広汎子宮全摘術の指標
5 実際の手順
6 各自律神経の温存方法
7 Meigs 術式と岡林術式の違い
8 腟傍組織,膀胱子宮靱帯後層の境界を見極める
9 膀胱頸部に向かう膀胱枝の温存
第5章 広汎子宮全摘術:予後を追求するための分岐点
予後を追求するための分岐点
1 治療戦略,攻略法
2 膀胱剥離が可能かどうか
3 術中に広汎子宮全摘術を遂行すべきか否か検討する場合
第6章 傍大動脈リンパ節郭清:美しい手術のために
膜に沿った術野の展開
1 卵巣のリンパ流
2 右側傍大動脈リンパ節郭清
3 左側傍大動脈リンパ節郭清
4 II/III 間隙突破法
第7章 傍大動脈リンパ節郭清:機能を温存するために
腸閉塞の予防法
1 術後合併症の予防法
2 術後乳糜漏の予防法
3 腸閉塞の予防法
4 リンパ浮腫,リンパ嚢腫
第8章 傍大動脈リンパ節郭清:予後を追求するための分岐点
止血:鋭的かつ系統的リンパ節郭清
1 治療的リンパ節郭清の特徴
2 傍大動脈周辺のリンパ流の膜層構造
3 症例
4 症例
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書籍情報
- ISBN:9784758323628
- ページ数:240頁
- 書籍発行日:2026年6月
- 電子版発売日:2026年5月7日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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