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- 解剖生理がわかる 全身をめぐる血管系の旅
商品情報
内容
序文
序文
私たちの体の中には,無数の血管網が張りめぐらされています。すべての血管をつなぎ合わせると,その全長は約10万kmにも及び,地球の赤道をおよそ2周半するといわれています。まさに,小宇宙を思わせる壮大なスケールです。
心臓から送り出された血液は,動脈・毛細血管・静脈という水路を通って全身をめぐり,臓器に酸素や栄養を届け,二酸化炭素や老廃物を回収しながら再び心臓へと戻ってきます。この循環は,生きている限り一瞬たりとも止まることはありません。
筆者がかつて観た映画『ミクロの決死圏』では,脳出血で昏睡状態に陥った科学者を救うため,細菌サイズにミクロ化した医療チームが潜航艇プロテウス号に乗り込み,体内を冒険しながら血管内から治療に挑む姿が描かれていました。人体の奥深くに広がる世界に,胸を躍らせた記憶があります。
解剖生理学を学び始めたばかりの人にとって,血管系は名称が多く,走行も複雑で,丸暗記しようとして挫折しがちな分野です。
本書ではそれらを単なる知識の羅列としてではなく,血管を水路に見立て,赤血球というカヌーに乗った酸素が全身を旅する物語として描いています。心臓を出発点に,動脈や静脈を旅しながら脳,肺,腎臓,肝臓といった臓器に立ち寄り,それぞれの臓器に至る道筋と,到着地が担う働きを確かめていきます。
血管系は,脈拍触知・血圧測定・採血・点滴・投薬といった日常的な臨床手技から,カテーテル検査,外科手術に至るまで欠かせない存在です。血管系を理解することは,臨床を読み解く確かな武器になるでしょう。本書を通して,読者の皆さんがワクワクしながら血管の旅を楽しみ,全身の臓器とそれらをつなぐ血管の広がりを3次元的にイメージできるようになることを願っています。
本書の執筆にあたり,これまでご指導,ご助言をくださった多くの方々,とりわけ解剖学教育のメンターであり,本書の編集をお引き受けいただいた松村讓兒先生,本書の校正にご協力いただいた上野仁之先生に心より感謝申し上げます。また,いつも温かく見守ってくれている主人と息子,そして最後までたゆまず支援をいただいた編集部の野口真一氏にも,この場をお借りして深く御礼申し上げます。
さあ,心臓の拍動に身をゆだね,血管系の旅へ出発しましょう。
2026年4月
長瀬 美樹
目次
1章 血管の旅に出る前に
1 生命溢れる血管の旅へ
2 動脈と静脈の経路
3 動脈は酸素が行き渡る旅
4 旅はちょうどいい圧で
5 重力には逆らえない血液
6 血漿の流れに乗ってさまざまな物質の旅
7 旅の経路の造り? 血管壁について
8 旅の経路を整える
交感神経は平滑筋細胞を縮めて道を狭める
圧に従って拡がる大動脈
9 毛細血管の旅
細い旅路をのんびりゆく
ジワリとしみ出す毛細血管の旅
2章 動脈をめぐる旅
1 旅のはじまり〜左心房を出発地として
2 出発と滞留
3 左心室で旅に弾みをつけて
4 旅の経路がつまり気味だと
5 大動脈弓
脳と腕に向かう3本の分かれ道
脳,腕,胸,背部に向かう旅の分岐点
6 頭部,顔面,頚部を潤す外頚動脈の旅
7 鎖骨下動脈から上肢に向かう旅
鎖骨下動脈の狭い旅路
内胸動脈の細く長い旅
筋の間をゆく上腕動脈の旅
肘窩を抜けたら橈尺の分かれ道
8 大動脈の急流をやわらげる
9 最初の分かれ道,いくつかの分かれ道
肋骨に沿って旅立つ肋間動脈
食道の蠕動を支える食道動脈
膵と十二指腸の間を抜ける上腸間膜動脈(腸間膜の間をゆく)
精巣・卵巣動脈は意外に早く分かれる
10 大動脈から分かれて骨盤と下肢への旅
大動脈から総腸骨動脈,外腸骨動脈へ
内腸骨動脈から分岐するいくつかの血管
鼠径部を抜ければ
筋の間を下り膝窩を抜けて
3章 静脈をめぐる旅
1 酸素と二酸化炭素の旅
酸素はヘモグロビンに乗って
運動で温度が上がって酸素の旅立ち
末梢で酸素を渡したら帰途のはじまり
二酸化炭素は3つの形で静脈をゆく
2 上肢の皮静脈の旅
見える?見えない?皮静脈の旅
表皮すれすれをゆく橈側皮静脈の旅
上腕二頭筋の脇をゆく尺側皮静脈の旅
3 上大静脈,右心房に向けて下行する旅
左右腕頭静脈に合流する頚部の静脈
いよいよ右心房に帰る
4 下肢の静脈の旅
足背,内果からたどる大伏在静脈の旅
筋で押し上げられる深静脈の旅
動き出せばめぐる血液の旅
5 下大静脈を上行する旅
左の精巣(卵巣)静脈は腎静脈にまず入る
腎臓からエリスロポエチンを乗せて
副腎からアドレナリンやステロイドホルモンを乗せて
6 大通りを避けて上大静脈に注ぐ奇静脈の旅
4章 それぞれの臓器をめぐる旅
1 心臓をめぐる旅
大動脈弁を出たらすぐに横道へ
冠動脈に向かう旅は左心室が膨らんだときに始まる
それぞれの枝がたどり着く心臓壁
静脈血は冠状静脈洞に集まって
2 脳・脊髄をめぐる旅
内頚動脈から脳に向かう旅
椎骨動脈から脳に向かう旅(横突孔のトンネルを抜けて)
ウィリス動脈輪で旅は一度合流するけど
脳の血管の旅はマイペースで
大脳基底核に向かう細く険しい道~脳出血が起こりやすい!?
中大脳動脈の旅はどこに向かう?
前大脳動脈の旅はどこに向かう?
後大脳動脈の旅はどこに向かう?
後大脳動脈から一山越えれば中大脳動脈(側副循環の道)
動脈の分かれ道は要注意
くも膜下腔をめぐる動脈の旅
脊髄をめぐる血管の旅
脳の静脈をめぐる旅
硬膜の中をめぐる旅
脳表面の静脈の旅
ガレン大静脈に集まる脳深部からの静脈の旅
下垂体から旅立つホルモンたち
3 肺をめぐる旅
静脈血がゆく肺動脈の旅
空気に満ちた珠玉の肺胞へ
肺への経路は混み合わない
肺の上の区域への旅は道がない?!
肺胞の周りをめぐる毛細血管の旅
二酸化炭素を吐き出して安定へ
大事なお土産を抱えていざ左心房へ
4 腎臓をめぐる旅
腎血管の旅路をたどって
糸球体からはじまる尿をつくる旅
腎臓の血管の旅は慌てず遅れず
近位尿細管ですぐまた血管の旅に舞い戻る
尿細管にからまる直血管の旅
遠位尿細管と集合管でカリウムの排泄へ
水素を捨てて酸性をやわらげる
5 肝臓をめぐる旅
大動脈から肝動脈へ酸素を運ぶ旅
門脈から栄養を乗せて
門脈から下大静脈に至る旅
ラパポートの肝細葉とZone分類
門脈辺りの肝細胞でグリコーゲンを貯める,糖をつくる
門脈辺りの肝細胞でアンモニアを尿素に
中心静脈辺りの肝細胞で酔いを覚ます
門脈辺りの肝細胞で脂肪を壊す
血液の旅を支えるアルブミン
6 脾臓をめぐる旅
脾臓は血流の豊富な臓器である
赤脾髄(血液濾過装置)と白脾髄(リンパ組織)
脾動脈から筆毛動脈に,莢毛細血管でいよいよマクロファージに
ヘモグロビンはビリルビンになって門脈をたどる旅へ
7 副腎をめぐる旅
副腎は血流豊富~小さな臓器がつくる大きな流れ
緊急時に旅立つアドレナリン
副腎皮質ステロイドがめぐる旅
8 皮膚のすぐ下をゆく血管の旅
真皮の血管をめぐる
暑いときの皮膚の血管
5章 胎盤と胎児をめぐる血管の旅
1 母からの「贈り物」がめぐる旅
2 胎盤の中で母体の血液に浸る
3 胎児をめぐる血管の旅
胎児のときにしかできない血管の旅
出生後に変化する血管の旅路
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書籍情報
- ISBN:9784758322935
- ページ数:224頁
- 書籍発行日:2026年4月
- 電子版発売日:2026年5月9日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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