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- プレコンから授乳期・産後までのくすりの使い方
商品情報
内容
妊娠前(プレコン)から産後・授乳期までの期間全体を通したシームレスな薬物療法の考え方を,ガイドラインや文献に基づいて詳しく解説!
序文
編集の序
日本の周産期医療は,今,大きな転換期にあると常日頃より感じています。少子化が加速し,年間出生数がすでに70万人を割り込もうとしていることは皆様ご存じのとおりです。一方で,晩婚化を背景として母体年齢は上昇し,内科的な合併症や産科的リスクを抱える妊婦が増加しています。
このような社会的な背景から必然的に,妊娠・授乳中に薬物療法を必要とする母親も増加しています。その一方で,妊娠中に服薬した母親の8割以上が不安を感じていたという報告もあるほどで,多くの母親やその家族は薬物療法に対して心配や悩みを抱えています。しかし,母親やその家族だけでなく医療従事者もまた,情報の少なさに苦慮しているのではないかと思います。こうした課題に対し,本書がコンセプトとしたのは「点ではなく,シームレスな線の情報」と「ベネフィット・リスクバランスの根拠となる情報」です。
患者さんは,妊娠前から妊娠中,出産,そして授乳を行いながら(場合によっては次の妊娠を計画する)産後まで,途切れることのない一連の流れを体験します。しかし,既存の情報の多くは「妊娠中」や「授乳中」といった特定の時点を切り取った,点での情報提供にならざるをえませんでした。本書は,プレコンセプションケアから産後までを1つの地続きの流れとしてとらえ,時間の経過に沿ったシームレスなケアを実現するための構成を意識しました。
また,薬物療法の可否を判断する際に欠かせないのがベネフィット・リスクバランスの評価です。その評価においては,児への悪影響の可能性としての「リスク」ばかりに目が向きがちですが,本来,治療を行うことで得られる母子の健康という「ベネフィット」とのバランスに基づいて判断をすべきです。その「ベネフィット」を正確に評価するためには,対象となる疾患について適切に把握し,最新の診療ガイドラインに基づいた標準的治療への深い理解が欠かせないはずです。そこで本書では,各領域の第一線で活躍する専門医の方々に,診療ガイドラインの要点を押さえた執筆をお願いしました。
本書が,日々葛藤しながらも最善の治療を模索するすべての医療従事者の灯火となり,患者さんとその家族が安心して新しい命を迎えられる一助となることを切に願っております。
2026年3月
小原 拓
酒井隆全
目次
1章 総論
1 適切な周産期薬物治療・カウンセリングの提供に向けて 小原 拓・酒井隆全
① 周産期医療を取り巻く急激な社会構造の変化
② 臨床現場における「不安」と「エビデンスの欠如」
③ 日本独自の課題:添付文書と国際基準の乖離
④ カウンセリング体制の広がりとエビデンスの創出
⑤ 本書の構成軸:専門知の統合とシームレスなケア
⑥ おわりに
2 産科診療の基礎 鈴木俊治
① 産科診療で留意するポイント
② 妊娠中のからだの変化のポイント
③ 産科診療の流れ
④ 産科診療/産科学とは
3 妊娠中・授乳中の使用に注意が必要な医薬品 酒井隆全
① 本項の位置づけ
② 妊娠中に回避・厳重管理すべき医薬品
③ 授乳中に注意を要する医薬品
④ まとめ
4 周産期薬物治療のベネフィット・リスクバランスの考え方 小原 拓
① 周産期医療における薬物治療の現状
② ベネフィット・リスクバランスの評価
③ おわりに
5 周産期薬物療法の情報源 森 千与
① 周産期薬物療法にかかわる情報源
2章 妊娠前の医薬品使用
1 プレコンセプションケアの重要性 三戸麻子
① プレコンセプションケアとは
② プレコンセプションケアの実際
③ 持病のある人のプレコンセプションケア
④『 プレコンセプションケア医療者用マニュアル』
2 プレコンセプションケアにおける婦人科疾患の重要性 柴田綾子
① 子宮頸がん・子宮頸部異形成
② 子宮筋腫
③ 子宮内膜症・子宮腺筋症
④ 卵巣腫瘍
⑤ まとめ
3 妊娠計画時の薬剤選択 宋 美玄
① はじめに
② ベースラインリスクを理解したうえでの薬剤情報の評価
③ 薬剤の胎盤通過と胎児曝露
④ 妊娠時期による影響の違い
⑤ 長期間体内に残留する薬剤への注意
⑥ 慢性疾患における具体的調整方法と薬剤選択
⑦ 妊娠期薬剤リスク評価に用いられる主な国際基準
⑧ 医薬品添付文書の取り扱いと臨床判断
⑨ SDMの重要性
3章 妊娠中の医薬品使用
1 妊娠と薬物動態の変化 刈込 博
① はじめに
② 胎盤
③ 胎児薬物療法
④ まとめ
2 妊娠初期の薬剤使用におけるベネフィット・リスク評価 山根律子
① はじめに
② 妊娠時期と薬剤の影響
③ 妊娠初期のベネフィット・リスク評価
④ ベネフィット・リスク評価の根拠
⑤ 総合的評価の意義
3 妊娠中期・末期の薬剤使用におけるベネフィット・リスク評価 岩佐千尋
① 妊娠中期・末期における薬剤使用の意義と課題
② 妊娠中期の薬剤使用のベネフィット・リスク評価
③ 妊娠末期の薬剤使用のベネフィット・リスク評価
④ 妊娠中期・末期における薬剤選択の判断軸
⑤ まとめ
4 妊娠中に使用可能な薬剤 中島 研
① 法的な規制
② ガイドライン
③ 妊娠と薬情報センター
④ まとめ
4章 授乳中の医薬品使用
1 授乳と薬物母乳移行の基礎 登美斉俊
① はじめに
② 乳腺を介した乳汁の産生と薬物移行
③ 受動輸送
④ 単純拡散を介した乳汁移行に影響する因子
⑤ 能動輸送
⑥ トランスサイトーシス
⑦ 相対的乳児投与量
2 授乳中の薬剤使用のベネフィット・リスク評価 植松和子
① はじめに
② 母乳育児の重要性
③ 産後の母児に対する医薬品の有効性
④ 母乳育児中の医薬品の安全性
⑤ 母乳育児に影響する母児の所見
⑥ 授乳中慎重に検討すべき医薬品の情報
⑦ おわりに
3 授乳中に使用可能な薬剤 齊藤順平
① はじめに
②「 授乳中に使用可能な薬剤」とは
③ 医療用医薬品添付文書:新記載要領の記載の活用
④ おわりに
5章 疾患別各論
1 本章を読むうえでの補足事項 小原 拓・酒井隆全
① 本章における薬剤の選定
② 本章における医薬品情報の示し方
2-A高血圧:ガイドラインに基づく疾患の概要と治療方針 目時弘仁
① 疾患の概要
② 薬物療法
③ 妊娠段階ごとの注意点
2-B高血圧:降圧薬 小原 拓
① 周産期における降圧薬7種の薬理と安全性
3-A糖尿病:ガイドラインに基づく疾患の概要と治療方針 内倉友香・杉山 隆
① 疾患の概要
② 妊娠糖尿病
③ 糖尿病合併妊娠におけるプレコンセプションケア
④ 糖代謝異常合併妊娠に対する妊娠中の管理
⑤ 分娩後の管理と評価
⑥ おわりに
3-B糖尿病:糖尿病治療薬 永井絵里子
① 周産期における糖尿病治療薬3種の薬理と安全性
4-A気管支喘息:ガイドラインに基づく疾患の概要と治療方針 山本貴和子
① 喘息の概要
② 喘息の治療の進め方
③ 思春期喘息・移行期医療
④ 喘息と妊娠
4-B気管支喘息:気管支拡張薬 小澤秀介
① 周産期におけるβ2刺激薬4種の薬理と安全性
4-C気管支喘息:抗アレルギー薬 山崎香織
① 周産期における抗アレルギー薬5種の薬理と安全性
4-D気管支喘息:吸入副腎皮質ステロイド 岩澤春奈
① 周産期における吸入副腎皮質ステロイド薬4種の薬理と安全性
5-A頭痛(片頭痛と緊張型頭痛を中心に):ガイドラインに基づく疾患の概要と治療方針 山田和男
① 疾患の概要と疫学
②『 頭痛の診療ガイドライン2021』
③ 妊娠・授乳と片頭痛
④ 妊娠・授乳中の片頭痛治療
⑤ 妊娠・授乳中の頭痛に関するその他の臨床上の要点
⑥ 一次性頭痛と遺伝要因
5-B頭痛:解熱鎮痛薬 佐藤寛子
① 周産期における解熱鎮痛薬6種の薬理と安全性
5-C頭痛:片頭痛治療薬 杉浦あゆみ
① 周産期における片頭痛治療薬の4種の薬理と安全性
6-A感染症:薬物療法の指針 山岸由佳
① はじめに
② 敗血症
③ 血管内留置カテーテル関連血流感染症
④ 発熱性好中球減少症
⑤ 呼吸器感染症
⑥ 尿路感染症
⑦ 女性性器感染症
6-B感染症:抗菌薬 鈴木秀明
① 周産期における抗菌薬5種の薬理と安全性
6-C感染症:抗真菌薬 山本優希
① 周産期における抗真菌薬4種の薬理と安全性
6-D感染症:抗ウイルス薬 山本優希
① 周産期における抗ウイルス薬5種の薬理と安全性
6-E感染症:ワクチン 磨田真理子
① 周産期におけるワクチン7種の薬理と安全性
7-A精神疾患:ガイドラインに基づく疾患の概要と治療方針 菊地紗耶
① 疾患の概要・疫学
② 向精神薬の選択方針
③ 妊娠段階ごとの注意点
7-B精神疾患:抗うつ薬・気分安定薬 赤阪未来
① 周産期における抗うつ薬・気分安定薬5種の薬理と安全性
7-C精神疾患:抗不安薬・睡眠薬 西村あや子
① 周産期における抗不安薬・睡眠薬(ベンゾジアゼピン系および非ベンゾジアゼピン系薬剤)5種の薬理と安全性
7-D精神疾患:抗精神病薬 森田真樹子
① 周産期における抗精神病薬5種の薬理と安全性
8-Aてんかん:ガイドラインに基づく疾患の概要と治療方針 望月仁志・宇川義一
① ガイドラインと疾患の概念
② 妊娠前の注意点
③ 妊娠中の注意点
④ 出産時・産褥期の注意点
⑤ 産後(乳幼児期)の注意点
8-Bてんかん:抗てんかん薬 宮原芽久美
① 周産期における抗てんかん薬4種の薬理と安全性
9-A甲状腺疾患:ガイドラインに基づく疾患の概要と
治療方針 吉原 愛
① バセドウ病
② 甲状腺機能低下症
③ おわりに
9-B甲状腺疾患:甲状腺疾患治療薬 松岡順子
① 周産期における甲状腺疾患治療薬4種の薬理と安全性
10-Aリウマチ性疾患:ガイドラインに基づく疾患の概要と治療方針 津田竜広・津田さやか・斎藤 滋
① 疾患の概要・疫学
② 関節リウマチの治療方針
③ 関節リウマチと妊娠
④ 関節リウマチと周産期合併症
⑤ 挙児希望女性に対する抗リウマチ薬選択
⑥ 妊娠・授乳期における各種抗リウマチ薬の選択
10-Bリウマチ性疾患:生物学的製剤 菱沼加代子
① 周産期における生物学的製剤5種の薬理と安全性
10-Cリウマチ性疾患:免疫抑制薬 三木陽介
① 周産期における免疫抑制薬5種の薬理と安全性
10-Dリウマチ性疾患:全身性副腎皮質ステロイド 村岡香代子
① 周産期における全身性副腎皮質ステロイド5種の薬理と安全性
11-Aがん:プレコンセプションケアの一環としての妊孕性温存 鈴木 直
① はじめに
②『 癌治妊孕性ガイドライン2024』の構成と特徴
③ 小児・AYA世代がん患者の妊孕性温存の主な対象
④ プレコンセプションケアとしての妊孕性温存
⑤ 妊孕性に影響する治療(性腺毒性)
⑥ JSCOの性腺毒性分類
⑦ おわりに
11-Bがん:ガイドラインに基づく乳がんの概要と治療方針 島貫裕実子・下村昭彦
① 妊娠と乳がん
② 疾患の概要
③ 治療薬選択
④ 妊娠段階ごとの注意点
⑤ まとめ
11-Cがん:抗がん薬 土屋雅美
① 周産期に頻用される抗がん薬の薬理と安全性
12-A漢方:ガイドライン・エビデンスの実情と解釈 大澤 稔
① 妊娠と漢方薬(生薬)の概要
② 海外の主要ガイドラインでの現状
③ 東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査
④ 母子リンク・レセプトデータベース
⑤ 妊娠中の伝統医薬使用に関するエビデンス
⑥ 総合レビュー(ハーブ全般)からみた今後の解析計画
⑦ まとめ
12-B漢方:漢方薬
① 妊娠・授乳中における漢方薬評価の基本的考え方 香西祥子
② 周産期における漢方薬6処方の薬理と安全性 香西祥子・大澤 稔
③ まとめ 香西祥子
6章 臨床への応用
1 カウンセリングの基礎 三浦寄子
① カウンセリングの目的
② リスクコミュニケーション
③ カウンセリングの基本手順
④ コミュニケーションの留意点
2 妊娠中の医薬品使用に関する情報提供 三浦あす美
① 患者状況の把握:問診
② 妊娠中の医薬品使用を考えるうえでの前提知識
③ 医薬品に関する情報提供
④ 情報の医療者間での共有
⑤ 患者の意思決定支援とプレコンセプションケアの視点
3 授乳中の医薬品使用に関する情報提供 畠山史朗
① 授乳婦の医薬品使用に関する問題点
② 薬剤師に期待される役割
③ 情報提供の実践
④ おわりに
4 保険薬局における対応 川名三知代
① 地域の薬局が担う新たな使命
② プレコンセプション期の支援体制と制度的基盤の確立
③ 医療用医薬品の提供にかかわる役割
④ 要指導・一般用医薬品の提供にかかわる役割
⑤ 地域の薬局が担う新しい役割
⑥ 今後の課題
5 病院における対応 平澤裕美子
① はじめに
② 妊婦・授乳婦の安全な薬物療法
③ 妊娠・授乳期の薬物療法に関する相談外来と多職種連携
④ 周産期カンファレンスへの参加
⑤ 母親教室での役割
⑥ 薬剤師の専門性:妊婦・授乳婦専門薬剤師/薬物療法認定薬剤師
⑦ 妊娠・授乳期における情報共有と啓発活動
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書籍情報
- ISBN:9784758324519
- ページ数:644頁
- 書籍発行日:2026年5月
- 電子版発売日:2026年5月14日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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