小説みたいに楽しく読める病理学講義

  • ページ数 : 294頁
  • 書籍発行日 : 2026年5月
  • 電子版発売日 : 2026年6月16日
¥2,860(税込)
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商品情報

内容

病気のとき体の中では何が起きているの?
NICE!MD.病気の「なぜ?」を「形」から読み解く学問,それが病理学です .病気の「見方」や,専門家が何をどう見ているのか病理医がわかりやすく解説!病気のしくみがわかったら,自分の体の状態を理解したり,世の中の情報を適切に判断したりするのに役立ちます.本書は,初めて学ぶ人でも「病気はどんなものかわかった」「病理学って面白い」と思える入門書です.その異常は『なぜ起きたのか』そして『どうなるのか』…5つのパソロジー思考で,ミクロの異常から"生命の動き"を読み解きましょう!

序文

はじめに

病気になったとき、私たちの体の中では一体何が起きているのでしょうか?この素朴かつ根本的な問いに対して、圧倒的な解像度で答えをくれる学問があります。それが「病理学」です。病理学を知ることは、霧に包まれていた病気という〝モヤっとした存在〞に対し、高性能なレンズを手に入れるようなものです。それは医療従事者にとっての揺るぎない拠りどころになるだけではありません。医療の専門家でなくても、病気の仕組みを正しく知ることは、巷に溢れるさまざまな病気の情報に惑わされず、自分や家族を守るための確かな判断力という武器になります。

しかし、その一方で「病理学」という言葉に、どこか冷たく、ネガティブな印象を持つ方も少なくありません。特に、医学部で必死に学んだ経験がある人ほど、その傾向は強いようです。事実、国内外の調査でも、医学生がぶつかる最初の壁は病理学だと言われています。多くの学生が「臨床医にも病理の知識は不可欠だ」とは理解しつつも、その半数以上が「膨大な量に圧倒される」「苦手だ」と回答しているのです。

実は、私自身もかつてはその壁の前に立ち尽くした一人でした。

学生時代、厚さ5センチくらいもある国際的な教科書『ロビンス病理学』を目の前にして、途方に暮れたことを今でも覚えています。先輩方からは「試験に出る所は決まってるから」と言われたり、逆に「ロビンスくらいは読まないとね」と発破をかけられたり。でも、そんなアドバイスを聞けば聞くほど、病理学の面白さからは遠ざかっていった気がします。

私はその後、病理医・研究者としての道を歩み、気づくと35年の月日をこの世界で過ごして来たことになります。そしてこのキャリアの半分以上は膵臓の腫瘍を専門にしてきましたが、深く掘り下げていくうちに、あらためて面白い事実に気づいたのです。それは、特定の臓器に特有だと思っていた現象が、実は他の臓器、ひいては人の体全体に共通する生命のルールに基づいているということでした。

病気によって細胞が傷つき、反応し、必死に適応しようとする……。この生命のルールは、太古の昔から変わりません。この根っこにある原則さえつかんでしまえば、一見複雑に見える病気も、一つの物語(ストーリー)として読み解けるようになります。「こんな本が、自分が学生だった頃にあればよかったのに。」本書は、そんな思いから生まれました。

専門用語の暗記や細かな理論だけの基礎医学としてではなく、目の前の患者さんの病態を読み解くための臨床に直結した武器として病理学を捉え直す。そのために、病気の考え方を5つのパソロジー思考として整理し、まるで小説を読むように楽しく読み進められるように工夫しました。そして各章の後半には関連した症例をパソロジー思考に基づいて考察するという試みも行っています。

一度パソロジー思考というレンズを手に入れれば、病気の見え方はきっと変わります。暗記に追われる日々はもう終わりにして、生命が奏でる「なるほど!」という納得の物語を、私と一緒に読み解いていきませんか。では、講義をはじめましょう!

目次

第1章 病理学をはじめよう

病理学の世界にようこそ

外から忍び寄る見えない敵―外因

体の中に潜む病気のもと―内因

病気を観察し分析する―病理学とは

森全体を俯瞰する―病理学総論

一本一本の木を詳細に観察する―病理学各論

病理学の二つの顔とは?―研究者と臨床医

病理医の「目」が捉えるものとは?

組織・細胞の変化を顕微鏡で見る

診断の第一歩―生検

外科医の「次の手」を決める―術中迅速病理診断

組織ではなく細胞に注目する―細胞診

病理医の「最後の切り札」―病理解剖

ヒトはなぜ、そしてどのように死を迎えるのだろう―病死と老衰

病気に「名前」をつける、その意味とは?

第2章 病理学で「病気」を読み解く

木を切る前にまずは斧を研ごう―病気の見方のコツ

パソロジー思考その1:病気は病因・病態で括る

パソロジー思考その2:病態の連鎖と重なりを考える

パソロジー思考その3:組織・細胞所見から病態を考える

パソロジー思考その4:臓器特異性を考慮する

パソロジー思考その5:“時間軸”を持って病態を考える

病気を多角的に捉えるパソロジー思考

第3章 がんを読み解く

がんを撲滅する

腫瘍細胞の元は自分の細胞

「がん」は拡がり、散らばる

腫瘍に関する表現

パソロジー思考でみた病態の連鎖と重なり

パソロジー思考でみた患部の変化

パソロジー思考でみた病態の臓器特異性と時間軸

高齢男性の数ヶ月来の上腹部不快感と背部痛

小児の非固形がん

第4章 「炎」を読み解く

最前線の即時対応!心優しいガキ大将―自然免疫

「食べて、伝えて、援護する」!―自然免疫のエキスパート集団

血管を拡げ、細胞を動かす―炎症の初期行動

一度遭遇したら忘れない―「獲得免疫」の知恵

二度目の攻撃は確実に防ぐ!―「メモリー細胞」が持つ最強の記憶

「炎症」は防御システムが起こす現象

「免疫異常」が起こす三つの悲劇

「炎症」と「腫瘍」が連鎖する危険な関係

患部の組織・細胞が語る病態のサイン

臓器特異性と時間軸

高齢男性の発熱、急激な呼吸困難

若年女性の全身性エリテマトーデス(SLE)

第5章 循環の不具合を読み解く

循環障害を因数分解して考えてみる

血圧の異常―高血圧

血液性状の異常―血栓

循環障害の病態の連鎖と重なりを考える

虚血で生じる変性と壊死

うっ血、充血、出血

臓器特異性と時間軸

女性会社員の「むくみ」

心筋梗塞と脳梗塞

第6章 均衡状態の破綻を読み解く

からだを“整える”―ホメオスタシスのすごさ

内分泌系のはたらき

内分泌系に異常が生じたら

代謝システムのはたらき

代謝システムに異常が生じたら

先天性疾患・形成異常

病態の連鎖と重なり―フィードバックシステムの崩壊

内分泌臓器の組織変化から病態を考える

臓器特異性と時間軸

女性の動悸・息切れ、体重減少

糖尿病

第7章 病理学のこれまでとこれから

「病気は病因・病態で括る」の視点―近代病理学の確立

「組織・細胞所見から病態を考える」の視点―病理解剖学の時代

「病態の連鎖と重なりを考える」の視点―病態生理学・分子病理学への移行

「病態の臓器特異性を考える」の視点―臓器別病理学の発展

パソロジー思考は「病理学の歴史」にも沿ったものだった!

病理学のこれから

がん治療と診断の近未来

いろんな変化を丸ごと解析できたらいいな

病気の変化を立体的に見れたらいいな

デジタルパソロジーと病理AIの近未来

医学は細分化から統合へ

おわりに


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書籍情報

  • ISBN:9784758121453
  • ページ数:294頁
  • 書籍発行日:2026年5月
  • 電子版発売日:2026年6月16日
  • 判:四六判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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