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米国緩和ケア医に学ぶ医療コミュニケーションの極意 改訂2版

  • ページ数 : 326頁
  • 書籍発行日 : 2026年6月
  • 電子版発売日 : 2026年6月24日
¥4,180(税込)
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商品情報

内容

VitalTalkに学ぶ 「伝えにくいこと」の伝え方
重篤患者との「重い話」を前にして,何をどう伝えればよいか迷ってしまう……そんな悩みに正面から向き合うための一冊です.病状の告知,予後の説明,治療の意思決定,家族会議,そして「死」を語る場面まで状況別のロードマップと実践知識を解説します.米国VitalTalkプログラムの創設者たちが25年以上の研究と実践を凝縮した,緩和ケアコミュニケーション領域の決定版です.改訂2版では人種・文化・権力が医療現場に与える影響にも踏み込み,より多様な患者・家族への対応力を磨く内容を大幅に加えました.

序文

訳者第2版の序


初版を上梓してから8年が経ちました.あの頃,「重い話」から逃げてばかりの内科レジデントであった私は,今では大学病院の緩和ケア指導医として,多い日には1日に3件もの「重い話」をこなし,医学生・研修医たちにコミュニケーションを教える立場にあります.大変優秀な米国人の研修医たちに向けて,重篤な患者さんとの対話を指導する日が来るとは,渡米当初には到底想像できませんでした.その変化のすべての原点に,この一冊があります.

指導をしてきた多くの研修医たちを見ていると,はじめはやはり皆,重篤な患者さんとの「重い話」を前にして戸惑います.何を言えばいいのかわからず,感情を前にしてうろたえる ― かつての私がそうであったように.しかし,コミュニケーションは才能ではありません.学ぶことができるスキルです.本書に書かれているスキルを理解し,実践を重ねることで,確実に変わっていくことができる ― それは私自身の経験であり,数多くの指導を通じて繰り返し目撃してきた事実です.

初版の著者たちは,その刊行を礎として,バイタルトーク(VitalTalk)という組織を創設しました.バイタルトークは,重篤な患者さんとのコミュニケーションに特化した実践的トレーニングを提供する団体であり,現在では全米の多くの医療機関・医学校がその訓練を取り入れています.複数の施設で働いてきた経験から自信を持って言えますが,バイタルトークを取り入れた施設では,医療者たちのコミュニケーションの質が目に見えて違います.そのバイタルトークによって,REMAPやAsk-Tell-Askをはじめとした数々の洗練されたスキルが初版出版後も新たに開発されました.その全てが,このバイタルトーク公認の一冊に凝縮されています.

初版の翻訳を終えた後,日本でもバイタルトーク式のワークショップを届けたいとの思いから,私は仲間たちと「かんわとーく」を立ち上げました.かんわとーくは,バイタルトーク流の教育を日本語で提供しています.参加者の多くが「こんなトレーニングは受けたことがない」と口にします.重い話から逃げなくてよくなった,患者さんとの関わりが変わった.そのような声を聞くたびに,初版の翻訳を決意したあの日の気持ちが蘇ります.

初版の出版以来,日本でもアドバンス・ケア・プランニング(ACP)という言葉が広まり,患者さんとの話し合いを大切にしようとする医療者が確実に増えていると聞きます.その変化は大変喜ばしいことです.しかし,こうした会話は,やろうとする意志だけで成り立つものではありません.「重い話をしなければ」という意識が芽生えたとしても,正しいやり方を知らなければ,その対話は十分な力を持てません.患者さんの本当の思いを引き出し,価値観に沿った医療につなげるためには,体系的なスキルを学ぶことが不可欠です.その意味において,本家本元であるバイタルトーク公認のこの一冊が,今の日本にこそ必要とされていると確信しています.

今回の第2版翻訳にあたっては,かんわとーくでの活動を通じて出会った,この分野での経験豊富な仲間たちの協力を得ることができました.また,私自身は本書の筆頭著者であるロバート・アーノルド(彼のことは“Bob”と呼ぶようにと言われています)とマウント・サイナイ病院で同僚として働きながら師事しており,その技法を臨床と教育の両面で実践し続けています.本書はニュアンスを汲み取る必要がある表現で満ちており,医学の教科書とは異なる種類の言葉の力に溢れています.そのため,直訳では到底伝わらない表現が随所にあり,それを正確に日本語として届けるには,このスキルを日々使用している者の実地での理解が不可欠です.そういう意味で,これ以上ない翻訳チームが集まったと,自負しています.

あなたは今,「重い話」を前にして戸惑っているかもしれません.何を言えばいいのかわからず,その場から逃げ出したい気持ちになっているかもしれません.かつての私がそうであったように.しかしこの本を読み終えた時,その恐怖は和らいでいるはずです.そしていつか,患者さんから「こんな風に話してくれる医者に会ったことがない」と言われる日が来ることを,訳者として確信しています.


2026年初夏 新緑まぶしいニューヨークにて

マウント・サイナイ医科大学 老年病・緩和ケア科 助教
植村健司

目次

はじめに

第1章あなたの技術を次の段階へ

試練

よりよいコミュニケーションは本当に役に立つのか

本当にコミュニケーションを学ぶことができるのか

コミュニケーションの構成要素

よいコミュニケーションはどのように役に立つのか

私たちの考え

大事な原則のまとめ

感情について一言

この本の使い方

第2章基本的なコミュニケーションスキル

よくある過ち

Ask-Tell-Ask(尋ねる―伝える―尋ねる)

Ask-Tell-Askが深刻な知らせ以外の場面でも役立つ場合

感情を認識し,対応する

感情を認識し,対応することがなぜ重要なのか

なぜ医療者は感情にもっと注意をはらわないのか

感情を認識する方法

感情への対応方法

会話を進める前に許可を求めること

もう少し教えてください

バーチャルコミュニケーション(あるいはビデオ通話でのコミュニケーション)

よくある問題を,改めて考える

第3章深刻な知らせについて話し合う

感情データに向き合えていない

深刻な知らせを話し合うためのロードマップ:GUIDE

もしも家族が「本人には言わないでほしい」と言ってきたら

深刻な知らせを伝える際におけるテクノロジーの影響

医療過誤について伝える時

第4章予後について話し合う―やってもやらなくても難しい状況になってしまう

現実主義,楽観主義,そして逃避主義

予後に対する考えの振り子

話し合う内容を交渉するためのロードマップ

最初の質問:あなたはどの程度まで知りたいと思っていますか?

交渉に基づくアプローチによる予後についての話し合い

情報を求める患者さんと予後について話すためのロードマップ:ADAPT

知りたくないと言う患者さんと話すためのロードマップ

相反する感情をもった患者さんに対するロードマップ

家族が患者さんとは異なる種類や量の情報を聞きたいと言ってきた場合

悪い予後は希望を打ち砕いてしまうのか

予後の不確実性へ対応する

患者さんが予後に納得できない場合

第5章将来のことについて計画を立てる―危機的なことが起こるずっと前に,本人にとって何が大切かを話し合う―

どのように始めるか?

重要なスキル:患者さんや家族と話し合いを始める

ステップ1:話し合いのための時間を確保する

ステップ2:ケアの目標について話し合う許可を求める

ステップ3:価値観を明らかにする

ステップ4・5:代理意思決定者の選定/感情の代弁を提案する

話し合いを終える

患者さんが自身の目標について話したがらない場合はどうすればよいでしょうか?

第6章治療の選択について話し合う―決断が必要な時―

情報は諸刃の剣

患者さんに情報を与えつつ,しかも圧倒しないようにする

患者さんに合った意思決定への参加

どのように意思決定に関わりたいと思っているのかを話し合うためのロードマップ

効果的な意思決定の補助法

第7章フォローアップでのありふれた会話の中で―ささいなきっかけを活かす―

固定観念に捕らわれない

臨床経験を活かして患者さんを導く

抗がん剤治療を終える日

治療に伴う長期的な合併症とともに生きていく

課題に対応し,進歩を祝福する

未来を再構築する

しかし,あの不安はどうなるのだろうか?

第8章終末期における,医療やケアのゴール―不安と恐れに負けず,全体像を把握する―

終末期における,医療やケアのゴールはどのように異なるのでしょうか?

終末期における治療とケアの目標を話し合うためのロードマップ:REMAP

ケアや治療の目標に関する話し合いに対する患者の反応

よくある課題

第9章家族会議を行う―複数の人に対応するために,複数のことに気を配る―

家族会議が役立つ場面

中立的な立場を築いていく

患者さんのために家族が意思決定を行うとき

臨床チームにも独自のダイナミクスがある

ロードマップ:家族会議の進め方

家族会議における困難な場面

第10章医療者と患者間の対立への対処―「誰が正しいか?」から「私たちの共通の関心ごとは何か?」へ―

対立(コンフリクト)が存在することに気づくには

対立にどう対処すればよいか

対立に向き合うためのロードマップ

“でも(but)”をやめて“そして(and)”を使うタイミング

ロードマップを活用した会話例

誰かが失礼な態度を取るとき

対立が解決困難に思えるとき

第11章同僚との対立を乗り越える―「誰が正しい」から「物事をうまく進める」へ―

異なる視点に価値を見出す

他の医療者との対立と,患者とのそれとの違い

中立的な話し合いの場を作る:まず自分の感情に向き合う

ロードマップ:同僚との意見の対立へのアプローチ

2人の医師による困難な話し合い

対立について話し合うのがうまくいかない場合

相手がそのことについて話したくない場合はどうすればよいのか?

攻撃されていると感じたら?

関係がまだ難しい場合(または対立が解決不可能と思われる場合)

第12章話し合いに行き詰ったら―対話の流れを読み,方向を修正する―

特に困難な話し合いがあるのはなぜか

難しい会話:奇跡への期待

困難な会話:死を早める要求

感情への対応が会話を進展させないとき

痛いところを突かれたとき

第13章死について話し合う―DNRの指示とわかれの言葉について―

死についてどのように話し合うかによって大きな違いが生まれる

なぜ死ついて話し合うことはこんなにも難しいのか

死の影の中で働くということ

「死を否認する文化」に抗う

死について語るためのきっかけとしてDNRオーダーを利用してはいけない

蘇生希望(DNRディスカッション)について話し合うためのロードマップ

終末期が近づいているとき

二度と再会しないと思われる患者さんに「さようなら」を言うためのロードマップ

第14章スキルを磨く―自分の全ての力を活かすために―

スキルと認知的ロードマップの習得

自分がどこでつまずき,何を避けようとしているのかを気づくようにする

自分の器を大きくするために

好奇心を持つこと

エモーショナル・インテリジェンス

停滞するとき,悪いときもある

自分自身を大事にすること

コミュニケーションの達人とはどのような人なのか―あなたが目指す像

原著参考文献一覧

索引

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書籍情報

  • ISBN:9784498057258
  • ページ数:326頁
  • 書籍発行日:2026年6月
  • 電子版発売日:2026年6月24日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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