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- 脂質異常症の診かた、考えかた
商品情報
内容
脂質異常症・高血圧・糖尿病は,動脈硬化や心筋梗塞,脳卒中を引き起こす重大なリスク因子です.しかしながら,とくに脂質異常症の管理については実臨床での難しさを感じる場面が多いのではないでしょうか.その理由のひとつは,コレステロール・トリグリセリドの基準値は示されてはいるものの,それがどのような理屈によって変動するのかがイメージしづらい点にあると考えられます.本書では,薬物治療や併存症,そして遺伝的背景によって脂質の値がどのように変動するのかを徹底的に解説します.脂質の動態を理解することで,あなたの臨床解像度を一段上に押し上げることができるはずです.
序文
序文
脂質異常症の治療目標はコレステロールやトリグリセリドを基準範囲に収めることだろうか.脂質異常症治療の本来の目的は,冠動脈疾患や脳血管疾患の発症を防ぎ,患者の健康寿命を延伸することである.にもかかわらず,日常診療の忙しさのなかでは,数値の管理がいつしか自己目的化し,患者に過度の制限や治療を押し付けてしまう ― 目の前の検査値という「木」を見るあまり,患者の人生という「森」を見失う,そんな状況に陥っていないだろうか.本書を手に取ったあなたにも,きっと思い当たる場面があるのではないかと思う.
インスリン抵抗性などの糖代謝異常,甲状腺ホルモン・性ホルモンの変動,慢性炎症といった全身の代謝環境が脂質代謝に深く結びついている.単に脂質項目の異常値を見るだけなく,その背景に何があるかを考察することで,病態の解釈も治療の優先順位もまったく変わってくる.脂質異常症を孤立した「点」としてとらえるのではなく,代謝という広大な「面」のなかに位置づけること ― その視点の転換が,個々の患者に真に有益な介入への第一歩になると筆者は考えている.
脂質の世界はさらに奥深い.LDLの中でも,粒子が小さく密度の高いsmalldense LDLは高い動脈硬化惹起性を有しており,目の前の患者のリスクを考慮する際に有益なツールとなりうる.本書ではリポタンパク(a)も含め,動脈硬化惹起性リポタンパクに関する最新エビデンスも解説している.
糖尿病と同じく,脂質異常症の治療でも食事療法は薬物療法と同等に,脂質管理の根幹であり続ける.しかし医師が栄養について体系的に学ぶ機会は,医学教育においても卒後においても決して十分ではない.本書では食事療法にも多くのページを割いており,脂質代謝に即した栄養の考え方を改めて整理することで,患者指導の質を一段引き上げる手がかりにしていただければと思う.
養生訓には,「食事は食べ過ぎず,毎日,自分に合った適度な運動をするのがよい」とあるが,現代人が実践することはなかなか難しい.目の前の患者を数字だけで診ずに,栄養から薬物療法まで幅広い引き出しを持ちながら,患者の健康寿命の延伸に貢献する ― そのような臨床医を支える一冊として,本書を活用していただければ幸いである.
2026年6月
原土井病院 池崎 裕昭
目次
01 病態生理 コレステロールの値はなぜ変動するの?
・脂質の基礎知識
・リポタンパクの構造と役割
・リポタンパクの種類
・アポリポタンパクの種類と役割
・脂質(リポタンパク)代謝
〔コラム〕コレステロール制限?
・コレステロール代謝
〔コラム〕脂質は「悪」か?
02 脂質代謝に影響を与える疾患 病態から疾患同士の連関を読み解く
・続発性脂質異常症の特徴
・糖尿病
・脂肪性肝疾患
・ネフローゼ症候群
・甲状腺機能低下症
・甲状腺機能亢進症
・Cushing症候群
・褐色細胞腫
・飲酒
〔コラム〕お酒が強い人は糖尿病になりやすい?
・更年期・閉経
・薬剤
〔コラム〕血液検査における中性脂肪とは何を測定している?
03 脂質代謝異常の診断 個人のリスク因子により,基準値は変わる
・脂質代謝診療の考え方
・脂質代謝異常診断の基本
・原発性脂質異常症
・リスク状態に応じた脂質異常症の管理目標
・治療はLDLコレステロールだけで良いのか?
・LDLの中の真の悪玉? small dense LDLとは
〔コラム〕真のリスク因子はアポリポタンパクだが……
・small dense LDLコレステロールの基準値
・small dense LDLコレステロール測定の有用性
・粒子の小型化にトリグリセリドが与える影響
・実症例
・small dense LDLコレステロールの推定
04 食事療法 単なる制限ですませない
・食事療法の基本
・総エネルギー摂取量
〔コラム〕脂質摂取のメリット1
・コレステロールの摂取量
〔コラム〕脂質摂取のメリット2
・脂肪酸
〔コラム〕脂質摂取のメリット3
・炭水化物
〔コラム〕脂質摂取のメリット4
・食物繊維
・アルコール
〔コラム〕お酒の席ではなぜ食べ過ぎるのか?
・病態に応じた食事療法
・内臓脂肪がつきにくい食習慣とは
・時間栄養学を考慮した食事
〔コラム〕朝食は食事療法の味方
・ベジファーストは意味ない?
・プロテインファースト
・結局どのような食事が良いのか?
・地中海食は健康的か?
・DASH食
・高齢者の脂質異常症への対応
〔コラム〕ラーメンも食べ方次第
05 運動療法 運動は健康長寿のカギ
・運動の効果
・運動の種類
〔コラム〕運動療法は“運動"しないといけないのか?
・運動療法による脂質への効果
・運動療法の効果のメカニズム
〔コラム〕ミトコンドリアの量と質は免疫能にも関わる
・運動療法のTips
・実際の運動療法指導
〔コラム〕運動習慣の継続のコツ
〔コラム〕油はダイエットによい?
06 薬物療法 代謝バランスを考えた薬物選択
・脂質異常症治療の概要
・LDLコレステロールに対する薬物療法
・トリグリセリドに対する薬物療法
・アドバンス
・脂質代謝に好影響を与える他疾患の治療薬
〔コラム〕新規コレステロール降下薬への期待
07 治療フォロー 脂質異常症に対する治療の実際
・治療介入アプローチの総論
・治療開始後の基本的フォローアップ
・LDLコレステロール管理におけるリスク層別化による治療介入・フォローアップの考え方
・検査値変動への対応(LDL-C変動への警戒)
・高トリグリセリド血症に対するアプローチ
・トリグリセリド値上昇時の緊急度判定
・筋症状・CK上昇への実践的対応
〔コラム〕スタチン内服でなぜ筋肉痛が起こるのか?
・CK値に基づく客観的判断
〔コラム〕スタチン服用時の注意点
〔コラム〕食事のお供
・CK上昇を伴う筋障害時のアプローチ
・スタチン開始後の肝機能異常への段階的対応
・スタチンを用いることができない場合
・薬物治療がうまくいかない際のアプローチ
・併存疾患別の管理ポイント
〔コラム〕ペマフィブラートのスタチン不耐例への有効性
08 アドバンスト 健康寿命延伸を目指す
・脂質代謝の「その先」を診る
・脂質の質を考える
・トリグリセリドから脂質代謝と周辺疾患を診る
・non-HDLコレステロールをどう解釈するか?
・治療効果が不十分な場合やスタチン不耐の場合
・高トリグリセリド血症に対する介入の意義
・CRPにも注目する
09 ケーススタディ 脂質異常症の悩ましいケーススタディ集
・CASE 01: 超高齢者の脂質異常
・CASE 02: 若年女性の脂質異常
〔コラム〕脂質の質を良くするビタミン
・CASE 03: スタチン内服後の筋肉痛
・CASE 04: 治療中のコントロール悪化
・CASE 05: 若年の家族性高コレステロール血症疑い
・CASE 06: 糖尿病患者の脂質管理目標
〔コラム〕三角食べはよくない?
〔コラム〕炊きたてご飯よりも冷やご飯?
・CASE 07: スタチン内服中にHbA1cが上昇
・CASE 08: 進行したCKD患者の脂質異常症
・CASE 09: 急激に発症した脂質異常症
・CASE 10: 食事療法の遵守が困難
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書籍情報
- ISBN:9784498223141
- ページ数:130頁
- 書籍発行日:2026年6月
- 電子版発売日:2026年6月24日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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