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- しくじり症例から学ぶ がん緩和ケア
商品情報
内容
「なんかうまくいかない…」に対する専門医の知恵を詰め込みました.会話形式+簡潔なポイント+項目末のフローチャートで,誰でも理解・実践できます!がん治療・がん患者さんに関わる全ての医療者におすすめ.
序文
監修の序
本書は,緩和ケアでやってしまいそうなしくじりを取り上げて,より最適解にたどり着くことを意図して出版されたものである.あってはならないことのはずであるが,日常臨床では「しくじり」はたびたび起きる.臨床家にとって重要なのは,しくじりを正面から受け止めて,しくじりからやり直せるか,あいかわらず続けるか?――である.ある人は,一度のしくじりから自分の行動をふりかえって,次からは起きないように行動自体を変えることができる.一方,ある人は,あいかわらず何度も何度もおなじ「しくじり」をくり返す.本書の読者におかれては,書籍中のしくじりを「へえ~~」「気をつけよー」で終わらせることなく,できることなら実際の自分の行動自体を変えて,しくじりが起きないように生かしてもらえるとありがたい.
筆者の緩和ケア黎明期はしくじりの連続であった.
おだやかに過ごしていた高齢の患者さんで急に痙攣がおきた(脳出血だろう).当時の標準治療のジアゼパムで目前の痙攣を止めながら,フェニトインで飽和させていったが全くおさまらなかった.患者さんは痙攣しながら呼吸が止まってしまい,看護師さんたちにものすごく怒られた.経験を積んだ後では,バルビツールの静脈投与をとり入れたところ重積状態のまま亡くなる人はいなかった.
エコーガイド下穿刺が一般的でない時代,鎖骨下静脈からのアプローチで気胸を生じたことがあった.リカバーはできてもただでさえ少ない残りの日を,本来なくてよい治療にあてるのは本当に心苦しかった.その後,試行錯誤した結果,今でいうところのPICCを自前で開発して,静脈確保で患者をリスクにさらすことはなくなった.しくじりを経験して「何を変えるか」――その一歩先の視点ももって楽しんでいただきたい.
2026年4月
聖隷三方原病院 緩和支持治療科
森田達也
はじめに
本書は,がん緩和ケアを志す初学者のために編纂しました.数多ある類書との決定的な違いは,「失敗から学ぶ」ことを最大のテーマに据えている点にあります.近年,緩和ケア研修会などの普及により,基本的な緩和ケアの知識を得る機会は飛躍的に増えました.しかし,実臨床では研修通りにいかない場面も多く,専門医に即座に相談できない環境下で,孤独に試行錯誤を続けている方も少なくありません.本書は,そうした悩みをもつ読者に寄り添い,専門家が臨床の現場で何を考え,どう判断しているのかを,若手オンコロジストとの対話形式を通じて平易に解き明かします.
内容面では,頻用薬の解説に留まらず,予後予測や臨死期への対応といった,緩和ケアの本質的な「考え方」が伝わるよう工夫を凝らしました.また,編者が日常臨床で重視している「救急外来での対応(オンコロジーエマージェンシー)」にも一章を割いています(第2章).急性期の最前線から緩和ケアのスキルを発揮するための実践的なコツを提示しました.
さらに,緩和ケアと密接に関連する「緩和的放射線照射」と「サイコオンコロジー」の領域については,同世代のトップランナーである和田優貴先生と五十嵐江美先生にご執筆いただきました(第3章).各分野の第一線で活躍される両先生による解説は,初学者にも極めてわかりやすく,読者の皆様の臨床を劇的に変える一助となると確信しております.
「学ぶ」の語源は「真似ぶ」であると言われます.本書に綴られた「しくじり」を単なる反面教師とするのではなく,その裏にある真の考え方を「真似る」ことで,皆様の日常臨床がより豊かなものになることを願ってやみません.
末筆ながら,多忙な業務の合間を縫って本書の監修をお引き受けいただき,温かいご指導を賜りました森田達也先生に,深甚なる謝意を表します.また,本企画の趣旨に賛同し,素晴らしい原稿をお寄せいただいた和田優貴先生,五十嵐江美先生,ならびに編集に尽力いただいた羊土社の寺山七夢様に心より御礼申し上げます.
2026年4月
竹田綜合病院 緩和医療科
平塚裕介
目次
第1章 病棟・外来での診療場面
1 がん疼痛:最初の1手 【平塚裕介】
①がん疼痛の治療はまだまだ不十分/②夜間の痛みが持続している症例/③しくじりポイント/④NSAIDsの使い分け/⑤アセトアミノフェンも初手で使うけど……
2 がん疼痛:オピオイド導入,副作用 【平塚裕介】
①「弱」オピオイドは弱くて「強」オピオイドは強い?/②初期用量でも忍容性がなかった症例/③しくじりポイント/④オピオイドの使い分け
3 がん疼痛:鎮痛補助薬 【平塚裕介】
①神経障害性疼痛の診断は難しい/②副作用により鎮痛補助薬を継続できなかった症例/③しくじりポイント/④鎮痛補助薬の使い方
4 食欲不振 【平塚裕介】
①がん患者さんはさまざまな症状を有する/②何も対応してもらえなかった症例/③しくじりポイント/④食欲不振の薬物療法
5 悪心・嘔吐 【平塚裕介】
①悪心・嘔吐は病態生理が大切/②制吐剤の変更が無効だった症例/③悪心・嘔吐のネットワークを意識して制吐剤を選択しよう/④制吐剤の使い分け
6 便秘 【平塚裕介】
①たかが便秘,されど便秘/②難治性嘔吐/③悪心・嘔吐をみたら便秘と思え!/④便秘治療薬の使い分け
7 呼吸困難 【平塚裕介】
①呼吸困難/②「がん患者の呼吸困難といえばオピオイド」 ではない/③呼吸困難の初手は酸素療法が原則/④オピオイドの使い方
8 予後予測 【平塚裕介】
①予後予測/②予後予測ツールの使い方/③予後予測ツールも一長一短/④手間はかかるけど確実性をもって予後予測する方法
9 臨死期のプラクティス 【平塚裕介】
①予後が短いのはわかった/②バイタルサインは保たれているから大丈夫?/③臨死期の可能性が高いと判断したら/④今夜は帰っても大丈夫ですか
第2章 救急外来での診療場面
1 高カルシウム血症 【平塚裕介】
①多彩な症状の出る高カルシウム血症/②ビスホスホネート製剤+輸液!/③ゾレドロン酸も輸液も適正量を考えよう/④高カルシウム血症における+αのマネジメント
2 脊髄圧迫 【平塚裕介】
①意外と多い脊髄圧迫/②疑わないと脊髄圧迫は正しく診断できない!/③脊髄圧迫の診断はそう簡単ではない/④脊髄圧迫と診断したら
3 尿路閉塞 【平塚裕介】
①尿路閉塞は典型例を知ることから/②尿路閉塞は疑わないとはじまらない!/③尿路症状で違和感を覚えたらすぐに超音波検査を!/④尿路閉塞の診断がつけば
4 頭蓋内圧亢進症状 【平塚裕介】
①さまざまな症状を生じるのが頭蓋内圧亢進症状の特徴/②病態へのアプローチは適切だけど……?/③薬物療法は時期を考慮して選択しよう!/④合わせて知っておきたい痙攣のこと
5 悪性消化管閉塞 【平塚裕介】
①悪性消化管閉塞の分類を知ろう/②マネジメントは教科書通りだけど……?/③病態を考えて薬物療法・非薬物療法を選択しよう/④薬物療法以外の選択肢も覚えておこう!
第3章 他科との連携
1 緩和的放射線治療:がん疼痛 【和田優貴】
①がん疼痛に対する緩和的放射線治療という選択肢/②根治的放射線治療と緩和的放射線治療の違い/③鎮痛剤では対応困難な痛みが持続している症例/④骨転移の疼痛に対する緩和的放射線治療/⑤骨転移の疼痛再燃に対する再照射/⑥骨転移以外の疼痛に対する緩和的放射線治療/⑦多発肝転移による疼痛に対する全肝照射
2 緩和的放射線治療:出血,狭窄,神経症状 【和田優貴】
①疼痛以外の症状に対する緩和的放射線治療/②しくじりポイント/③狭窄(消化管,気道)に対する緩和的放射線治療/④狭窄(大静脈)に対する緩和的放射線治療/⑤神経症状(脊髄圧迫症候群)に対する緩和的放射線治療
3 リエゾン:気持ちのつらさ 【五十嵐江美】
①つらさを訴える患者さん/②気持ちのつらさって何?/③しくじりポイント/④そもそも不安には抗不安薬を処方すればよい?/⑤気持ちのつらさの背景にあるトータルペインを意識しよう!/⑥気持ちのつらさはストレスのせいだけ?
4 リエゾン:せん妄 【五十嵐江美】
①その活気のなさ,低活動型せん妄ではないですか?/②気持ちのつらさと低活動型せん妄の鑑別は難しい/③しくじりポイント/④どうやって低活動型せん妄を見つける?/⑤注意障害に気づくには/⑥過活動型せん妄への対応/⑦低活動型せん妄への対応
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書籍情報
- ISBN:9784758124539
- ページ数:232頁
- 書籍発行日:2026年6月
- 電子版発売日:2026年6月26日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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