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麻酔科医に必要なスキルテクニカル×ノンテクニカル―臨床現場に活かすコツ―

  • ページ数 : 208頁
  • 書籍発行日 : 2026年5月
  • 電子版発売日 : 2026年6月25日
¥5,500(税込)
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商品情報

内容

テクニカルスキルとノンテクニカルスキルを融合した初の書。
真の麻酔科医になるためにはテクニックだけでは足りません。ノンテクニカルスキルを掛け合わせることが絶対に必要となってきます。 臨床現場で必要となる「技能的なことではない技術」をわかりやすく言語化した、テクニカルスキルとノンテクニカルスキルを融合した初の書。 臨床の現場で「なんとなくうまくいく」ためのコツをわかりやすく詰め込んだ書籍です。

序文

監修序文

真の医師には“テクニカル× ノンテクニカル・スキル” が必要

スキル(技能)とは、練習を通じて習得される特定の能力や技術を指します。どんなスキル習得にも共通するのは、練習を繰り返して系統立った動作を記憶し、無駄のない洗練された動きになるまで繰り返し、最後に熟達(マスタリー)に至るという過程です。

研修医、専攻医、そして専門医に至るまで、どの科の医師もテクニカルスキルの習得に余念がありません。専門医を取得したのちも、医師の場合は「生涯教育」として、一生にわたり知識と技能を学び続けることができるとされています。

しかし、現実にはテクニカルスキルには必ずピークがあり、生涯ずっと成長し続けるのは難しいという側面があります。例えばアスリートの場合、10代から20代にテクニカルスキルのピークが来て、40代にはほとんどの方が引退となることは誰でも知っているでしょう。医師・研究者のような知識労働であっても、テクニカルスキルのピークは(アスリートよりは後ろにずれるものの)30代から40代といったところでしょう。50代以降は、誰しも「老化」という自然摂理から逃れられません。

一方で、ノンテクニカルスキルというのは、純粋な身体技能だけでなく、知識や経験に基づいた認知、意識といった「技能的なことではない技術」であり、分かりやすく言えば「心構え」「環境作り」のようなものですので、年相応の経験が求められます。私自身、ノンテクニカルスキルがテクニカルスキルよりもむしろ重要だと気がついたのは、専門医取得後にさまざまな症例を経験してしばらく経った時でした。興味深いことに、私はノンテクニカルスキルの重要性に気がついた瞬間を明確に覚えています。

それは(もう十年以上も前になりますが)、航空安全学を医学安全学へ応用するという木山秀哉先生の講演を医局の研究会で聴いたときでした。旅客機の離着陸時にはsterile cockpit(無菌状態の操縦室)といって、無駄な会話やバックグラウンドミュージックをなくし、操縦士が操縦スキルに集中する環境を作るというノンテクニカルスキルを、sterile op room(無菌状態のオペ室)として実臨床に応用するというものでした。この講義を聴いて以来、私は麻酔導入時にはオペ室の天井スピーカーから流れる音楽を消すという作業を毎度行うようにしており、これが「挿管」という合併症の多いテクニカルスキルに集中できる効果を実感しています。テクニカルだけでは足りない。

テクニカル× ノンテクニカル・スキルにしないと本物の熟達には至らない――そう確信するに至ったエピソードです。テクニカルスキルに関する教科書であれば山ほど出ています。また、ノンテクニカルスキルについてだけでも本一冊以上になる内容です。しかし本書『麻酔科医に必要なスキルテクニカル× ノンテクニカル―臨床現場に活かすコツ―』は、両者のエッセンスを抽出し、「テクニカル× ノンテクニカル・スキル」という相乗効果を生むことを目的とした、初めての試みでもある唯一の教科書です。

例えば、第1章「今一度、麻酔科に期待されるミッションを考える」は、従来の周術期概念をより高次の視点(メタ視点)で俯瞰した新しいコンセプト「周術期→回復期→生活期の流れを患者さんのフローから考える」から始まっています。その高次概念を実現するテクニックとして、第3・4・5章は種々のテクニカルスキルを挟み込む構造になっています。本書はマニュアル的な教科書では決してなく、どこをパッと開いても、そこから「読み物」として成立するように構成されています。ノンテクニカルスキルを身につけることによって、ちょっとした意識のもち方次第で、私たちの職場環境も変わってきます。例えば、今は当たり前に術前に行う「タイムアウト」(第4章)は、ノンテクニカル的にはどう説明できるでしょうか。これは、これから患者さんの意識を奪いメスを加えるための「環境作り」とも説明できるでしょう。第6章「『共に働く』ために必要なノンテクニカルスキル」も、これからの麻酔科医にとって必読です。テクニカルスキルを追い求めているだけでは一人前になれないのは、どの世界でも同じです。真に強いアスリートには、技能だけではなく人間的にも秀でた人物が多いように、真の麻酔科医になるにはテクニカルスキルだけでは足りません。テクニカルスキルにノンテクニカルスキルを掛け合わせることが、絶対に必要になってきます。本書が、専門医を目指す若手の先生方にとって、自分のスキルを統合して人間力を高めていく「臨床の軸」となることを心から願っています。


2026年4月吉日

香川大学医学部麻酔科学講座教授荻野祐一



編集序文

麻酔科臨床における「経験からの学び(臨床現場のコツ)」の大切さ

人工知能(Artificial Intelligence:AI)は、麻酔科学・周術期管理の分野においても革新的な変化をもたらし始めています。ディープラーニングによる情報の統合と解析技術の発展により、医療分野におけるAIの進化は著しく加速しています。AIは特にビッグデータの統合性と処理スピードを活かし、放射線医学や病理学といった画像診断領域にとどまらず、麻酔医療においてもその品質と効率に大きな影響を与えつつあります。

なかでも、患者データを統合することで周術期管理に革新をもたらす点は、AIの麻酔医療への最大の貢献のひとつと言えるでしょう。AIは術前のリスク評価支援ツールとして、患者のリスクや麻酔管理上の注意点を事前に提示することが可能です。術中においても、単一の生体情報に対するリアルタイム解析により異常の徴候を示唆するだけでなく、複数の情報を統合して病態生理の全体像を提示することで、合併症の予防にも貢献する可能性があります。さらには、術前情報と術中モニタリング情報の統合により、麻酔管理の個別化や自動麻酔制御といった実践的応用も期待されています。

AI時代の到来に備え、麻酔科医はAIの特性を理解し、その利点を最大限に活用するための臨床のコツ(ノンテクニカルスキル)を習得することが求められています。さらに、AIは医療のみならず、教育を含む社会全体の仕組みに影響を及ぼしており、新たな世代にふさわしい「学び方」の再構築も重要な課題となっています。

とはいえ、このような高度なAI技術が進展する時代にあっても、麻酔科医としての「経験型学習」は依然として不可欠です。日々の臨床における「経験」を省察し、いわゆる「臨床現場のコツ」を蓄積していくことが、テクニカルスキルを支えるノンテクニカルスキルの礎となるのです。例えば、「術前検査を総合的に捉え麻酔管理に反映させる力」「麻酔導入時や維持中のピットフォールへの対応力」「術後経過や回復期を見据えた麻酔戦略」「外科系診療科や他職種との円滑なコミュニケーション能力」などがその一例です。しかしながら、こうした「麻酔科医に必要なスキル」に特化した書籍はこれまでほとんど存在しませんでした。

今回、麻酔科専攻医、指導医、短期研修者すべてに役立つ、経験を通して修得した「臨床現場のコツ(ノンテクニカルスキル)」に焦点を当てた書籍を上梓しました。本書は麻酔科医のみならず、内科医や外科医からの寄稿もいただいており、オールラウンドな麻酔科医の育成に貢献することを目指しています。本書が、読者の皆様の日々の臨床における気づきや学びにつながる一助となれば幸いです。


2026年4月吉日

香川大学医学部地域医療共育推進オフィス特命教授
麻酔・ペインクリニック科駒澤伸泰

目次

ノンテクニカル

第 1 章

今一度、麻酔科に期待されるミッションを考える

1 周術期→回復期→生活期の流れを患者さんのフローから考える 駒澤伸泰 

2 予定手術:腹腔鏡下幽門側胃切除術における麻酔管理 駒澤伸泰 

3 予定手術:帝王切開術における麻酔管理 駒澤伸泰 

4 回復期と生活期を意識した周術期管理が重要 駒澤伸泰 

5 緊急手術:大腸穿孔による汎発性腹膜炎における麻酔管理 駒澤伸泰 

ノンテクニカル

第 2 章

麻酔科術前評価からの学びを活かす

1 術前検査のダイナミズムを知る―点ではなく線でみる 植木隆介 

2 肝機能と腎機能から麻酔薬の感受性を考える 栗田秀一郎 古谷健太 

3 術前呼吸機能検査の意義を呼吸器内科の視点から斬る 國政 啓 

4 凝固機能の落とし穴を輸血のプロが斬る 前田琢磨 

5 そのヘモグロビン(Hb)値は本物か? 栗田秀一郎 古谷健太 

6 「高齢者」の多様性をイメージするスキル 栗田秀一郎 古谷健太 

7 術前 X 線検査でチェックすべきところ 國政 啓 

8 バイタルサインの評価 羽場政法 

9 予定手術と緊急手術における評価 羽場政法 

10 術前絶飲食指示 羽場政法 

11 の手術経験における麻酔科の役割と術前説明 駒澤伸泰 

テクニカル

第 3 章

麻酔導入時のコツ

1 患者体位を尊重した麻酔導入が大切 鈴木智文 

2 前酸素化は大切だが,換気にも注意を 鈴木智文 

3 麻酔導入時は呼吸停止だけでなく嘔吐のリスクにも注意 鈴木智文 

4 気管挿管は消化器・呼吸器系の分離 植木隆介 

5 胃管チューブは消化管の減圧 植木隆介 

6 体位は手術室全員の責任―特に頸椎に注意 植木隆介 

7 手術台の操作は全員で確認を 植木隆介 

テクニカル

第 4 章

麻酔維持中のコツ

1 タイムアウトは何のため 渡部達範 

2 アドレナリン入り生理食塩液の効果を知る 渡部達範 

3 出血時:輸血時はできるかぎりの情報共有を 渡部達範 

4 洗浄すればするほど報告出血量は相対的に減る 渡部達範 

吸引管を術野に入れているときは大量出血 渡部達範 

6 体温管理はすべてに通ずる 鈴木智文 

7 レミフェンタニル時代の尿量評価 鈴木智文 

8 「腹固い」は筋弛緩薬追加投与だけの問題か 鈴木智文 

9 術中の合併症にいかに早く気づき対応するか? 古谷健太 

テクニカル

第 5 章

麻酔覚醒・術後急性期のコツ

1 術後急性期は深い鎮静から中等度鎮静の状態 鈴木智文 

2 術後急性期の適正な鎮痛の難しさ 古谷健太 

3 術後は気道閉塞のハイリスク―隠れ睡眠時無呼吸症候群 古谷健太 

4 術後の合併症対応の基本 古谷健太 

5 鼻気道の重要性 駒澤伸泰 

6 術後酸素投与はいつまで行うべきか 渡部達範 

7 それぞれの鎮痛法の問題点を理解した対応を 渡部達範 

8 病棟か集中治療室か 植木隆介 

9 麻酔チャートから読み取れる術後管理のヒント 植木隆介 

ノンテクニカル

第 6 章

「共に働く」ために必要な■ノンテクニカルスキル

1 周術期の多職種連携はすべてにつながる 駒澤伸泰 

2 手術室看護師と「ともに働く」ために意識すること 駒澤伸泰 

3 外科医から麻酔科医へ伝えたいこと 橋本昌樹 

4 麻酔科医が外科医に期待することをどうやって伝えるか? 古谷健太 

5 麻酔科医がメディカルスタッフに期待することをどうやって伝えるか? 古谷健太 

6 麻酔科医における「指導医」と「専攻医」の関係 駒澤伸泰 

7 麻酔科医と臨床研修医との関係 駒澤伸泰 

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書籍情報

  • ISBN:9784771961685
  • ページ数:208頁
  • 書籍発行日:2026年5月
  • 電子版発売日:2026年6月25日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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