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- 総論 高齢者マルチモビディティを考える<高齢者マルチモビディティ パーフェクトガイド>
商品情報
内容
高齢者を診る機会は増えているものの,マルチモビディティ(多疾患併存)の高齢者をいかに診るべきかについての明確な指針は必ずしも存在しない.
高齢者医療のアウトカムを見据え,高齢者に寄り添う診療を考えるため,本シリーズでは枢要と考えられる15領域を取り上げた.
本書ではこの診療における「大切な視点」を解説するとともに,各論巻の責任編集者による各領域の総説を掲載する.
序文
本シリーズのねらい─ 序に代えて
このたび,「高齢者マルチモビディティ パーフェクトガイド」(総論1巻,各論15巻)を刊行する運びとなりました.総論巻の冒頭にあたり,総編集者を代表して,本シリーズ刊行の経緯とともに,高齢者のマルチモビディティ(多疾患併存)について,一般医,専門医,ならびに医療専門職の皆様に特にお伝えしたい考えを序文として述べたいと思います.
私は皮膚科医として,過去40年余にわたり約250冊の医学書の編集に携わってまいりました.大学退任後,縁あって出身地である静岡県に社会健康医学系の大学院大学を設置するミッションを担い,開学後は学長として,医師および医療専門職の社会人教育を中心に,本学の発展に尽力してきました.本学の教育・研究・社会実装を貫くキーワードは「高齢者」です.自らもまもなく後期高齢者になろうとするこの時期に,社会健康医学の視点を活かし,一般医・専門医・医療専門職を対象とした高齢者医療の教科書を編みたいと念じてきました.
折しも,本学の副理事長に,内分泌学,高血圧,糖尿病,抗加齢医学を専門とされる伊藤裕・慶應義塾大学名誉教授をお迎えする機会を得ました.伊藤先生は「メタボリックドミノ」の概念を提唱され,「幸福寿命」「老化負債」など,独創的な視点から加齢医学を牽引されてきた泰斗です.本構想をご相談したところ,「単なる高齢者医学の書籍はすでに数多く存在するが,現在最も本質的な課題は高齢者のマルチモビディティである」と,まさに核心を突くご指摘をいただきました.この一言が,本シリーズのコアコンセプトを明確にしました.
さらにこの構想を具体化するにあたり,私は,高齢者医療・介護・福祉政策に関するシンクタンク機能と研究拠点機能を併せ持ち,健康長寿社会の実現に尽力されている国立長寿医療研究センター理事長の荒井秀典先生の存在を即座に思い起こしました.そこで京都大学時代からご厚誼を賜ってきた荒井先生に編集へのご参画をお願いしたところ,快くお引き受けいただき,ここに私を編集ファシリテーターとする「総編集」体制が整いました.三名で編集会議を重ね,高齢者医療をめぐる論点を整理し,本シリーズの基本理念を次のように定めました.
すなわち,超高齢社会となった日本において,高齢者が抱える多様な疾患の診療を担う機会は急速に増加していますが,多疾患を併存する高齢者を,いかに診るべきかについて明確な指針は必ずしも存在しません.高齢者向けガイドラインのない疾患を壮年者と同一の基準で治療してよいのか,一つの疾患に重きを置いた治療が他疾患にどのような影響を及ぼすのか―こうした悩ましい臨床局面において,高齢者のマルチモビディティに伴走する医師・医療専門職として,いかに包括的で患者さんに寄り添う診療を提供できるのか,というコンセプトです.
このコンセプトを出発点として,高齢者マルチモビディティを考えるうえで枢要と考えられる15領域を設定し,それぞれの分野の第一線の専門家に各論巻の責任編集をお願いしました.
本シリーズの編集を通じて,私が強く認識するに至ったのは,「高齢者マルチモビディティ医療の主役は一般医である」という事実です.疾患別ガイドラインは決して「足し算」で用いることはできず,ガイドライン遵守が必ずしも最善医療を意味するわけではありません.高齢者医療において優先されるべきアウトカムは,「病気」そのものよりも,患者個人の生活機能と価値観です.しかし,ここであらためて強調しておきたいのは,本シリーズが専門医療の重要性を相対化したり,専門性の価値を減じたりするものでは決してないという点です.専門医療は「深さ」において,一般医療は「広さ」において,それぞれ代替不可能な役割を担っており,両者は優劣の関係ではなく,相互依存の関係にあるからです.
新たな治療が他の疾患を悪化させていないか,その介入はその人の残された時間に見合っているのか―こうした問いを常に自問し,治療の優先順位を統合的に判断できるのは,日常診療の中で患者の全体像に向き合う一般医にほかなりません.専門医療は各臓器別には最適解を提供しますが,多疾患併存という文脈では,その部分最適の積み重ねが全体最適を損ねうることもありえます.もちろん専門医が提示する診断や治療選択肢は,高齢者マルチモビディティ診療における意思決定の基盤であり,その専門的判断なくして適切な統合医療は成立しえませんが,その構造的限界を補完する存在こそが一般医であると,私は確信しています.
本シリーズは,こうした理念を具現化するために,編集者一同が心血を注いで編み上げた渾身の成果です.本書が,すべての医師・医療専門職の皆様にとって,社会健康医学的データを含めた高齢者マルチモビディティの全体像を俯瞰する手引きとなり,現代の健康課題に対応しつつ「高齢者の思いと願いに寄り添う優しい診療」を実践するための有力なツールとなることを願ってやみません.マルチモビディティという視点からエビデンスと実践知を統合し,明日からの診療にお役立ていただければ,総編集者としてこれに勝る喜びはありません.
2026年5月
総編集者を代表して
宮地 良樹
京都大学名誉教授
静岡社会健康医学大学院大学学長
目次
Ⅰ 高齢者マルチモビディティ診療における大切な視点
1.高齢者の抱えるマルチモビディティの実態と論点 (荒井秀典)
2.ライフコース医療からみた高齢者の病態ランドスケープ (伊藤 裕)
Ⅱ 高齢者によくある疾患・症候からマルチモビディティを理解する
1.高齢者のフレイル・サルコペニア―マルチモビディティをふまえた予防とマネジメント (荒井秀典)
2.高齢者の認知症-認知症におけるマルチモビディティ (櫻井 孝)
3.高齢者の高血圧-高齢者マルチモビディティのハブ疾患としての高血圧 (伊藤 裕)
4.高齢者の脳卒中-マルチモビディティ時代の包括的診療の要点 (猪原匡史)
5.高齢者の心不全・不整脈-高齢者心不全・不整脈の包括的マネジメント (大迫亮介,田中敦史,野出孝一)
6.高齢者の肥満・体重減少(やせ)-病態解明の進歩をふまえた課題の認識と未来展望 (益崎裕章)
7.高齢者の糖尿病-マルチモビディティを基盤とした病態理解と個別化医療 (鈴木 亮)
8.高齢者のCKD-老年医学的視点でとらえるCKDとマルチモビディティ (角谷裕之,柏原直樹)
9.高齢者の精神障害(うつ・不眠)-マルチモビディティにおける精神症状 (安野史彦)
10.高齢者のがん-マルチモビディティを適切に管理してこそ,がん治療がうまくいく (長島文夫)
11.高齢者の骨粗鬆症・骨折-骨粗鬆症性骨折はマルチモビディティの増悪要因となる (鈴木敦詞)
12.高齢者の難聴・めまい-病態を複雑化し治療介入を難しくする,マルチモビディティとしての高齢者の難聴とめまい (内田育恵)
13.高齢者の摂食嚥下障害-マルチモビディティとしての摂食嚥下障害 (加賀谷 斉)
14.高齢者の排尿障害-マルチモビディティ構成疾患としての排尿障害 (後藤百万)
15.高齢者のポリファーマシー-見直しが必要なマルチモビディティの処方内容 (小島太郎)
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書籍情報
- ISBN:9784521751887
- ページ数:312頁
- 書籍発行日:2026年6月
- 電子版発売日:2026年7月15日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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