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- 新生児低酸素性虚血性脳症診療マニュアル
商品情報
内容
2010年以降、エビデンスに基づく低体温療法の啓発を牽引し続けてきたBaby Cooling Japan。2024年には軽症HIEを含めた長期発達を明らかにする新プロジェクト「BCJ-2レジストリ」を開始。BCJメンバーが満を持してまとめたHIE診療の知の結集。低体温療法適応症例を、出生前から冷却、退院からフォローアップまで、時系列で予測し診療するためのバイブル。
序文
序文
33. 5℃…、低酸素性虚血性脳症(HIE)児に導入される低体温療法の目標体温です。
一見わずかな差に見えますが、生体反応が37℃付近で最適化されている新生児にとって、この3.5℃の低下を安全に維持することは容易ではありません。
低体温療法とは、限られたエネルギーの節約と受傷カスケードの減速効果を、激烈な生体反応によって損なわないよう、ひたすら気を配り続けるきめ細かな管理が求められる治療です。
治療効果を最大化するためには、まずHIEの病態変化を深く理解し、「低体温療法の利益が不利益を確実に上回る児を選択する」ことが重要です。本書が“低体温療法マニュアル”ではなく『新生児低酸素性虚血性脳症診療マニュアル:常に予後を見据えた最強ナビゲーション』と名づけられているのは、この包括的な視点を重視しているためです。
本書では、HIE児の評価と管理について幅広く知ることができるように、出生前から急性期、退院準備、フォローアップまで、HIE児の評価と管理に必要な知識を最新のエビデンスに基づいて体系的に解説しています。実際の症例に向き合う際に参照しやすいよう、内容は分娩からの時系列に沿って構成しています。可能なかぎり実際の症例に遭遇する前に一読し、HIEの臨床像や低体温への反応の多様性を、生後の時間軸に沿って多次元的に理解していただきたいと考えています。
HIE児の管理では、NICUに入院する他の病態とは異なる所見や生体変量が多く、さらにその変化は時間とともに大きく揺れ動きます。これらの所見がHIEそのものによるのか、低体温治療によるのか、あるいは鎮静や循環作動薬など他の治療の影響なのかを読み解くことは、臨床判断の成否に直結します。
本書では、従来、一括りにされることが多かった複雑反応系を丁寧に整理し、「低体温療法の実施によって、誰が、どんな利益を受けるのか」「HIEの所見の広がりには、いつ、どんなものが含まれるのか」「低体温への生体反応にはどんなものがあり、HIEによってどう変化するか」を深く学べるよう設計しています。現実の症例では、相反する所見が共存することや、どちらに分類すべきか判断が難しい所見が必ず見られます。こんな時に、目まぐるしい生体情報の変化に惑わされることなく、根拠をもって判断し、むしろ変化を予測に生かすことができれば、異変を早期に察知し、有害事象を回避し、治療効果を最大化することが可能になります。
さらに、HIE児の家族にとっては退院が新たな第一歩となります。とくに定型発達が期待できない状態で退院する児では、“小舟で大海原に漕ぎ出す” ような不安な苦難の船出となります。退院が見えてきたころから、その時点で得られる最大の情報に基づいて発達レンジや特徴を予測し、家族と共有することで予測と現実の乖離が抑えられ、家族の受け入れ・備え・支援がしやすくなります。本書では、予測に基づいた準備と支援によって、急性期だけでなく慢性期の評価や家族支援についても情報を盛り込み、退院後の家庭生活がよりよいものとなるための準備と支援を重視しています。
HIE児の分娩、入院管理、外来フォロー、小児科卒業まで続く長い道のりを、医療チームが先回りして支え、適切な判断へ導けるように、また一人ひとりのHIE児と家族が読者の皆さまの先回りサポートを常に感じながら歩み、何度か訪れる重要な分岐点において最善の選択をしていける未来に向けて、本書が確かな道標となることを願っています。
2026年6月
【責任編集】
岩田 欧介(名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野教授)
柴崎 淳(神奈川県立こども医療センター新生児科部長)
目次
・序文
【序章】
この本で使われている略語と専門用語について
【第1章 出生から入院、診断まで】
1 新生児脳症と低酸素性虚血性脳症(HIE)および低体温療法
2 出生、NCPRから入院までに判断すること
3 搬送の実際
4 蘇生後のモニタリングと継続評価
5 aEEGモニタリングの見方
6 m-Sarnat評価による新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)診断
7 入院時に保護者と共有すること
8 新生児脳症の鑑別診断:体系的アプローチ
[Column1]重症仮死が予想される局面とは? 産科情報の判断、準備すること
[Column2]入院までの予後不良因子
[Column3]低酸素性虚血性脳症のメカニズムと、脳保護療法の作用点、そして低体温療法の効果
[Column4]いつ、どんなルートをとる?
【第2章 急性期の管理】
1 軽症児の管理
・1 軽症HIEとは?―診断とモニタリング・継続評価
・2 軽症HIEの体温管理と合併症への対応―入院中の管理
[Column5]軽症HIEの予後についてわかってきたこと
[Column6]軽症児について行われている臨床研究
2 中等症・重症児の管理~低体温療法を中心に
・1 冷却の決定・開始・完了まで
・2 標準的適応から外れる症例における低体温療法(Late cooling・早産児・軽症HIE)
・3 冷却児の体温管理
・4 低体温療法の有害事象
・5 冷却児の呼吸管理
・6 冷却児の循環管理
・7 予後を左右する冷却中の因子
・8 冷却児の神経学的所見の反復観察
・9 冷却児の鎮静
・10 HIEにおけるneonatal seizure
・11 Neonatal seizureの治療
・12 冷却児のその他の全身管理と合併症対策
・13 併用薬物療法(Add-on治療)
・14 復温時に注意すべきこと
・15 冷却中~復温完了までに保護者と共有すること
[Column7]珍しいが特異的な合併症、脂肪壊死について
[Column8]冷却いろいろ―冷却法にまつわる最新知識
[Column9]冷却に必要な機材の準備
[Column10]ガイドライン基準Bだけで十分か?
[Column11]重い予後が予想されるとき―家族の語りから学ぶ
[Column12]より効果的な低体温療法を求めて―適応拡大にまつわる最新知識
[Column13]より効果的な低体温療法を求めて―Add on治療の研究最前線
[Column14]Baby Cooling Japanレジストリと新しいBaby Cooling Japan-2レジストリ
[Column15]最適な血糖管理・栄養管理
3 急性期の看護
4 臨床心理士の対応
[Column BONUS:どう訳す? Neonatal seizure
【第3章 入院から退院までの予後予測とIC】
1 日本における低酸素性虚血性脳症児の予後
2 新生児HIEの総合的予後予測
3 aEEG、標準脳波などの電気生理学的検査からの予測
4 画像からの予測(主にMRIについて)
5 医療的ケアの導入から支援包囲網の構築へ
6 退院時のICで伝えること・家族と共有すること
[Column16]神経学的所見からの予測
[Column17]退院後に受けられる支援のまとめ(訪問看護やレスパイトなど)
【第4章 退院後のフォローアップと支援】
1 乳幼児期のフォローアップで留意すべき点、必要となるケアと支援
2 姿勢・運動発達のトラジェクトリーと外来で注意すべきこと
3 HIE児の言語・認知機能・高次脳機能予後:発達のトラジェクトリー
4 低酸素性虚血性脳症児の発達評価と発達支援介入
5 産科医療補償制度とその他の手続き
[Column18]栄養と成長で気をつけること
[Column19]合併症を残した低酸素性虚血性脳症児の就学・学齢期のケア
【第5章 管理の実際】
1 The Royal London Hospitalの場合
2 シンシナティ小児病院の場合
3 神奈川県立こども医療センターの場合
4 名古屋市立大学病院の場合
5 日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院の場合
【付録(ダウンロード資料)一覧】
・1 新生児低体温療法開始フローチャート:出生~NCPR~入院まで
・2 バイタルサインチェック用紙 経過記録シート/Thompsonスコア
・3 予後予測シート
・4 m-Sarnat評価/Sarnat分類
・索引
・WEB動画一覧
・WEB動画の視聴・資料ダウンロード方法
・執筆者一覧
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書籍情報
- ISBN:9784840491501
- ページ数:264頁
- 書籍発行日:2026年7月
- 電子版発売日:2026年7月14日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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