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- Visual Dermatology 2026年臨時増刊号 教養としての皮脂欠乏症
商品情報
内容
「皮膚科の診療現場で最も重要なのは臨床像からの鑑別診断」という編集方針のもと,全頁オールカラーで構成された皮膚科専門誌.見開きスタイルの症例報告を中心とした特集に加え,臨床にすぐに役立つ連載も充実.若手医師が皮膚科を学ぶのにも有用.
序文
羅針盤
「保湿剤なんてそこら中たくさん売っているんだから, 何も病院で保険適用しなくてもいいんですよ…….」報道番組でのキャスターコメントである.社会保障制度改革を主張する政党が与党となり,当然本邦では避けて通れない問題であるものの,その矢面に晒されるのは湿布や軟膏などの外用薬である.反面,二重曝露仮説などの報道は皆無であり,保湿剤は世論誘導が容易であるのかもしれない.
皮脂欠乏症は,皮膚科専門医にはもちろんのこと,すべての医療従事者が避けては通れない疾患である.高齢者のみならず生活環境変化により全世代でみられるこの疾患は,あまりにありふれているからか,皮膚科専門医以外の医療従事者すらエビデンスを軽視する(?)場面も多くみられる.皮膚・排泄ケア認定看護師は,高い技量と知識をもって皮膚トラブルのケアを行うが,時にワセリン有害説を唱えるオピニオンリーダーが存在する.「ワセリンは汗腺を塞ぐため皮膚の浸軟を来すことから使用してはならない!」との主張である.確かに,ワセリンは分子量が規定できない物質である.しかし,皮膚科専門医は,世にあまた存在する油脂性軟膏が,臨床試験で何ら問題なく薬剤として広く存在する事実からも,この理論には弱点があることを容易に理解する.
近年,皮脂欠乏症や保湿剤の基礎研究は急速に進み,新たなエビデンスが豊富に蓄積されている.皮膚科専門医がその知識を効率よく習得することはもちろん,広く医療従事者が個々の経験論で皮脂欠乏症を扱うのではなく,体系化された理論と実践を前に“教養として” の皮脂欠乏学を学び,推論疑問には皮膚科学との対話を通じて国民の健康福祉の向上に寄与することが,医療従事者に等しく課せられた責務と使命であろう.
本誌はその名の通り“ビジュアル” を特徴とする医学雑誌である.これまでも皮脂欠乏症のテーマが議論されたが,本誌の特性を活かせる分野かどうか,編集委員としては長らくの葛藤があった.しかし,昨今の社会情勢の変化を契機に,読者ニーズが高まったこのテーマ.今回,皮膚科専門医の先生方の知的好奇心を十分満足させ,あまねく医療従事者の基礎知識となるよう,研究と臨床のバランスをとった増刊号を世に問うこととした.重要と思われる内容はあえて重複させ,現在に至っても解決されていない問題はそのまま提示していただいた.お忙しいなか,御玉稿を執筆いただいた先生方にただただ感謝申し上げる次第である.
筆者の得意分野(?)で恐縮であるが,かつていくつもの財政難の自治体が,公営バスの運転士の賃金カットを行った.当時,民営バスとの報酬差が大きな問題となり,世論は「公務員が高給とはけしからん」とばかり拍手喝采であった.時を経て今,バス運転士は離職が進み減便の嵐.公共交通は崩壊寸前で住民の移動権が失われつつある.他方,海外では公共交通はインフラの要であり,税金導入による移動手段の確保が地域を活性化させるとのエビデンスが豊富に存在し,その教養をもつ市民は選択を誤らない.
今現在,皮脂欠乏症そして皮膚科診療は大きな転換期を迎えている.それは残念ながら医学ではなく,皮膚科専門医の関与が難しい政治の世界である.一朝一夕に政治家になれぬ医療従事者に求められるのは,最新のエビデンスを知り,世の中からの批判に耐えうる医学的根拠に基づいた皮脂欠乏診療を実践することであろう.ぜひ本誌を十二分にご活用願いたい.ただ,読者からは今回筆者の文章にしては珍しくオチがないとのご指摘をいただくであろう.ちょっぴり筆者にも教養がついたのかな……?
安部 正敏Abe Masatoshi
医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック 院長
目次
Part 1.皮脂欠乏症の病態update ─皮膚生理学的変化からみた皮脂欠乏症の病態
角層の構造と機能/ラメラ構造/アミノ酸/タイトジャンクション機能/微小循環ー基礎研究の視点から/微小循環-形成外科の視点から/基礎発汗からみた皮脂欠乏症の病態/皮脂量/基礎研究からみたヘパリン類似物質の作用機序
Part 2. 皮脂欠乏症の要因update ─外的変化からみた皮脂欠乏症の病態
加齢による皮脂欠乏症/外的要因から考える小児期の皮脂欠乏症
Part 3. 皮脂欠乏がみられる疾患update ─いわゆるドライスキンがみられる皮膚疾患
皮脂欠乏症を来す各種皮膚疾患(アトピー性皮膚炎以外)/合併ではなくアトピー性皮膚炎に付随する皮脂欠乏症/魚鱗癬における皮脂欠乏症/全身性疾患に随伴する皮脂欠乏症/医原性の皮脂欠乏症
Part 4. 皮脂欠乏症の診断治療update ─科学的根拠に基づいた皮脂欠乏症診療
皮脂欠乏症の診断/皮脂欠乏症の医療医薬品による治療/医療用医薬品以外の応用(化粧品・医薬部外品・OTC 薬ほか)/患者指導の極意/保湿剤の剤形選択と混合処方の注意点/皮膚科診療における保険診療の現状と課題
Part 5. 皮脂欠乏症診療の実際update ─鉄人に学ぶ!皮脂欠乏症診療
在宅での皮脂欠乏症診療/衣類と皮脂欠乏症/ヘパリン類似物質含有製剤の選択における基礎知識/皮脂欠乏症対策が鍵となるスキン-テアの理解/保湿剤の海外と本邦での位置づけの相違/薬剤師が行う皮脂欠乏症の患者指導/皮膚疾患ケア看護師が行う皮脂欠乏症患者指導
Part 6. 皮脂欠乏症治療薬の背景update-保湿剤はこう作られる!
バーチャル社会科見学!薬剤製造工場に行ってみた!
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書籍情報
- ISBN:9784059889823
- ページ数:130頁
- 書籍発行日:2026年7月
- 電子版発売日:2026年8月13日
- 判:A4変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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