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予後をどう予測し、どう対話するか? ACP、その前に
/ 金芳堂
- ページ数 : 220頁
- 書籍発行日 : 2026年8月
- 電子版発売日 : 2026年8月8日
商品情報
内容
序文
監修のことば
本書の主題は、「予後予測はどうやって患者・家族のしあわせに貢献するか?」―これに尽きる。
筆者と予後予測の付き合いは長い。医師になって6年目、筆者は黎明期のホスピス病棟で働いていた。日々わからないことの連続であったが、なかでも、「この方はあとどれくらいの予後が期待されるのだろうか」の問いに向き合うことが多かった。背景としては、栄養治療、放射線治療などの医学治療の適応を考えるうえで予測される生命予後が重要であるということ、もし時間が限られているなら患者・家族がしておきたいことができるようにしたいという願いがあった。しかし、当時、予後を予測する方法で系統だったものは世界中どこにもなかった(今日では信じられないかもしれないが、本当に何もなかったのである)。そこで、日常的にわかる情報でだいたいの予後が推定できる方法を作れないだろうかと自施設での患者データから開発したのがPalliative Prognostic Index(PPI)である。1999年5月にSupportive Care in Cancerという雑誌に掲載された1)。衝撃だったのが、まったく同じ時期の1か月違いで、イタリアのMaltoni MのグループがPaP scoreを発表した2)。いまのようにインターネットがないので、冊子の形態になってから届いたものを見て、「同じじゃん!!」とはじめて知るのである。自分の知らなかったこと、知りたかったことは世界でもわからないこと、開発していることなんだと、1冊の紙面のむこうに大きな世界のひろがりを感じた瞬間であった。
それ以降、本書前半にあるように予後予測指標の開発はピークを迎えていき、予後予測の手段は量的にも質的にも改善され続けている。一方、筆者はずっと思っていた―「予測精度が上がっていったとして、この予測はどうやって患者・家族の幸せにつながるのだろうか」。予測精度を上げる研究は進んでいるが、予測を患者・家族の幸せにつなげるかの視点がおきざりになっていないだろうか……そこへきてこの数年のACPブームである。ACPの文脈では、患者・家族に病状説明をして予後認識(prognostic awareness)を確認する。そのときに現場で聞かれるのが、「患者(家族)が予後をよくわかっていないみたいだから、説明しないと!」、「患者(家族)の理解が悪くて、病状が伝わっていないみたいなんです」という医療者のやり取りである。―待て待て、予後認識を正しくしたら患者は幸せになるんだっけ? 何のために病状説明をするんだっけ? ここがあいかわらずうまくつながらない。振り返って自分たちの臨床では、予後予測をしたからといってそれをそのまま患者・家族に伝えているわけではない。
筆者はいま思う―予後認識を経由しなくても、患者・家族の幸せに役立てることはできるのでは?〠予後認識を経由しなくても、患者・家族のしたいことができることを目指したケアはたしかにできる、と。本書後半では、「予後を伝える(告知する)」のではなく、「予後予測をもとにして、患者・家族とどう関わるか」を文章化した。「伝え方」にも触れているが、それはごく一部である。予後を伝えたとしても伝えないとしても、わたしたち医療者にはこんなにいっぱいケアの切り口がありますよ―ここを伝えたい。具体的に文章化されている「今後の変化を実感をもってイメージできるように説明する臨床の技」、「時期を早める提案をするときの臨床の技」は、いずれも、予後認識を経由しなくても、患者・家族のしたいことを手助けできる臨床の智である。言いたいことの解像度を上げるために、ああそういうことか! と居酒屋で飲んでいたら口伝とするようなことをなるべく多くコラムで紹介したのであわせて楽しんでもらえれば幸いである。
さて、本書の執筆をしてくれた三人を紹介したい。前半の予後予測の方法を担当した平塚裕介先生は、臨床をやりながら、多くの臨床研究を驚くべき速さで遂行している。ときどき、「森田先生が若いとき出始めた頃に似ているよ」と同輩から言われることがある(それはそれで、僕こんな感じだっただろうか……とやや微妙な気持ちになるが、笑)。予後予測研究における国際的にもエキスパートのひとりである。後半の予後予測をふまえてどう患者・家族に関わるかを担当した内藤明美先生は、聖隷三方原病院で一緒に臨床をしていた。いい意味で「普通の人々の気持ち」のわかる医師である。「そんなこと言ってるのお医者さん(医療者)だけですよ!」と口に出しては言わないが、事態の本質をさらっと見抜く力に秀でている。そんなひとだから自然体で患者・家族の絶対的な信頼を得ていた。本書のスパイスとして田代志門さんには倫理学・社会学の面から予後予測一味加えてもらった。人文・社会科学の知識をつねに学問として完成させるだけでなく、臨床の判断の下支えとして考えてくれるのが本当にありがたい。この三人が本書の執筆にあたってくれたことはまさにこれ以上にない喜びである。さいごになるが、本書は監修者・執筆者からの申し出ではなく、出版社からの招待がきっかけとなった。貴重な機会をくださった金芳堂編集部の石井木綿子さんに感謝したい。
本書を通じて、予後予測をする方法を知り、そのうえで、予後予測をしたらそれを患者・家族の幸せにどう生かしていくか、とくに予後認識に直接はたらきかけなくてもケアはできることがひろく知られることを願っている。
参考文献
1) Morita T, et al. The Palliative Prognostic Index: a scoring system for survival prediction of terminally ill cancer patients. Support Care Cancer. 1999 May;7(3):128-133.
2) Maltoni M, et al. Successful validation of the palliative prognostic score in terminally ill cancer patients. Italian Multicenter Study Group on Palliative Care. J Pain Symptom Manage. 1 9 9 9 Apr;17(4):240-247.
※2つの発表日が1月しか離れていないことに注目。
2026年さくらの頃に
聖隷三方原病院緩和支持治療科
森田達也
目次
PART1 予後を予測する方法-方法・実際・限界
1 予後予測尺度総論
A 予後予測尺度が作られてきた歴史
B 現在までの予後予測尺度 研究のまとめ
C どのように予後予測尺度が作成されるのか?
D 予後予測尺度の精度の評価について
E ESMOの予後予測ガイドライン
2 臨床的予後予測
A 臨床的予後予測の精度について
B 職種ごとの臨床的予後予測の精度の違い
C 臨床的予後予測の精度に影響を与える因子について
D サプライズクエスチョン
E どうにも予測が難しい場合
3 月単位の予後予測
A 月単位の予後予測を行う意義
B 各予後予測尺度の紹介
C ESMO予後予測ガイドラインの推奨
D 実際の使い分け
4 週単位の予後予測
A 週単位の予後予測を行う意義
B 各予後予測尺度の紹介
C 各予後予測尺度の比較
D ESMO予後予測ガイドラインの推奨
E 実際の使い分け
5 日単位の予後予測
A 日単位の予後予測を行う意義
B 予後予測方法の紹介
C ESMOの予後予測ガイドラインの推奨
D 実際の使い分け
E バイタルサインは日単位の予後予測に有効か?
6 現在の予後予測の限界とこれから
A 現在の予後予測の限界
B 今後の研究展開
PART2 予後予測をした、その先どうするのか?
1 総論
予後予測、その先にあるもの
2 各論
1 患者から「あとどのくらいですか?」と聞かれたとき
2 患者はやりたいことを口にしているが、予後予測からみると達成できるか微妙なとき
3 患者は余命を知りたいというが、家族が反対しているとき
PART3 臨床倫理・社会学からみた予後予測
予後告知に関する倫理的ジレンマ―家族が「本人には伝えてほしくない」と言うときにどうするか?
COLUMN
ESMO予後予測指標ガイドライン裏話
臨床的予後予測(CPS)の精度の研究の解釈は発表年が重要
サプライズクエスチョンとGold Standard Framework
D-PaPの精度が上がらなかったわけ
Abbreviated Mental Test Scoreは医師の代理評価でよい
Feliu Prognostic Nomogram(FPN)
予後予測指標の比較が難しい理由
決定樹モデルのつらいところ
「今日は大丈夫ですか?」に答えるために
予測が事実となる時代:ほどほど外れる予測のほうがいいのでは?
今日は帰っていいですか? の今後の研究案
そのうち良くなる
「わかってもらわなければ!!」は届かない
話やすい雰囲気はどこからくるのか
予後を尋ねた理由が想定外だった件-その1
予後を尋ねた理由が想定外だった件-その2
元気なときは予後を知りたくても、いざ現実になったら……
カレンダーに赤い丸
あの先生、おれが死ぬまでのことがわかってるみたいだなの件
非現実的な希望でも良い:非現実的な希望が現実になった件
「理解が悪い」は表現としておかしい
非現実的な希望でも良い:亡くなる直前でも
希望は特別な何かとは限らない
コミュニケーションのほとんどは非言語的:内藤先生の場合
どうして予後を伝えたいと思うのか?-医療者のひとりよがりな心残り
予後を予測してできる限りの対応をしても、心残りはなくならないもの
人の気持ちは揺れ動くもの
悪い話は絶対に聞きたくない、でも本当はわかっているからこそ今を大事にしたい
どうしても家族が患者に伝えるものを拒むとき:家族も患者の一部vs relational autonomy
「予言の自己成就」としての予後告知
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書籍情報
- ISBN:9784765321112
- ページ数:220頁
- 書籍発行日:2026年8月
- 電子版発売日:2026年8月8日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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