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- レジデントノート増刊 Vol.28 No.11 心不全診療実践ガイド
商品情報
内容
ガイドラインを知っていても,実際の診療では迷いやすい心不全の診療.本書では,初療から,病態評価,急性期治療,慢性期管理,退院設計まで,何を見て,どこで方針を変えるかを,エキスパートの思考プロセスとともに具体的に解説.問診・身体所見,心エコー,利尿戦略,薬物療法,栄養療法,心リハ,併存疾患があるときなど,現場で本当に役立つ判断軸が身につきます.
序文
序
私自身も,心不全診療を続けるなかで「教科書やガイドラインではわかっていたはずなのに,目の前の患者さんでは迷ってしまう」という場面にしばしば出会います.
救急外来で呼吸困難の患者さんを前に,まず何を確認し,どの時点で循環器医に相談するのか.利尿薬を投与したあと,尿量や腎機能の変化をどう評価し,どこまでうっ血解除を進めるのか.血圧が低い,脈が遅いか早い,腎機能が悪い――そんな患者さんに,心不全治療薬をどのような順番で導入するのか.こうした問いには,必ずしも1つだけの正解があるわけではありません.
2025年に本邦の心不全診療ガイドラインが改訂され,診断,急性期治療,薬物・非薬物療法,併存疾患への対応まで,現在の心不全診療に必要な知識は大きく整理されました.一方で,実際の診療では,その推奨を目の前の患者さんにどう当てはめるかという,もう一段階の判断が必要になります.本増刊号では,そこを第一線で診療されている先生方の経験と思考をお借りしながら,できるだけ具体的に言葉にしてみたいと考えました.本誌が重視する「現場感覚・実践」「思考プロセス」「エビデンス」という方針とも,まさに重なる部分です.
現在の心不全診療を考えるうえで,患者さんの高齢化も避けて通れません.ただし,年齢だけで患者さんをひとくくりにすることは,ますます難しくなっています.同じ80歳でも,元気に仕事や旅行を続けている方もいれば,フレイルや低栄養,腎機能障害,悪性腫瘍など複数の問題を抱えている方もいます.心不全だけを治療すれば診療が完結する患者さんは,むしろ少ないのかもしれません.
だからこそ,これからの心不全診療では,死亡を減らすことだけでなく,心不全増悪をできるだけ早く捉えて防ぐこと,入院をくり返さないこと,そしてADLやQOLを保ちながら,その人らしい生活をできるだけ長く続けてもらうことが,ますます大切になると感じています.心不全診療のゴールは,単に「長く生きる」ことではなく,「よい状態で過ごせる時間」を少しでも延ばすこと,と言い換えてもよいかもしれません.
そのような思いから,本書では心不全診療を1つの時間軸として構成しました.救急外来での最初の1 ~ 2時間,問診・身体所見,心エコー,心不全増悪のトリガー探索,急性期リスク層別化からはじまり,心原性肺水腫,心原性ショック,ACS合併心不全へと続きます.おのおのの治療のなかでの利尿戦略,血管拡張薬や陽圧換気療法,強心薬・昇圧薬の使い方のピットフォール,そして急性期を乗り切った後のFantastic 4,心臓リハビリテーション,栄養療法,QIに基づく退院設計までを一続きの診療として扱いました.また,CKD,貧血・鉄欠乏,感染性心内膜炎,肥満,担癌患者,遺伝学的検査など,心不全診療の周辺にありながら,実際には日々の診療で避けて通れないテーマもとり上げています.心不全を「心臓だけの病気」としてみるのではなく,患者さん全体をみるための入口として捉えていただければと思います.
各項目の執筆にあたっては,知識を網羅していただくことよりも,「先生なら,まず何をみますか」「どこで方針を変えますか」「何を危険なサインと考えますか」といった,診療の際に頭のなかで実践されている判断をできるだけ言葉にしていただくことをお願いしました.ガイドラインの推奨を,そのまま覚えるのではなく,患者さんごとにどう使うのか.その間にある小さな「翻訳」が,本書の中心にあると考えています.
さらに,本書では各項目のキーポイントを1枚にまとめた概要図を設けています. 時間に余裕がないときには,まずこの1枚を見て,その稿で大切な判断軸やピットフォールをつかんでください.そのうえで本文を読み,診療後にもう一度図へ戻る.あるいは,上級医が若い先生に説明するときに使う.そのように,読むためだけでなく,診療や教育の場で使っていただける1枚になればと思っています.
本増刊号の主な読者は研修医・専攻医の先生方ですが,救急・集中治療,総合内科をはじめ,日常診療で心不全患者さんに接するさまざまな先生方にも手にとっていただければ幸いです.ガイドラインを「知っている」ことから,目の前の患者さんについて「考え,選び,次の一手を決める」ことへ.本書が,その間を少しだけ埋める1冊になれば,編者としてこれ以上うれしいことはありません.
2026年8月
慶應義塾大学医学部 循環器内科
白石泰之
目次
第1章 心不全の診断や病態評価について教えてください
1. 心不全を疑ったらどうする? ~最初の1時間,次の1時間【長央和也】
2. 心不全の心エコー ~スキルセットのミニマム【内山沙央里,鍵山暢之】
3. 心不全増悪の犯人を突き止める!【市原(川久保)裕美子】
4. 心不全リスク層別化の実践 ~入院/ICU/帰宅の線引き【田村匡史】
第2章 非代償性心不全の治療について教えてください
1. 急性期の利尿戦略 ~診療ガイドラインのアルゴリズムを“実装する”【鈴木 翔】
2. 心原性肺水腫の勝ち筋はこれ! ~酸素・陽圧・血管拡張薬の3本柱【堀内 優】
3. 「血圧低いです」で迷わないための強心薬・昇圧薬の思考法【仲野 類,藤本 恒】
4. 心原性ショックは“時間との勝負” ~右心カテで見極め,MCSのタイミングを逃さない【佐藤琢真】
5. ACS 合併心不全 ~侵襲的戦略の判断フレーム【田巻庸道】
第3章 心不全の入院・外来管理について教えてください
1. 非専門医でも安全に回せるFantastic4 ~導入順序・例外時の対応処理・増量計画【竹内真介,河野隆志】
2. 急性期から維持期の心リハ・運動療法 ~活動量設定と非心肺運動負荷試験(非CPX)での運動処方【髙林健介】
3. 栄養療法:急性期から回復期に何に気をつける? ~『過度の制限』を避けるコツ【衣笠良治】
4. 心不全のQI 指標で見る“入院中に絶対やるべきこと”【北井 豪】
5. 心不全における遺伝学的検査の実情:効くところ,まだ課題なところ ~肥大型心筋症を例に【武井 眞】
第4章 他疾患に併存した心不全の診かたを教えてください
1. CKD 合併心不全はどう診る? ~腎予後も見据えた病態理解と包括的マネジメント【加藤恵理】
2. 貧血・鉄欠乏合併心不全:エビデンスのはざまでの実践的アプローチ【豊田俊彬】
3. 心不全診療における感染性心内膜炎【新美望】
4. 肥満合併心不全:日本での位置づけとインクレチン製剤時代の考え方【夜久英憲】
5. 担癌患者の心不全:腫瘍循環器を非専門医も扱えるように【進藤彰人】
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書籍情報
- ISBN:9784758127592
- ページ数:191頁
- 書籍発行日:2026年9月
- 電子版発売日:2026年9月16日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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