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自閉スペクトラム症者の描画表現 自己理解と他者関係への心理的影響

  • ページ数 : 344頁
  • 書籍発行日 : 2026年1月
  • 電子版発売日 : 2026年10月6日
¥9,240(税込)
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商品情報

内容

自閉スペクトラム症者が社会的な生きづらさを抱える背景として、自己の感情の理解・コントロールや他者との交流・社会的参照の困難さに着目。非言語的な視覚的ツールである「描画」を通した自己表現による影響を検討し、新たな支援方法を模索する。

序文

はじめに


本書は,自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:以下,ASD とする)がある人の自己表現の問題に着目し,描画表現を通した「自己」と「他者」への影響について論じるものである.

ASD とは,「社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥」および「限定された反復的な行動,興味,または活動の様式」が発達早期より出現し,生涯にわたって継続する神経発達症である(American PsychiatricAssociation, 2022 髙橋・大野監訳,2023).近年では世界的にASD と診断される人の数は増えており,米国疾病予防管理センター(CDC)の2022 年の調査では,子ども(8 歳児)の31 人に1 人に診断がついていると推計され,2000年には150 人に1 人だったことと比べ,大幅な増加が見られる(CDC, 2025).ASD 者は,特に,社会的コミュニケーションや対人的相互作用の障害があるために生きづらさを抱えやすく,社会参加が難航する(Tantam & Girgis, 2009).たとえばASD 者は,話し言葉で表現する際,定型発達者と比べて,話し方やぎこちなさから否定的な印象を持たれ,不利な立場になりやすい(Sasson et al.,2017).このような立場により,ASD 者の自己表現が見逃され,経験や思いが十分に共有されないのだとしたら,それは当事者の生きづらさにつながるだけではなく,社会の損失ではないだろうか.

本書を通じて,これまで言語的な手法に偏っていたASD の研究に描画表現という非言語の視覚的ツールを介在させることで,ASD 者の体験が可視化され,自己に対する理解や他者との関係に関して新たな方向性からの検討が行われるようになることが期待される.さらに臨床心理学的にも,ASD の支援において描画表現を取り入れることの有効性に関して新たな視座を得ることが考えられ,研究と臨床の両面において意義を示すことが期待される.

なお,本書で紹介する筆者の一連の研究では,研究協力者のうち2 名は調査時点でASD の確定診断を受けていないものの,主治医から「ASD 疑い」とされている(そのうちの1 名については,後年にASD の確定診断がついている).昨今,確定診断の基準を満たさない閾下のAS(Autism Spectrum)傾向者が,メンタルヘルスの問題で相談機関に訪れるというケースが多い(岡本・三宅・永澤,2017)ことから,広い意味でのAS 特性を持つ成人も対象に含める.したがって,主治医によりASD の確定診断または疑いと判断された人を,「ASD がある人」「ASD 者」もしくは「ASD の人」と表記する.また,近年の傾向としてASDではなくASC(Autism Spectrum Condition)と表記された先行研究を多く引用しているが,本書ではASD の表記に統一している.なお,アスペルガー症候群,広汎性発達障害についても,DSM-5-TR(American Psychiatric Association, 2022 髙橋・大野監訳,2023)の基準に従ってASD に含める.

近年,言語的なやりとりそのものには支障がないものの,不適応を抱えて,ASD をはじめとする発達障害の診断や治療を希望する成人の受診者が急増していると言われる(岩波,2023).そこで,知的障害との併存については研究1の研究協力者の一部に認められているものの,研究1 〜7 においては言語的なやりとりに支障のないことを研究協力の条件としている.そのため,研究協力者は原則として高機能ASD 者となることを明記しておく.


目次

はじめに

Ⅰ 自閉スペクトラム症者は本当に自己表現ができないのか

1 なぜ自己表現としての描画表現が必要なのか

2 自閉スペクトラム症者はなぜ自己理解が難しいのか

3 本書の目的と構成

コラム1 日本における多様な芸術表現活動の展開

Ⅱ 自閉スペクトラム症者の日常的な描画表現による体験プロセス

4 描画表現を介した自己と他者にまつわる体験プロセス(研究1)

5 長年の描画表現を通した他者関係と自己の体験構造(研究2)

コラム2 Autisticな特徴を持つアーティストたち

Ⅲ 新たに取り組む描画表現と他者との語りによる自己への作用

6 自分描画法とPAC分析による自己理解の検討(研究3)

7 自己理解に相違性が見られた2事例の比較(研究4)

8 描画表現の繰り返しによる自己への作用の変化(研究5)

Ⅳ ICTを活用した描画コミュニティへの参加による効果

9 他者関係に着目した描画表現の実践からの検討(研究6)

10 フォーカスグループの分析から見えてくる自己表現の意味 (研究7)

コラム3 描画表現をめぐる豊かなやりとり

Ⅴ 自閉スペクトラム症者の自己理解と他者関係を深める支援を目指して

終 描画表現から明らかになる「自己」と「他者」の関係のあり方

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書籍情報

  • ISBN:9784130161275
  • ページ数:344頁
  • 書籍発行日:2026年1月
  • 電子版発売日:2026年10月6日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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