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- 脳神経外科領域の感染・SSI対策ガイドライン
商品情報
内容
序文
序
この度『脳神経外科領域の感染・SSI対策ガイドライン』を上梓することになり,誠に喜ばしい限りであります.
一般社団法人 脳神経外科手術と機器学会(CNTT)の学術企画委員会に井川房夫先生から「脳神経外科領域の術後感染予防抗菌薬適正使用ガイドライン作成および抗菌薬適正使用に関する研究」についてのご提案をいただいたのは2020年になります.CNTTは脳神経外科手術と機器に関するあらゆる分野の進歩を図り相互の知識の交流を行うことを目的として1992年に発足しました.過去には脳神経外科手術や機器の診療報酬改定要望を提出し,承認された実績もあり,一般社団法人 日本脳神経外科学会の関連学会として様々な活動をしております.学術集会では形成外科の先生も多く所属されている日本整容脳神経外科学会(JSAN)と同時開催しており,一般社団法人 日本形成外科学会の協力も得て,井川先生のご提案を検討することになりました.
ガイドライン作成要望の背景には,これまで脳神経外科領域単独の術後感染症対策に対するガイドラインがなく,公益社団法人 日本化学療法学会と一般社団法人 日本外科感染症学会作成の「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」の一部を参考にして臨床が行われてきた経緯があります.また,脳神経外科診療の質をさらに向上させるとともに,今後の若い脳神経外科医にとって診療の指標となる標準的なガイドラインを整備する必要性があるとの認識から,一般社団法人 日本脳神経外科学会の監修のもと,CNTTとJSANが中心となって新たなガイドラインの作成を進めることになりました.手術と機器に関する領域横断的なガイドライン作成を行う学術団体としてCNTTは最適な学会でした.本邦の脳神経外科のデータを集積するため,2020年に,公益社団法人 日本化学療法学会,一般社団法人 日本外科感染症学会とCNTTとの合同で,抗菌薬の使用状況,術後感染対策に関するアンケート調査を一般社団法人 日本脳神経外科学会会員に対し行いました.その結果を参考にして今回のガイドラインを作成しております.
ガイドライン作成に当たっては一般社団法人 日本脳神経外科学会の承認を得て,その分科会・関連学会である一般社団法人 日本脊髄外科学会,一般社団法人 日本定位・機能神経外科学会,一般社団法人 日本てんかん学会,一般社団法人 日本脳神経血管内治療学会,一般社団法人 日本脳神経外傷学会,一般社団法人 日本脳卒中の外科学会,一般社団法人 日本脳腫瘍の外科学会,一般社団法人 日本神経内視鏡学会,一般社団法人 日本小児神経外科学会,一般社団法人 日本間脳下垂体腫瘍学会,日本頭蓋底外科学会,一般社団法人 日本形成外科学会からの委員推薦をいただき,文献検索からエビデンスレベルと推奨グレードの設定までたいへんご尽力いただきました.
今後はガイドライン作成にもAIを取り入れる時代が来ています.まずは文献検索の補助から始まると予想されますが,AIの進歩は予想よりも早く,本ガイドラインの改訂時には違った形のガイドライン作成方法になる可能性があります.
本ガイドラインが,脳神経外科診療に従事される医師のみならず,看護師,薬剤師,感染対策チームをはじめとするすべての医療スタッフにとって,手術部位感染(surgicalsite infection:SSI)予防における羅針盤となり,患者の安全と医療の質向上に寄与することを心より願っています.
最新の知見と現場の実情を反映した本ガイドラインを皆様の日々の臨床活動の一助としてご活用いただければ幸いです.
2026年9月
一般社団法人 脳神経外科手術と機器学会 理事長
日本整容脳神経外科学会 理事長
札幌医科大学医学部脳神経外科 教授
三國信啓
発刊にあたって
感染対策には,独自の困難性がある.開頭術,経鼻手術,頭蓋底手術,脳脊髄液シャント術,脊椎脊髄手術,頭蓋形成術,脳血管内治療,機能的デバイス植込み術など,対象術式はきわめて多彩であり,中枢神経系という不可逆的障害を招きうる臓器を扱う特性上,感染の臨床的帰結はしばしば重篤となる.さらに,長時間手術,再手術,髄液漏,緊急手術,インプラント・人工物・デバイスの使用,鼻副鼻腔や皮膚常在菌叢との接点など,脳神経外科特有の条件が複雑に重なり合う.そのため,一般外科あるいは他領域の手術部位感染(surgical site infection:SSI)予防原則を単純に援用するのみでは,臨床現場が直面する判断の精度を十分に高めることはできない.
これまで本邦においても脳神経外科領域以外の領域では,周術期感染対策や予防的抗菌薬適正使用に関する指針は整備されてきたが,脳神経外科領域の多様な術式と実臨床上の論点を横断的に整理し,SSI対策を総合的に論じた指針は十分とは言えない.とくに本領域では,抗菌薬の選択や投与期間のみならず,術前評価,皮膚・鼻腔管理,術中無菌操作,髄液ドレナージ管理,創閉鎖,頭蓋形成材料や植込みデバイスの取り扱い,術後サーベイランスまでを一体のものとして捉える必要がある.こうした認識のもとに,本ガイドラインは,脳神経外科領域の感染症・SSI対策を,術式特異性と学際性の双方を踏まえて日本脳神経外科学会および各関連学会の協力を得て再構成することを目指して企画された.
刊行にあたり,各関連学会の理事長,理事会,作成委員,班長,班員,事務局,ならびに本作業を支えてくださったすべての関係者に深甚なる敬意と謝意を表する.本ガイドラインは,完成をもって完結することはなく,今後の実装,検証,改訂を通じて磨かれていくべき共有財産である.脳神経外科診療に携わる多職種が本書を共通基盤として用い,患者安全の向上と診療の質改善に結び付けていただければ,委員会としてこれに勝る喜びはない.
2026年9月
脳神経外科領域の感染・SSI対策ガイドライン作成委員会 委員長
島根県立中央病院脳神経外科
井川房夫
札幌にて,脳神経外科学会学術総会を前に
目次
発刊にあたって
脳神経外科領域の感染・SSI対策ガイドライン担当一覧
監修・編集・協力学会
ガイドライン作成の経緯と目標
ガイドライン作成の方法と注意点
今後と改訂
推奨度とエビデンスレベル
略語一覧
1 脳卒中の外科領域
BQ1-1 術中3 ~4時間毎の抗菌薬の追加投与は必要か?
BQ1-2 術創部の十分な止血はSSI予防に寄与しうるか?
CQ1-1 術中に留置する髄液ドレナージ(脳室,脳槽,腰椎ドレナージ)はSSIを増加させるか?
CQ1-2 髄液ドレナージ留置中は抗菌薬の継続投与が必要か?
2 脳腫瘍の外科領域
BQ2-1 手術時間の長さと感染は関連するか?
BQ2-2 髄液漏(皮下髄液貯留)は感染と関連するか?
CQ2-1 術中覚醒下手術(awake surgery)はSSIの発生率を増加させるか?
CQ2-2 開頭脳腫瘍摘出術においてステロイドの周術期使用はSSIの発症率を増加させるか?
3 神経内視鏡領域
BQ3-1 神経内視鏡手術は非内視鏡手術に比べ感染・SSIのリスクは高いか?
CQ3-1 感染性疾患(脳膿瘍,脳室炎など)に神経内視鏡手術を用いることは妥当か?
4 間脳下垂体腫瘍領域
CQ4-1 経鼻手術におけるSSI対策としての推奨抗菌薬,投与期間は?
術前SSI高リスク症例(クッシング病や下垂体機能低下例も含む)ではどうか?
鼻腔内MRSA保菌者では?
CQ4-2 術中髄液漏の程度(Esposito grade)によって推奨抗菌薬,投与期間を調整する必要があるか?
CQ4-3 経鼻手術におけるSSI対策として,抗菌薬投与の他に有効な検査や処置は?
術前鼻腔粘液培養の必要性は?
術前副鼻腔炎合併症例の対応は?
5 頭蓋底外科・形成外科領域
CQ5-1 頭蓋底手術後の死腔に対して充填術を行う場合,遊離脂肪組織などの血流のない組織や人工物を用いた充填術は,血流のある組織を用いた充填術に比べ推奨できるか?
6 脳神経外傷領域
CQ6-1 減圧開頭術など,二期的に頭蓋骨形成術を行う場合のSSI対策として有効なのは何か?
CQ6-2 開放性頭蓋骨骨折(副鼻腔や骨含気腔の開放を含む),穿通性脳損傷などの汚染創に対する手術を行う場合,SSI対策として有効なのは何か?
7 脊髄外科領域
BQ7-1 脊椎脊髄SSIの発症リスク要因は?
BQ7-2 硬膜内操作を行う脊椎脊髄手術SSIの疫学は?
CQ7-1 術中処置としてSSI予防効果をもつものはあるか?
CQ7-2 術後感染時にインプラントは抜去すべきか?
CQ7-3 脊椎脊髄手術での術中硬膜開窓・損傷時の感染予防法は?
8 小児神経外科領域
BQ8-1 小児神経外科手術において二重手袋着用は推奨されるか?
BQ8-2 小児神経外科手術において執刀前抗菌薬投与は推奨されるか?
CQ8-1-1 脳室腹腔シャント手術において,シャント感染症予防としての術後抗菌薬投与は勧められるか?
CQ8-1-2 シャント感染症予防としての術後抗菌薬投与の推奨期間はどのくらいか?
CQ8-2 脳室腹腔シャント手術において,抗菌薬含有カテーテルの使用は推奨されるか?
CQ8-3 脊髄髄膜瘤の修復術後の体位は腹臥位が勧められるか?
9 脳血管内治療領域
BQ9-1 脳血管内治療に関連する感染の病原体として主に想定されるものは何か?
BQ9-2 脳血管内手術において一般原則として実施されている感染管理の基本的項目は何か?
CQ9-1 脳血管内治療において,感染予防を目的とした抗菌薬の術前投与は推奨されるか?
CQ9-2 術後管理(例えば,デバイス留置後のフォローアップや感染徴候のモニタリング)はSSIや血流感染を防ぐのに効果的か?
CQ9-3 術後の抗菌薬継続投与の必要性や,術後管理の具体的なプロトコールは?
10 てんかん外科領域
CQ10-1 迷走神経刺激療法(VNS)の際にSSIを防ぐための周術期管理は?
CQ10-2 頭蓋内電極留置(慢性硬膜下電極,定位的頭蓋内脳波など)の際にSSIを防ぐための周術期管理は?
11 定位・機能神経外科領域
CQ11-1 デバイス植込み手術において,標準的感染対策バンドルを遵守することはSSIの予防に推奨されるか?
CQ11-2 デバイス植込み手術において,バンコマイシン(VCM)パウダーの局所投与はSSIの予防に推奨されるか?
付記 脳神経外科手術に供する手術器械の洗浄・滅菌に関する基本的考え方
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書籍情報
- ISBN:9784758323802
- ページ数:144頁
- 書籍発行日:2026年10月
- 電子版発売日:2026年10月6日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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