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- 介護老人保健施設における医療のすべて
商品情報
内容
序文
はじめに
介護老人保健施設(以下,老健)は,在宅復帰・在宅療養支援を目的として創設された施設ですが,この四半世紀でその役割は大きく変化しました。現在では,高齢者の生活を支える地域の拠点として,医療・介護・リハビリテーションを一体的に提供する重要な役割を担っています。
私は2000年より秋田県雄勝郡羽後町の介護老人保健施設照隅苑に非常勤医師として勤務し,2017年からは栃木県那須塩原市の国際医療福祉大学介護老人保健施設マロニエ苑施設長として老健医療に携わってまいりました。私が老健に関わり始めた2000年頃は,比較的状態の安定した高齢者が多く入所されていた印象があります。しかし,社会全体の高齢化が進んだ現在では,入所者のさらなる高齢化とADLの低下に加え,多疾患併存,フレイル,サルコペニア,認知症,摂食嚥下障害などを有する医療ニーズの高い高齢者が数多く生活する場へと大きく変化しました。
このような変化に伴い,老健施設管理医に求められる役割も大きく変わりました。高齢者にみられる幅広い疾患を理解し,それぞれの病態を適切に診療するとともに,多職種と連携しながら生活を支える医療を実践する能力が,これまで以上に求められるようになっています。老健施設管理医は,もはや「施設の嘱託医」ではなく,老年科専門医に求められる包括的な診療能力を備え,高度な高齢者総合診療を実践することが求められる時代になっています。
一方で,老健は医療を提供する施設であると同時に,高齢者が日々の生活を送り,人との交流や季節の行事を楽しみ,自分らしい人生を過ごす「生活の場」でもあります。そのため,老健における医療は,疾患を治療するだけではなく,利用者一人ひとりの身体機能や認知機能,栄養状態,生活環境,さらには人生観や価値観を理解し,「その人らしい生活」を支える医療でなければなりません。
本書は,このような老健医療の実践を体系的に学ぶことができる一冊を目指して企画されました。共同監修には,同じく東京大学医学部老年病学講座で研鑽を積み,現在は本学医学部老年病学講座教授として,老年医学・老年医療の発展に寄与するとともに,数多くの学術的業績を有する小島太郎先生をお迎えしました。小島先生は千葉県成田市の本学附属成田老年医療福祉センターセンター長として,私は栃木県那須塩原市の本学附属介護老人保健施設マロニエ苑施設長として,それぞれ異なる地域で老健医療の実践と教育に携わっております。このような両施設での経験を踏まえ,老健施設管理医に必要な医学的知識を老年医学の視点から体系的に整理し,日常診療に直結する実践書となるよう編集いたしました。
本書では,高齢者総合機能評価,ポリファーマシー,感染症,循環器疾患,呼吸器疾患,糖尿病・内分泌疾患,骨粗鬆症,サルコペニア,認知症,神経疾患,腎疾患など,老健で日常的に遭遇する疾患を幅広く取り上げました。さらに,ACPやエンドオブライフケアなど,人生の最終段階まで見据えた老健医療についても解説しています。執筆は本学医学部教員を中心に,各分野の第一線で活躍する専門家の先生方にお願いしました。本学医学部では,超高齢社会に適応した高齢者医療を実践できる医師の育成を目標に,臨床・教育・研究を三位一体として推進しております。本書は,そのような理念のもと,日々の診療経験と最新のエビデンスを融合させ,「明日から老健で実践できる医療」を目指して執筆されたものです。
本書が,老健施設管理医をはじめ,老健に携わる医師の日常診療の一助となることはもちろん,介護老人保健施設で臨床実習を行う医学生にとって,老健医療を体系的に学ぶための教科書として,また,将来,老年医学や地域医療を担う若い医師にとっての道標となれば幸いです。
老健医療の質は,老健施設管理医の知識と判断,探して多職種との連携によって大きく左右されます。本書が,多くの先生方の日々の診療を支え,我が国の老健医療のさらなる発展に寄与することを心より願っております。
2026年8月
国際医療福祉大学医学部老年病学講座 教授
介護老人保健施設マロニエ苑 施設長
第37回全国介護老人保健施設大会 栃木 実行委員長
浦野友彦
目次
1章 施設長が知るべき包括的診療の基礎知識
1高齢者総合機能評価 秋下雅弘
❶ CGAの概念と必要性
❷ CGAの歴史とエビデンス
❸ CGAの構成要素と評価領域
❹ CGAの臨床的意義
❺ CGAのスクリーニングと段階的評価
❻ CGAの実践:老健施設における活用
2ポリファーマシー対策 小島太郎
❶ ポリファーマシーと薬物有害事象
❷「 特に慎重な投与を要する薬物」のリスト
❸ 薬剤処方を見直すためのステップ:高齢者総合機能評価(CGA)と多職種協働
❹ 減薬の実際:生活習慣病治療薬を例に
3老健入所者における栄養評価と介入 前田圭介
❶ 栄養評価と介入の考え方
❷ 栄養評価の前提
❸ 栄養スクリーニング
❹ 栄養アセスメントと低栄養診断
❺ 他の栄養障害診断
❻ 原因の推論
❼ 個別化ゴール設定
❽ 介入手段と食支援
2章 施設長が知るべき内科系疾患
1誤嚥性肺炎・NHCAP 石井正紀
❶ 肺炎と誤嚥性肺炎の疫学
❷ 医療・介護関連肺炎(NHCAP)および誤嚥性肺炎の位置付け
❸ 肺炎診療の全体的な流れ
❹ NHCAP
❺ 誤嚥性肺炎
❻ 個人の意思やQOLを考慮した治療・ケア
❼ 肺炎球菌ワクチン
2老健における呼吸器感染症とワクチン接種 山口泰弘
❶ 老健における呼吸器感染症
❷ 高齢者の呼吸器細菌感染症の診断
❸ 抗菌薬治療中に留意すべきこと
❹ 高齢者の呼吸器ウイルス感染症
❺ 肺結核と肺非結核性抗酸菌症
❻ 高齢者を対象とするワクチン
❼ 老健での感染防御策
3老健管理医師が知るべきCOPD 坂尾誠一郎
❶ 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の概要
❷ COPDの病態と高齢者診療における特徴
❸ 老健でCOPDをどう見つけるか
❹ COPD診断で実際に重要なこと
❺ 老健におけるCOPD管理
❻ COPDとフレイル,サルコペニア
❼ Advance care planning (ACP) と終末期COPD
4老健における高血圧症管理下 澤達雄
❶ 老健における高血圧症管理の本質
❷ 評価:何を診るべきか
❸ 意思決定:現場での判断プロセス
❹ 治療戦略:減薬を中心とした管理
❺ 多職種連携:統合的医療の実践
❻ リハビリテーションとの統合
❼ 栄養と高血圧管理
❽ 施設内感染への対応
❾ 入浴管理
❿ 地域連携と制度
⓫ 監査と倫理
⓬ 症例
5老健管理医師が知るべき心不全治療 稲見茂信
❶ 心不全パンデミックへの対策
❷ 心不全の病期分類
❸ 心不全の病期に応じた治療
6老健管理医師が知るべき骨粗鬆症 小川純人
❶ 骨粗鬆症予防と治療の概要
❷ 骨粗鬆症とその特徴
❸ 骨粗鬆症の診断基準と薬物治療開始基準
❹ 骨粗鬆症に対する予防対策
❺ 骨粗鬆症に対する薬物療法
❻ 骨粗鬆症薬物療法開始後の治療評価
7老健管理医師が知るべきサルコペニアと転倒予防 東 浩太郎
❶ サルコペニアの概要
❷ サルコペニアと診断する前に考えるべきこと
❸ 老健におけるサルコペニア診断
❹ 老健におけるサルコペニア介入
❺ カヘキシアに伴う二次性サルコペニアへの介入
❻ 転倒の原因
❼ 老健における転倒予防
8認知症をどう診察するか 亀山祐美
❶ 認知症診療の実態
❷ 認知症診療の基本姿勢
❸ 認知症をどのように評価するか
❹ 併存疾患をどう管理するか
❺ 各老年症候群への対応
❻ 多職種連携の重要性
❼ 地域連携とACP
❽ 監査と倫理的課題
9神経変性疾患をどう管理するか 山下 賢,村井弘之
❶ 神経変性疾患の概要
❷ 対象疾患の臨床的特徴
❸ 意思決定の基本枠組み
❹ 症候別対応
❺ 薬物療法の実践的管理
❻ 急変時の対応
❼ ACPと終末期対応
10老健における慢性腎臓病・透析患者・保存的腎臓療法の管理 榎本直大,鷲田直輝
❶ 老健におけるCKD管理の基本的視点
❷ 透析導入の判断と保存的腎臓療法(CKM)
❸ 血液透析(HD)患者の管理
❹ 腹膜透析(PD)患者の管理と老健における課題
❺ 保存的腎臓療法(CKM)と終末期管理
11糖尿病を老健でどう管理するか 竹本 稔
❶ 血糖管理における考え方の概要
❷ 高齢糖尿病患者の特徴
❸ 高齢者糖尿病の機能評価
❹ 高齢者糖尿病の管理目標
❺ 高齢者糖尿病の治療
❻ 老健における血糖管理
12老健管理医師が知るべき内分泌疾患 吉田知彦
❶ 内分泌疾患,特に甲状腺疾患への理解
❷ 高齢者における甲状腺機能基準値のとらえ方と評価の注意点
❸ ガイドラインと最新知見に基づくレボチロキシン(チラーヂンS)治療の最適化
❹ ポリファーマシーとレボチロキシン錠の吸収阻害に関する実務上の注意点
❺ レボチロキシン治療の実際:最適な服用法と管理のポイント
❻ 高齢者の日常診療で見落としがちな薬剤性甲状腺障害
13老健管理医師が知るべきリウマチ・膠原病 庄田宏文
❶ リウマチ・膠原病における免疫異常
❷ リウマチ・膠原病を疑わせる徴候
❸ 高齢者によくみられるリウマチ・膠原病と対応法
❹ リウマチ・膠原病既往のある患者の維持療法
14老健管理医師が知るべき消化器内科疾患 海老沼浩利
❶ 消化器疾患における概要
❷ 消化管疾患
❸ 肝・胆・膵疾患
❹ 悪性腫瘍
❺ 高齢者特有のマネジメントにおける注意点
3章 施設長が知るべき外科系疾患
1老健管理医師が知るべき消化器外科疾患 鈴木 裕
❶ 高齢者における疾患の特徴と社会的背景
❷ 各消化器疾患へのアプローチ
2老健管理医師が知るべき泌尿器科疾患 宮﨑 淳
❶ 排尿障害(蓄尿・排出のトラブル)
❷ 尿路感染症 (UTI)
❸ 尿路カテーテル管理
❹ 泌尿器科腫瘍(がん)
3老健管理医師が知るべきリハビリテーションの知識 角田 亘
❶ 老健におけるリハビリテーションの概要
❷ 老健入所者に対する生活リハビリテーション
❸ 老健入所者に対する,リハビリテーション専門職によるリハビリテーション
❹ リハビリテーション専門職によるリハビリテーションの実際
❺ 老健における通所リハビリテーション
❻ 老健における訪問リハビリテーション
❼ 老健におけるリハビリテーションにかかる加算
❽ リハビリテーションに関するリスク・マネジメント
4聴覚評価と難聴とその介入 野口佳裕
❶ 難聴は「目に見えない障害」
❷ 聴覚伝導路と耳疾患
❸ 聴覚の評価
❹ 難聴と認知症
❺ 難聴者への対応
5アイフレイル・視力低下とその介入 臼井智彦
❶ アイフレイルとは
❷ 老健管理医師が知っておくべき主要眼疾患
❸ 眼科受診を考慮すべき利用者
❹ 緊急受診を要する眼症状
❺ 視機能維持のための多職種連携
6老健管理医師が知るべき褥瘡の知識 門野岳史
❶ 褥瘡とは
❷ 褥瘡の頻度
❸ 褥瘡マネジメント加算
❹ 褥瘡の予防
❺ DESIGN-R®
❻ 深部損傷褥瘡と臨界的定着
❼ 褥瘡の治療
7老健管理医師が知るべき皮膚疾患 菅谷 誠
❶ 感染症
❷ 循環不全
❸ 悪性腫瘍
❹ 皮膚組織の脆弱と関連するもの
❺ その他の疾患
8老健管理医師が知るべきオーラルフレイルとそのマネジメント 平野浩彦
❶ 食べることの意味とオーラルフレイル
❷ 老健における口腔機能管理の必要性
❸ オーラルフレイルとは何か
❹ 口腔機能低下症
❺ 摂食嚥下障害
4章 施設長が知るべき施設運営と医療提供体制
1老健利用者における救急外来受診の適応 長谷川 浩
❶ 高齢者救急における搬送判断の概要
❷ 後期高齢者の救急搬送
❸ 老健利用者における救急判断の特徴
❹ 救急搬送が有益となる条件
❺ ACPと救急外来受診判断
❻ 老健管理医師による実践的評価
❼ 老健・救急医療連携の重要性
2老健管理医師が知るべき施設内加算 遠藤亮太郎
❶ サービス加算の概要
❷ 当施設における加算
❸ 医師に関わりのある加算
❹ 各加算の関連
❺ サービス未実施による減算
❻ 各種加算の利点
3老健におけるACP・看取りケア 浦野友彦
❶ 老健におけるACPの概要
❷ ACPの本質と老健における位置付け
❸「 終末期」ではなく「人生の最終段階」という視点
❹ ACPは1回の面談ではなく,繰り返し更新される
❺ ACPは「救急搬送するかどうかだけを決める書類」ではない
❻ 老年医学の視点からみたACP:5 Msの活用
❼ 認知症のある入所者への意思決定支援
❽ 老健におけるACPならびに看取りケアの現状
❾ 多職種連携と記録・共有
❿ 今後の課題
4これからの老健に関して知るべき知識 松田晋哉
❶ 老健を取り巻く現状
❷ 地域区分の把握
❸ 既存データを用いた地区診断と対応策検討の1例
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書籍情報
- ISBN:9784758325547
- ページ数:280頁
- 書籍発行日:2026年10月
- 電子版発売日:2026年10月10日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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