血栓止血「なぜ」から理解する臨床

  • ページ数 : 394頁
  • 書籍発行日 : 2026年10月
  • 電子版発売日 : 2026年10月20日
¥7,480(税込)
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商品情報

内容

血栓止血の「なぜ?」が「わかった!」に変わる!
「血栓止血の基本のしくみを知りたい!」「血栓止血疾患について身近に聞ける先輩がいない……」などのニーズに,この1冊が応えます!血栓止血疾患の病態・検査・治療から,血液疾患に限らない様々な領域の関連疾患を網羅し,適切な診断と治療に結びつけるための理解の勘所をエキスパートがかみ砕いて丁寧に解説します. 日常臨床にすぐに活かせる血栓止血診療の必携書です.

序文

序


日常生活において,たとえわずかな出血であっても止まらないことは,患者にとって目に見える苦痛である.一方,体内の血管内で過剰に形成される血栓は,臓器障害を引き起こすものの,その異常は目には見えず,気づかないうちに深刻な障害をもたらす.このような血栓・止血異常は,臨床医が日常診療で比較的高い頻度で遭遇する病態である.しかし,「なぜ」そのような異常が起こっているのかを十分に理解しないまま治療や経過観察を行い,その結果として改善している症例も少なくないのではないだろうか.できれば,その「なぜ」を気軽に教えてくれる専門家が身近にいてくれれば心強い.しかし,絶滅危惧種ともいわれる血栓止血を専門とする医師が,同じ地域にいることさえ稀なのが現状である.

本書は,そのような血栓止血の「なぜ」を気軽に学べる一冊となることを目指して企画した.総論では病態,検査法,治療法を解説し,各論では個々の疾患について最新の知見を踏まえて解説していただいた.取り上げた疾患は血液疾患に限らず,さまざまな領域の血栓・止血関連疾患を含んでいる.また,最新のガイドラインや治療法についても積極的に紹介していただいた.総論の検査法では,日常診療で実施可能な検査と研究レベルで行われる検査を区別して解説し,薬剤についても作用機序や使い分けが理解できるよう配慮していただいた.

血栓と止血は,一見すると正反対の現象のように見える.しかし,実際には同じ凝固・止血機構を共有しており,そのことが理解を難しくしている.止血は生体にとって必要な「制御された正常な反応」であり,血栓はその制御が破綻した「異常な反応」である.このような視点から「なぜ」を考えていただきたい.そして異常が生じた場合には,その背景に必ず原因が存在する.その原因が先天性なのか,後天性なのかを見極めることは,適切な診断と治療につながる重要な第一歩である.近年では新たな治療法が次々と開発され,これまで治療困難あるいは致死的であった疾患も,良好にコントロールできる,あるいは治癒に近い状態まで改善できるようになってきた.そのため,病態を理解し,必要に応じて専門家へつなぐことの意義は,これまで以上に大きくなっている.

血栓止血学の「なぜ」を一冊ですべて解決することは難しいかもしれない.しかし,本書を通して専門家の考え方に気軽に触れ,「なぜ」を考える楽しさを知っていただき,血栓止血学への興味をさらに深めていただければ幸いである.


2026年8月

奈良県立医科大学 血液内科
松本雅則

目次

Ⅰ 総論

1 血栓止血学〈松本雅則〉

全体像―止血と血栓はどこで分かれるのか

止血

血管内皮細胞

血栓形成機序

疾患との関連

Ⅱ 血栓止血疾患に関与する因子の機能と検査法

1 血小板の機能と検査法〈井上克枝〉

血小板の機能

血小板の検査法

2 von Willebrand因子の機能と検査法〈日笠 聡〉

von Willebrand因子の合成とクリアランス

von Willebrand因子の構造と機能

von Willebrand因子に関連する検査

3 凝固因子の機能と検査法〈冨樫朋貴 大森 司〉

凝固因子の機能

臨床検査室における凝血学的検査

研究室における検査技術

4 線溶因子の機能と検査法〈鈴木優子〉

線溶とは

線溶反応の概略

日常診療で実施する線溶検査

研究室で実施する線溶検査

5 補体の血小板,凝固系への関与と検査法〈辻本 弘〉

補体活性化経路

補体制御機構

補体の血小板・凝固系への関与

血小板・凝固系と関連する補体疾患

補体検査

Ⅲ 血栓止血疾患に用いられる治療薬と血液製剤

1 抗血小板療法〈山崎昌子〉

動脈血栓形成と抗血小板薬

抗血小板薬の作用機序と特徴

抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)

抗凝固薬との併用(DPI)

抗血小板薬の臨床的な使い分け

抗血小板療法の個別化

2 抗凝固療法〈山田真也 朝倉英策〉

凝固カスケード

点滴の抗凝固薬

内服の抗凝固薬

抗凝固薬のお役立ち情報

3 ITPと後天性TTPに対する抗体薬〈宮川義隆〉

ITPについて

TTPについて

4 血友病治療に用いられる抗体薬 なぜ「因子を補わない」治療で出血を防げるのか?〈荻原建一〉

なぜ血友病治療に抗体薬が登場したのか?

なぜ抗体薬は血友病の止血能を改善できるのか?

エミシズマブ:なぜFⅧを補充せずに血友病Aの出血を予防できるのか?

抗TFPI抗体製剤:なぜ「ブレーキを緩める」ことで止血が可能になるのか?

コンシズマブ:なぜ血友病Aと血友病Bの双方に使用できるのか?

マルスタシマブ:コンシズマブとの違いはなにか?

まとめ:なぜ抗体薬の作用機序を知る必要があるのか?

5 抗補体薬〈植田康敬〉

補体系の活性化経路と作用

抗補体薬の概念と位置づけ

なぜ補体活性化は血栓形成を促進するのか

抗補体薬はどこに作用するのか

疾患ごとの血栓抑制の考え方

安全性と止血への影響

今後の展望

6 濃厚血小板,新鮮凍結血漿〈高見昭良〉

濃厚血小板

新鮮凍結血漿

7 凝固因子製剤〈藤井輝久〉

血漿由来凝固因子製剤

遺伝子組換え製剤

血栓止血疾患領域で使用する凝固因子以外の製剤

Ⅳ 出血性疾患

1 免疫性血小板減少症〈加藤 恒〉

ITPの病態

血小板減少症の鑑別によるITP診断

ITPの治療

2 免疫性血小板減少症合併妊娠の管理〈髙蓋寿朗〉

妊娠中に血小板減少をきたす疾患

妊娠合併ITP診療の参照ガイド2014

最近の知見,特にトロンボポエチン受容体作動薬(TRAs)について

3 先天性血小板機能異常症〈山之内 純〉

止血機構と血小板の働き

先天性血小板機能異常症

血小板無力症

Bernard—Soulier症候群

放出異常症

血小板膜脂質異常

4 血友病〈野上恵嗣〉

病因・病態・疫学

症候・身体的所見

診断・検査

血友病の止血治療

非凝固因子製剤

5 von Willebrand病(VWD)〈長尾 梓〉

病態生理と分類

診断,検査

治療

過多月経と妊娠・産後の管理

6 後天性血友病〈小川孔幸〉

疫学と基礎疾患

臨床症状

診断と検査

治療と予後

Ⅴ 血栓性疾患

1 播種性血管内凝固〈伊藤隆史〉

播種性血管内凝固とは

敗血症に伴うDIC

造血器腫瘍に伴うDIC

その他の基礎疾患に伴うDIC

2 血栓性血小板減少性紫斑病〈酒井和哉〉

VWF—ADAMTS13系による血小板血栓形成の制御

TTPの病態と診断

後天性TTP治療—急性期死亡を回避する

先天性TTP ―より有効で安全なADAMTS13補充療法へ―

3 溶血性尿毒症症候群〈芦田 明〉

歴史的背景

STEC—HUSの発症機序

疫学

臨床症状

診断

治療

4 非典型溶血性尿毒症症候群〈加藤規利 淺野由子 丸山彰一〉

補体について

補体の制御

aHUSの発症

aHUSの診断

aHUSの治療

抗補体療法の展望

5 抗リン脂質抗体症候群〈久田 諒 渥美達也〉

APSの病態

抗リン脂質抗体の測定法

APSの分類基準

APSの治療

6 抗リン脂質抗体合併妊娠の管理〈石井あゆみ 奥 健志〉

APSにおける妊娠合併症の病態生理

臨床的特徴とリスクの層別化

妊娠管理の実際

7 ヘパリン起因性血小板減少症〈金子 誠〉

病態

臨床像と病型

診断

治療

8 遺伝性血栓性素因〈横山健次〉

遺伝性血栓性素因を疑う症状

遺伝性血栓性素因の診断

ATレジスタンス

日本人にはみられない遺伝性血栓性素因

Ⅵ 他領域の血栓性疾患

1 心筋梗塞〈山下侑吾〉

血栓性疾患としての心筋梗塞

心筋梗塞の病態生理

心筋梗塞の臨床分類

心筋梗塞の臨床診断

心筋梗塞の治療

血栓症としての心筋梗塞の臨床上の注意点

2 脳梗塞〈中川一郎〉

脳梗塞の疫学

脳梗塞の病型分類と血栓から見た病態分類

血栓症および塞栓症の画像診断

血栓から見た急性期脳梗塞の治療

3 末梢動脈疾患と血栓〈東 信良〉

末梢動脈疾患の臨床像における血栓・止血

急性動脈閉塞における血栓

慢性動脈疾患における血栓

末梢動脈疾患治療における抗血栓療法の新展開

4 深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症〈山田典一〉

血栓症としての病態

診断

治療

Ⅶ 他の疾患,治療に伴う出血,血栓症

1 がん関連血栓症に対するマネジメントの現状がん関連静脈血栓塞栓症における最新情報〈向井幹夫〉

がんと血栓の関係

がん関連静脈血栓塞栓症へのアプローチ

がん治療開始前チェック

がん関連静脈血栓症に対するマネジメント

2 血液疾患に伴う後天性von Willebrand症候群〈久保政之〉

AVWSと関連する血液疾患とは?

AVWSの症状とは?

なぜAVWSを合併するのか?

どのように診断するのか?

どのように治療するのか?

3 循環器疾患に伴う後天性von Willebrand症候群〈齋藤健貴〉

VWFの構造と機能

von Willebrand病(VWD)/後天性von Willebrand症候群(AVWS)

VWF関連検査

循環器疾患に伴うAVWSの診断

各循環器疾患別のAVWSの現況

循環器疾患に伴うAVWSに対する治療

4 妊娠関連血栓性微小血管症,HELLP症候群〈川﨑 薫〉

HELLP症候群

aHUS

TTP

5 移植関連血栓性微小血管症(TA—TMA)〈池添隆之〉

血栓症としての病態

TA—TMAの診断

TA—TMAの治療

6 自己免疫疾患に伴う二次性血栓性微小血管症(TMA)〈矢田憲孝〉

二次性TMAの早期診断・治療戦略(診断・治療における臨床的aHUSとの連続性)

自己免疫疾患・膠原病に伴う二次性TMA

二次性TMAと臨床的aHUSの鑑別を要した症例

7 発作性夜間ヘモグロビン尿症に伴う血栓症と補体治療薬〈西村純一〉

PNHの病態

PNHにおける血栓症の疫学とリスク要因

血栓症の発症機序

抗補体薬の開発

抗補体薬の血栓改善効果

血栓に対する治療と管理

索 引

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書籍情報

  • ISBN:9784498225664
  • ページ数:394頁
  • 書籍発行日:2026年10月
  • 電子版発売日:2026年10月20日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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