脊椎脊髄ジャーナル 39巻 11号 錐体路と痙性対麻痺

  • ページ数 : 104頁
  • 書籍発行日 : 2026年10月
  • 電子版発売日 : 2026年10月27日
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内容

■特集 錐体路と痙性対麻痺

序文

特集にあたって


中枢性麻痺,いわゆる錐体路(≒皮質脊髄路)性の麻痺では,痙性麻痺を呈すると学生時代から刷り込まれているが,実臨床においては,中枢性麻痺でも筋トーヌスはいろいろな様態をとるように感じる.発症様式や発症後の時間経過による違いもあるが,病変の局在による違いもある.日常よく経験する内包後脚や橋底部の脳梗塞では,失調性片麻痺という病型をとり,上肢より下肢優位の運動障害を認め,麻痺に比して(筋力は比較的保たれるわりに)運動失調が目立つ.このとき腱反射は亢進しているものの,筋トーヌスは低下していることが多い.また,延髄錐体梗塞では,慢性期においても弛緩性麻痺で下垂足のままであることがある.古典的にはFulton らによるサル脳の破壊実験で,中心前回(Brodmann 4 野)の病変では弛緩性麻痺が生じ,それに運動前野(6 野)の病変が加わると痙性麻痺が生じるとされた.さらに,教科書で記載される典型的なはさみ脚歩行は,遺伝性痙性対麻痺で認められるが,脊髄の局所病変ではみかけることは少ない.個人的には,純粋型の遺伝性痙性対麻痺(遺伝子診断でSPG4)の剖検例を経験しているが,病理学的には脊髄側索の外側皮質脊髄路の索変性はごく軽度で,臨床所見との乖離が印象的であった.これには,錐体路系の直接経路以外に間接経路(いわゆる錐体外路系の下行路)の障害が関与したためではないかと推察した.以上のような,錐体路と痙性麻痺に関する臨床現場での疑問と考察が,本特集を企画した動機である.

脊髄の運動系の症候としては,従来から側索の外側皮質脊髄路(錐体側索路)病変のみにしか注目してこなかった感が強い.脊髄障害の臨床と研究に携わる者としては,姿勢の保持や歩行といった自動的運動の制御(これらには筋緊張の調節が大きく関与する)に重要な間接経路(網様体脊髄路,赤核脊髄路,前庭脊髄路など,ヒトでは解剖や生理が十分に解明されていないが)にも,より注目すべきと考える.

まずは基礎編として,そもそも錐体路とは何かという原点に始まり,痙縮の病態生理,筋トーヌスを含めた運動制御に重要な間接経路の機能解剖について論じてもらった.本誌の前副編集委員長の金 彪先生にも執筆していただいたが,先生が気合を入れて最後に編集された運動制御の機能解剖についての特集(2022 年の35 巻6 号)は大変参考になる(ぜひ参照いただきたい).後半部は臨床の実践編で,基本的症候学,痙性対麻痺についての診断アプローチ,画像や電気生理学的評価から治療およびリハビリテーションまで,それぞれのエキスパートの先生方に論じていただいた.本特集を通して,痙縮という筋緊張異常を中心にした脊髄障害の運動症候について,これまでの単純思考を脱して新たな眼で見直してもらいたいと思う.そして,実臨床での患者さんのマネージメントに生かしてもらえればと,期待している.

私ごとになるが,このたび,定年退職に伴い本誌編集員を退任させていただいた.8 年余りにわたり,個人的興味からのマニアックな特集を多く企画したが,ご愛顧誠にありがとうございました.


中部ろうさい病院脳神経内科 亀山 隆

目次

特集 錐体路と痙性対麻痺

特集にあたって・・・亀山 隆

錐体路とは―錐体路の解剖と機能・・・上山 勉

痙縮の生理学―病態生理,臨床徴候,神経生理学的検査・・・松本英之,他

筋緊張に関与する間接経路(非錐体路)・・・金  彪

錐体路(上位運動ニューロン)徴候―ALSにおけるsplit現象まで射程に入れて・・・福武敏夫

錐体路の電気生理学的評価・・・山田一貴,他

錐体路およびその障害の画像評価・・・向井宏樹

痙性対麻痺の鑑別診断・・・安藤哲朗

遺伝性痙性対麻痺の現在―最近のトピックスを含めて・・・瀧山嘉久

痙縮の治療―ボツリヌス療法・・・増田和明,他

痙性対麻痺のリハビリテーションの最前線・・・川上途行,他

Nomade

脊椎外科医のゴールデンハンマー―日常診療に潜む認知バイアス・・・松本嘉寛

Illustrated Surgery

仙腸関節障害に対する仙腸関節後方固定術・・・黒澤大輔

Case Study 脊髄をめぐる意外な様相⑦

球脊髄性筋萎縮症に脊椎病変が合併する?・・・福武敏夫

Odyssey

脊椎脊髄ジャーナル・脊椎脊髄外科の先生方との「オデッセイ」・・・園生雅弘

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書籍情報

  • ISBN:9784013003911
  • ページ数:104頁
  • 書籍発行日:2026年10月
  • 電子版発売日:2026年10月27日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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