OCTできわめる 新生血管型加齢黄斑変性の診療アトラス

  • ページ数 : 248頁
  • 書籍発行日 : 2026年11月
  • 電子版発売日 : 2026年10月27日
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商品情報

内容



序文

序

これまで,滲出型加齢黄斑変性(AMD)の診療において,蛍光眼底造影は重要な役割を果たしてきた.例えば,脈絡膜新生血管(CNV)は,フルオレセイン蛍光眼底造影の所見に基づき,classic CNVまたはoccult CNVに大別される.CNVタイプによって治療反応性が異なる可能性があるため,この分類は様々な大規模臨床試験においても用いられてきた.また,滲出型AMDの特殊型とされてきたポリープ状脈絡膜血管症(PCV)と網膜血管腫状増殖(RAP)の診断においては,インドシアニングリーン蛍光眼底造影が有用である.PCVでみられるポリープ状病巣や,RAPにおける網膜内新生血管を反映するhot spotなどの特徴的な所見を描出できるためである.さらに,蛍光漏出の程度から疾患活動性を評価できる点も,蛍光眼底造影の利点の一つである.しかし,蛍光眼底造影を行うためには検査機器の導入が必要であるとともに,造影剤による嘔気や嘔吐,発疹,さらにはアナフィラキシーショックなどの副作用のリスクを伴う.そのため,AMDは大学病院以外では敬遠されがちな診療領域となってきた.筆者らの施設では,年間約500件の蛍光眼底造影が行われており,造影剤によるアナフィラキシーショックは5~6年に1件の頻度で発生している.このため,救急科医の指導のもと,眼科医,看護師,視能訓練士が参加するアナフィラキシーショック対応訓練を毎年実施している.また,点滴ルートを確保してから造影検査を行い,検査後も全身状態に問題がないことを確認してから点滴ルートを抜去しているため,検査全体に約1時間を要し,患者に負担を強いているという現状がある.近年の光干渉断層計(OCT)の性能向上は著しく,非侵襲的かつ短時間で高精細な網脈絡膜断層像を取得できるようになっている.また,光干渉断層血管撮影(OCTA)の登場により,黄斑新生血管(MNV)※1の詳細な評価も可能となっている.これらを活用することで,多くの症例で蛍光眼底造影を施行しなくても新生血管型AMD※2の診断および活動性評価が可能である.具体的には,MNVの存在部位(網膜色素上皮下:1型,網膜色素上皮上:2型,網膜内:3型)とポリープ状病巣の有無から,MNVタイプを判別することができる.また,網膜内液・網膜下液・網膜色素上皮下液の有無を判定することで,疾患活動性の評価を行うこともできる.2024年に日本眼科学会雑誌に掲載された『新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン』においても「蛍光眼底造影はアナフィラキシーショックなどのリスクがあるため,その他の検査所見からMNVの存在が明らかである場合には,新生血管型AMDと診断してもよい」と明記されている.また,活動性評価に関しても蛍光眼底造影に代わる検査としてOCTの有用性が示されている.現在,OCTは眼科診療において必要不可欠な検査となっており,多くのクリニックや市中病院でもすでに導入が進んでいる.また,抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬硝子体内注射も一般的な治療として普及してきている.そのため,OCTやOCTAを適切に活用することで,大学病院以外の施設でも新生血管型AMDの診療が可能となりつつある.高齢化社会に伴うAMD患者の増加と抗VEGF薬治療の普及により,眼科外来における新生血管型AMDの患者数は増加の一途をたどっている.このため,多くの地域では大学病院のみでAMD診療を担うことは困難となっており,緑内障や糖尿病網膜症などの慢性疾患と同様に,病診連携の重要性がますます高まっている.しかし,新生血管型AMD診療におけるOCTやOCTAの活用法を実践的に解説した書籍は少ない.そこで本書は,新生血管型AMDの診断にとどまらず,治療戦略やモニタリングのポイントについても実際の画像を示しながらわかりやすく解説する.本書がOCT時代の新生血管型AMD診療の一助となり,読者の皆様の日常診療に役立てば幸いである.

日本眼科学会雑誌 第130巻4号 「編集室」を引用改変.※1 AMDにおける新生血管は脈絡膜新生血管(CNV)と呼ばれてきたが,網膜由来の新生血管も存在するため,黄斑新生血管(MNV)という名称に変更された.※2新生血管を伴うAMDは滲出型AMDと呼ばれてきたが,滲出を伴わない新生血管も存在するため,新生血管型AMDという名称に変更された.


2026年11月

松本英孝

目次

Chapter 1 新生血管型AMDの画像検査

マルチモーダルイメージング

OCTのスキャンパターン

OCTによるfluidの評価

OCTA画像を読影する際の注意点

Chapter 2 新生血管型AMDの初期病態とMNV分類

初期病態

MNV分類の基本

初期病態

ドルーゼン、網膜下ドルーゼン様沈着物 69歳,女性 右視力(1.0)

パキコロイド色素上皮症 52歳,女性.左視力(1.2)

MNV分類の基本

1型MNV, ポリープ状病巣なし 76歳、男性、右視力(1.0)

1型MNV、ポリープ状病巣なし(パキコロイド新生血管症) 54歳,男性、左視力(0.6)

1型MNV、ポリープ状病巣あり(ポリープ状脈絡膜血管症) 66歳,男性 左視力 (0.3)

2型MNV 75歳,男性、左視力(0.1)

1+2型MNV 81歳,男性、左視力(0.2)

1+2型MNV(ポリープ状病巣あり) 73歳、男性 左視力(0.1)

3型MNV(網膜血管腫状増殖) 81歳,女性、右視力(0.15)

3型MNV(網膜血管腫状増殖)(両眼) 80歳,女性.右視力(0.4),左視力(1.2)

Chapter 3 新生血管型AMDと■鑑別を要する疾患

鑑別1 中心性漿液性脈絡網膜症とパキコロイド新生血管症(1型MNV, ポリープ状病巣なし)

鑑別2 ドルーゼンと新生血管型AMD (1型MNV, ポリープ状病巣なし)

鑑別3 後天性卵黄様病巣と新生血管型AMD(2型MNV)

鑑別4 網膜細動脈瘤破裂とポリープ状脈絡膜血管症に伴う黄斑下血腫

鑑別5 糖尿病網膜症と新生血管型AMD(3型MNV)

鑑別6 脈絡膜新生血管を伴う網膜色素線条と新生血管型AMD

鑑別7 近視性MNVと新生血管型AMD(2型MNV)

鑑別①

中心性漿液性脈絡網膜症 43歳,男性,左視力(1.2)

パキコロイド新生血管症(1型MNV, ポリープ状病巣なし) 47歳,男性 右視力(1.2)

鑑別②

ドルーゼン 83歳,男性、右視力(0.9)

新生血管型AMD (1型MNV、 ポリープ状病巣なし) 74歳、女性 左視力(0.9)

鑑別③

後天性卵黄様病巣 56歳,男性、右視力(1.2)

新生血管型AMD (2型MNV) 84歳、男性、右視力(0.3)

鑑別④

網膜細動脈瘤破裂 88歳,女性、右視力(0.02)

ポリープ状脈絡膜血管症に伴う黄斑下血腫 75歳,男性 右視力(0.9)

鑑別⑤

糖尿病網膜症 74歳,女性、右視力(1.0)

新生血管型AMD (3型MNV) 84歳,女性 左視力(1.2)

鑑別⑥

脈絡膜新生血管を伴う網膜色素線条 57歳,女性、右視力(0.7)

新生血管型AMD 54歳,女性.右視力(0.2)

鑑別⑦

近視性MNV 49歳,女性.左視力(0.7)

新生血管型AMD (2型MNV) 79歳,男性、左視力(0.5)

近視性単純型黄斑部出血 30歳,男性、右視力(0.2)

Chapter 4 新生血管型AMDの治療戦略

抗VEGF薬の種類

抗VEGF薬の投与レジメン

抗VEGF薬の切り替え

光線力学的療法

抗VEGF薬の効果が出やすい/出にくい症例の特徴

パキコロイド新生血管症に対する治療

ポリープ状脈絡膜血管症に伴う黄斑下血腫に対する治療

経過観察が基本となる症例

抗VEGF薬の投与レジメン

パキコロイド新生血管症(1型MNV、ポリープ状病巣なし) ― 抗VEGF薬treat-and-extend 77歳,女性、左視力(1.0)

抗VEGF薬の切り替え

1型MNV, ポリープ状病巣あり ― 抗VEGF薬の切り替え 59歳,男性、左視力(0.6)

光線力学的療法

1型MNV、ポリープ状病巣あり ― 光線力学的療法 83歳,男性、左視力(0.7)

抗VEGF薬の効果が出やすい/出にくい症例の特徴

2型MNV 抗VEGF薬著効例 74歳,男性 左視力 (0.15)

3型MNV 抗VEGF薬著効例 79歳,女性、左視力 (0.9)

1+2型MNV 抗VEGF薬抵抗例 69歳,男性、右視力(0.5)

パキコロイド新生血管症に対する治療

パキコロイド新生血管症(1型MNV, ポリープ状病巣なし) ― 抗VEGF薬併用照射エネルギー半量光線力学的療法 62歳,男性、左視力(1.2)

ポリープ状脈絡膜血管症に伴う黄斑下血腫に対する治療

ポリープ状脈絡膜血管症に伴う黄斑下血腫 ― 硝子体内ガス注入術 54歳,女性.右視力(0.15)

経過観察が基本となる症例

Quiescent MNV ― 経過観察 53歳,男性、左視力(1.2)

瘢痕病巣 ― 経過観察 86歳,男性、左視力(0.07)

Chapter 5 治療中のモニタリング

Dry maculaの重要性

導入期治療後の効果判定の重要性

治療関連合併症への注意

Dry maculaの重要性

Dry macula維持を重視した治療 1型MNV、ポリープ状病巣なし ― 抗VEGF薬treat-and-extend 83歳,女性、右視力 (0.7)

導入期治療後の効果判定の重要性

導入期治療後8週でdry macula達成 1型MNV, ポリープ状病巣あり ― 抗VEGF薬treat-and-extend 76歳,男性,左視力(0.6)

導入期治療後8週でdry macula未達成 1型MNV, ポリープ状病巣あり ― 抗VEGF薬treat-and-extend 81歳,男性 右視力(1.0)

治療関連合併症への注意

眼内炎症 1+2型MNV 抗VEGF薬硝子体内注射 88歳,男性 右視力(0.5)

網膜色素上皮裂孔 1型MNV, ポリープ状病巣なし ― 抗VEGF薬硝子体内注射 75歳,男性 左視力(1.0)

網膜下線維性瘢痕 1+2型MNV ― 抗VEGF薬硝子体内注射 81歳,男性,左視力(0.2)

Chapter 6 症例で学ぶ診断から治療まで

症例1 1型MNV, ポリープ状病巣あり: 抗VEGF薬treat-and-extend

網膜色素上皮裂孔を形成したが、十分な滲出抑制により良好な視力を維持した例 79歳,男性,左視力(1.2)

症例2 1型MNV, ポリープ状病巣なし: 抗VEGF薬treat-and-extend

維持期に8週と12週の投与間隔を繰り返したが、視力が改善した例 75歳,男性 左視力(0.2)

症例3 2型MNV: 抗VEGF薬treat-and-extend

MNV血流が残存してもdry maculaを維持し、投与間隔を16週まで延長できた例 72歳,男性 右視力 (0.3)

症例4 2型MNV: 抗VEGF薬切り替え

最短投与間隔でも滲出が残存し、薬剤切り替えにより投与間隔を延長できた例 70歳,男性、左視力(0.3)

症例5 3型MNV: 抗VEGF薬treat-and-extend

早期診断・治療により良好な視力を維持し、投与間隔を16週まで延長できた例 86歳,女性、右視力 (0.8)

症例6 1+2型MNV (ポリープ状病巣あり): 抗VEGF薬treat-and-extend

投与間隔を16週まで延長し、大幅な視力改善が得られた例 60歳,男性、右視力 (0.4)

症例7 1+2型MNV: 抗VEGF薬treat-and-extend

滲出を抑制しても、線維性瘢痕に伴う視細胞障害のため視力改善が得られなかった例 92歳,男性、右視力(0.2)

症例8 パキコロイド新生血管症:抗VEGF薬併用照射エネルギー半量光線力学的療法

初回の併用療法のみで2年間にわたり滲出を抑制し、良好な視力が維持された例 61歳,女性、左視力(1.2)

症例9 1型MNV, ポリープ状病巣あり: 抗VEGF薬切り替え後に光線力学的療法を追加

複数の抗VEGF薬で活動性が残存したが、光線力学的療法の追加でdry maculaが得られた例 77歳,男性、左視力(0.9)

COLUMN

ライフスタイルの指導

パキコロイドの病態

特に注意を要するMNVタイプ

どの抗VEGF薬を使うべきか?

抗VEGF薬硝子体内注射後のフォローアップ間隔は?

抗VEGF薬硝子体内注射の前後に抗菌薬点眼は必要か?

脳梗塞や心筋梗塞の既往がある患者に抗VEGF薬硝子体内注射を施行してもよいか?

抗VEGF薬硝子体内注射はいつまで続けるべきか?

同日に両眼へ抗VEGF薬硝子体内注射を施行してもよいか?

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書籍情報

  • ISBN:9784895908931
  • ページ数:248頁
  • 書籍発行日:2026年11月
  • 電子版発売日:2026年10月27日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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