チャイルドヘルス 2025年 Vol.28 No.9【特集】小児期逆境体験(ACEs)が子どもにもたらすもの

小児期逆境体験（ACEs）が子どもにもたらすもの

小児期逆境体験（ACEs）が人の心身の健康に及ぼす影響について，世界中の研究で次々に明らかにされてきていますが，さまざまな逆境的な体験が子どもの育ちにどのように影響し，どの時期にどのようなかたちで表れるかということについて，世の中一般に広く理解されているとは言い難いのが現状です．小児期の逆境体験は，今や，個人の人生において負の影響が何十年も続くというだけでなく，世代間伝達や地域の集合的トラウマなどさまざまなかたちで長期的に作用し，人間の発達の方向性や生命予後，社会のあり方にまで大きな影響を及ぼす可能性のあるヘルスケア上の重要な問題だといえます．

本特集では，ACEsについての知識を整理するとともに，多様な領域で子ども支援・子育て支援に活かすためのヒントとなるような最新の情報と取り組みについて紹介し，子どもにかかわるさまざまな立場の大人が子どもの育ちを支えるために知っておきたいことについて包摂的な理解を促すことを目指しています．各特集項目の執筆者はその領域での実践や研究に第一線で取り組んでおられる専門家であり，医療，福祉，教育，地域支援などさまざまな立場から「小児期逆境体験が子どもにもたらすもの」について，多角的に論じていただいています．本特集が，子どもにかかわる支援者・すべての大人がACEsについて理解し，それを踏まえたケアと予防に取り組むための一助となることを願っております．

（岩手医科大学医学部神経精神科学講座／八木淳子）